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異端な子達の異端な世界  作者: 星好き
4/4

4話『入学式と友達』

投稿する度に遅れていく気が……どうにかしないと……

4月の27日、異能力学園の入学式。

澪と狂華は早めに起き、制服に袖を通し、朝食をとった。


「今が…6時半で……電車が7時20分で…駅まで何分だっけ?」


『5分』


まだ時間に余裕があることを確認した彼女は、ふぅ……と息をつき、背もたれに体重を預けた。


「入学式……緊張するね…」


『上手くやれそう?』


「あー……よくわかんない…」


『私も居るから、怖かったら頼ってもいいよ』


いつもと全く変化が見られない表情だが、それだからこそ安心ができた。


「うん。そうする」


取り敢えずテレビをつけて、貴重な暇な残り時間を過ごす。


------------------------


「はぁ…はぁ……ぎ、ぎんぢょうずる…」


『ただ椅子に座ってるだけでしょ』


式場の『集会場』という場所で、2人は開式までまだ時間があるが、自由席に座り待っていた。


「こ、これからのこと考えたら…動悸が…」


緊張感に蹲っていた彼女の元に、柄の悪そうな青髪の男が近寄ってきた。


「オイ」


「ひゃいっ!?」


「そこ、俺の席なんだが」


『ここ自由席だけど』


狂華が反論すると、少年がムッとしたような表情をし、威圧感を放ってきた。


「そこ、俺の席、なんだが?」


『自由席から席を外した後は、誰かがそこに座った場合別の自由席を探すのがルールだよ。覚えといて』


そんな威圧など全く効いてない様に、表情を全く変えずに切り返すと、不良少年はギリッと拳を握ったが、


「それはダメだよ」


「なっ…」


「まだ、ボクが温厚なうちにさ、別の席探してよ。ね?」


この後何をするか察知した澪は、少年の拳を両手で包んだ。

できるだけトラブルは避けたいのか、困った様な笑みを浮かべている。


「お…おう……しゃあねぇな…」


彼は顔を手で覆い、踵を返す。

そんな彼を澪は止め、ひとつ提案を出した。


「どうせならさ、ボク達の隣とか、どう?自由席だし……」


「え?」


------------------------


不味い、しくじった。

勢いで彼を隣にどうかと誘ったが、死ぬほど恥ずかしい。


「あ…じゃあ…そうする…」


『やるじゃん』


狂華は珍しく表情を変え、ニヤニヤしながらこちらに紙を見せた。

非常に恥ずかしい。


「俺は…水嶋祐希って名前…お前は?」


「え…あ、み、みみみ、澪です……神音…澪…」


『同じく神音狂華、かぐねきょうかって読む』


軽く自己紹介を済ませた後、彼はニヤリと笑って1つ質問を投げた。


「そういや、お前らのクラスはどこよ?俺ァSSSだぜ?すげぇだろ?」


『残念ながら同じくだよ』


「ボクもSSSだよ」


自慢が失敗し、落ち込むかと思ったが、彼はさほど気にしてない様で、寧ろ嬉しそうに見えた。


「ふむ、ならこの後に話しやすくなったって訳か。いやぁ助かるぜ。なんせ赤の他人ばっかだと肩身が狭いからよ」


「そうだよね……人見知りにはキツイ…」


「おっ、わかるか。中々気が合うな!」


さっきまでの不機嫌な感じはどこに行ったと言いたいほど、ガラッと彼の機嫌は良くなっていた。

話しやすくて助かる。


『早速友達できて良かったね』


「友達……友達って呼んでいいんすか…」


「俺は構わねーってか、願ったり……あー、いや、その前にアレだ……さっきはすまんかったな…初対面の相手だとああなっちまうんだ…」


『気にしてない』


割と初対面の相手にあんな態度をとるのは致命的なコミュニケーション能力では、と感じたが、自分も初対面の相手だと動悸が激しくなり、嗚咽が凄くなる時点で同類だなぁと感じた。


