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3-5 ドラゴンは助けを求めているようだ!

「た、助けてくれ」


 ドラゴンは弱弱しい声で訴えた。突然のことにアレクたちの調子も狂う。


「は?」

「だから、助けてくれって言ってるんだ!」


 アレクは一度度ため息をつく。


「やだね」

 そのまま即答。さすがの速さにリリカも噴き出した。


「なんで?!」

「むしろなんで助けてくれると思ったんだよ。自分のこと襲おうとした奴を助ける理由なんてあってたまるか」

「僕がこうなったのは君のせいなんだぞ!」


 ドラゴンは泣きそうな声で必死に訴えている。地団太を踏んでいるのだが、それが巨体のせいでどんどん響く。

 アレクのめんどくさそうな表情がどんどん濃くなる。


「君があの時、僕の腹に攻撃なんて当てるから、手負いのまま襲われるようになっちゃったんじゃないか」

「先に襲ってきたのはそっちだろ」

「むしろアレク様の攻撃を食らってよく生き延びられましたね」


 リリカはドラゴンの腹を見てつぶやく。

 アレクが付けた傷は、完全ではないにしてもふさがっていた。


「ほとんど瀕死だったよ! 空飛ぶだけでもMPは減るし、どんどんHPは減るし、本当に死ぬかと思ったんだからね。楽な仕事だって言われていたのにこんなの詐欺じゃないか」


 ドラゴンの声は見かけ通り野太いのだが、話し方が子どもっぽい。

 しかし子供のようなテンションでわんわん喚かれるのでその一つ一つがうるさい。

 耳元でドラゴンの咆哮を聞かなければいけないアレクたちは鼓膜が破れそうだ。


 ドラゴンの目にはすでに涙が浮かんでいた。

 もう神々しいような面影は消え去っている。


「なんで僕だけこんな目に合わないといけないんだよお。ドラゴンって人間より強いんじゃないのかよ。なんで人間まで襲ってくるんだよ」

「そりゃあドラゴンのうろこは高く売れますからね。薬にも装飾品にも何でも使える。昔からドラゴン狩りは流行ってますし、もうドラゴン狩りの指南書は大量に出回ってますから。ハンターたちも黙っていませんよ」


 リリカはそのままドラゴンのことをじっと見つめる。


「確かに、このうろこは高く売れそうですね……白く輝いているし、珍しい」

「なっ!!」

「アレク様、こいつのうろこを売りさばけばホウキも変えますよ!」

「お、ちょうどいいじゃないか。いいところに金が舞い込んできてくれたということか」


「やめろおおおお!」


 ドラゴンの悲鳴が轟く。夜空一面にその声が響き渡った。

 あまりの轟音にアレクたちの気が遠のきそうになる。


「その声をまずやめろ!!」

「僕を殺そうとするお前らが悪いんだ」

「そんなに助けてほしいならデベルのところに行けばいいじゃないか。あいつに召喚されたんだろ? 何とかしてくれるだろ」


 デベルの名を聞いて、ドラゴンの顔が青ざめる。その目には再び涙が浮かぶ。


「城にならもう行ったさ。でも、城に近づいたらもっと強い兵隊に囲まれたんだよ! あいつら目が輝いてやがった。訳の分からない魔法を使ってくるし、命からがら逃げてきたんだよ」

「王直属の部隊ですからねそりゃ強いですよ」


「ロゼもいるしな」

 アレクが口をはさむ。

「ああ、確かに」


「ロゼ、とは?」

「俺らと一緒に旅していた騎士だよ」

「王様直属の護衛もしてますし、めちゃくちゃ強いですよ。彼女に目をつけられたら生きては帰れないでしょうね」

「ひっ」


 ドラゴンは、首の皮一枚でつながっている命に恐怖を覚える。


「もうここまでこいつを追いに来てたりしてな」

「たしかに、彼女もドラゴン狩り好きでしたからね」


 笑い合う2人をよそにドラゴンの目は顔はどんどん不安に染まっていく。


「なあ、助けてくれよ。うろこがはぎとられる感覚がお前に分かるか? もとは人間の体なんだぞ? もともと肌だったものがえぐられるんだ。肌は確かにそこにあるのに、でも大事な部分がない。あるはずのものがなくなって痛みが後から襲ってくるんだ」


 泣きすがるドラゴン。大きな手を器用に使ってアレクの服にしがみつく。


「やだよ!! 俺は面倒ごとは嫌いなんだよ」

「そんなこと言わないでくれよ。大事な命なんだからさあ!!」

「離せ! 服が伸びるだろうが!!」


 アレクとドラゴンの押し問答が続く。


 しかし次の瞬間、空からドラゴンめがけて槍が放り込まれてきた。


 槍は雷の魔法をまといながら、ドラゴンの脇をかすった。

 アレクに当たらないように、しっかりと配慮された投げ方だった。

 乾いた雷の音と共に、ドラゴンのうろこがはがされる。


 アガッ……!


 ドラゴンの悲痛な声が漏れ出る。

 何とか痛みを抑えて空を見上げる。


「噂をすればやって来たじゃねえか」


 アレクも空からの来客を見つめる。

 空にはドラゴンを追い求めてやって来た大量のハンターたち。

 何も考えずに吠えていたドラゴンの咆哮を頼りにやって来たのだろう。


 その先頭には、3か月前と変わらないシルエットが、ワイバーンと共に月光に映し出されていた。


「来たぞ。最強の騎士が」

「ええ?!」


 王都最強の女騎士が1人不敵な笑みを浮かべていた。

新キャラ登場です!

これからもっとにぎやかになっていきます!!


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