「じゃあ……神音と…あー、お前ら両方神音か……どう呼ぶか…」


『別に名前でいいよ』


「うん。ボクの方も名前で大丈夫」


「なら、俺の事もユウキで良いぜ。よろしくな、澪、狂華」


友達が1人出来たちょうどに、会場にアナウンスの声が響いた。

話し込んで気付かなかったが、もうほぼ全員の生徒、新入生は席についていた。


「人、多いね……何人くらいだろ…」


『全国の異能力者を募ってるから、確か1000人は居たと思う。SSSクラスはその中でもひと握りの15人とかっても聞いた』


「んじゃあ俺とお前らを除けば12人しか居ねーのか…もっと居ると思ったんだけどなぁ…」


『SSSクラスは1クラスで15人。SSクラスは5クラスで168人。Sクラスは6クラスで183。それから下は知らない』


ボクもユウキも感心しながら聞いていると、新入生代表挨拶が始まった。


『新入生代表、天童一輝』


「どんな人だろ…」


登壇した男性、天童一輝を見た時、ゾッとした。

金色の髪に翡翠の瞳、少し可愛らしい顔をしているが、そういう気とかわからないボクでもわかる程の気迫を纏っている。


「強そう…」


『そうだね』


「そりゃあ人類最強なんて言われてるしな、アイツ」


「ボクと同年齢で……人類最強…」


一体どういう人間なのだろうと、少し興味が沸いたが、当然人見知りだから無理。


------------------------


「〜〜〜〜〜っ!あぁ〜……入学式終わった…」


『次は教室に集まる、だって。教室の場所はわかる?』


「わかるよ。4階だっけ?」


「合ってる。俺はちょっと遅れて行くわ」


「そう?じゃあまた後で」


『時間、遅れないように気を付けてね』


「おう」


プラプラと手を振りながらとある場所に向かう。

大して遠くないし、さっさと要件を済ませることにした。


「しかし……俺…澪に一目惚れしちまったなぁ…」


遠い目をしながら彼女の顔を思い出す。

我ながら困った顔に一目惚れとは悪趣味だなと嘆息し、どう付き合って行くか考える。


「俺みたいな短気、友達ならまだしも恋人とか無理だよなぁ…」


今考えても、最悪な第一印象だろう。

いつもこうなってしまうから友達すらできなかった。


「……なら、色々直さなきゃな…」


目的地に着いた為、思考を切り替え、待っていた相手に向き合う。


「来たぜ?俺に何の用だ?」


赤髪に、金色のピアスを耳に幾つも付けた男は、不機嫌そうに睨み、口を開いた。


「お前……SSSなんだってな」


「あぁ。そういうお前は……なんだっけ?」


挑発するように、見下して問いかける。


「……Sだ」


「へぇ…あれだけ大口叩いた結果、それか?」


「ッ…!」


男の顔が憤怒に歪む。

それもお構い無しに煽り続ける。


「結局テメェの器はその程度なんだよ。どれだけ足掻いても俺にゃあ届かねぇ」


だが、男は怒気を霧散させ、変わらず不機嫌そうな顔で宣言した。


「吠えてろ…いつかその喉元喰いちぎってやる。その時まで精々首を洗ってろ」


「吠えるのは負け犬のお前だろ」


捨て台詞を残し、踵を返した。

その時、男は一瞬で肉薄し、全身を捻りながら最大威力の蹴りを放った。


「ガルルァッ!!」


だが、その蹴りはまるで予知されていたかの様に避けられ、祐希は無防備な男の首を掴んだ。


「これがお前の限界だ…彩斗」


「っ…ぅ…ぁ…ハッ…」


拘束が解かれ、彩斗と呼ばれた少年は片膝を着き、ユウキを睨んだ。


「首の骨に罅は入ってるだろうが、お前の治癒力なら1日もあれば治るだろうがな」


「ぜってぇ…ぶっ倒してやるからなァ!!!」


「そうかい」


ユウキは冷たくあしらい、今度こそ教室に向かった。


「っ…!!!クソっ……」


残された少年は、地を殴り、悔しさをぶつけた。


「絶対に…超えてやる…ッ!」


------------------------


「…ん?」


数人の男がなにやら大きな声で懇願していた。

その相手は、見覚えのある金髪、そして物凄く困った顔を浮かべ、今にも泣き出しそうだった。


「澪……?」


「お願いしますっ!!僕と付き合って下さいっ!!」


「えっと…えっと…その…そ…の…」


狂華は居ないらしく、こちらを見つけた途端、小走りで駆け寄り、背後に隠れてしまった。


「ごめんなさい…無理です…そういうことで…諦めてください…」


「…あぁ、そういうことだから…散れ散れ!オラ!帰れ!」


どういうことかわからないが、適当に話を合わせる。

諦めた様に帰っていく集団の中、告白していた奴がこちらを怨嗟のこもった目で睨んでいたのは知らないフリをする。


「あ゛り゛か゛と゛ぉ゛〜〜…」


「うぉ!?泣くなよ!?」


持っているハンカチを渡し、涙を拭かせる。

流石に本気で泣くとは思わなかった。


「お前の保護者はどこに行ってるんだ?」


「ぐすっ……狂華は…なんか…お腹痛いからってトイレに行った……それで待ってる間に…一目惚れしたので付き合って下さいって…」


何となくで保護者と言ったが、伝わる事に驚いてしまった。

そして自分も一目惚れしているだなんてさらに言いにくくなってしまった。


「もうやだぁ…人怖い…」


「……なんでそんなに人が怖いんだ?」


「え…えっと………いつか…話す……」


その時、さっきと変わらない表情をした狂華が現れた。


『待たせた…何かあったみたいだね』


「なんでわかるんだ?まさか今のはお前が仕組んだ事じゃ…」


『目もと、赤いから。泣いた後?』


狂華は澪に目配りしながら紙を書き、見せてきた。


「あー……こいつ、ナンパ受けてたみたいで…」


『把握した。遅くなってごめんね』


狂華はその紙の裏に文字を書くが、考え込むような仕草をした後に、紙をぐしゃぐしゃにしてゴミ箱にほおり投げた。


「2人とも……そろそろ時間だし、行こう?」


「そうだな」


何を書こうとしていたか気になったが、あれが彼女なりの言葉を呑み込む行為なのだろうと思い、言及はしない様にした。


------------------------


「さて…今日からSSSクラスの担任をすることになった荒城だ。下の名前は蒼汰、呼ぶ時はどちらでもいい。よろしく頼む」


ボク達の担任は随分と若い……というかほぼボク達と変わらない様に見えた。


「あの、先生、随分と若い様ですけど、年齢は…?」


「お前達の3つ上、19歳だ」


「若っ!」


先生の年齢で声には出さなかったが、少し驚いた。

だって本当にボク達とあまり変わらない年齢だとは思わなかったからだ。


「この先まだ予定が入っている。どんどん消化していくから聞き逃しが無いように頼むぞ」


「予定…なんだろ…」


恐らくだが、能力の確認だとか校舎の構造とかだろうなぁ、と考えていると、


「まずは自己紹介だな。適当に左の列から言っていけ」


「……え?」


ボクにとっての、最大の試練が襲いかかってきた。

次回は自己紹介から始めます。キャラの名前を考えるのは物凄い苦手……

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