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異端な子達の異端な世界  作者: 星好き
3/4

3話『怪しい』

タイトル変更やその他もろもろ色々変更しました。

澪が散らかして行った部屋を片付け終え、お昼ご飯も作り終わった1時半頃、扉を開く音が聞こえた。


「ただいま〜……」


紙に予め『おかえり』と書き、エプロン姿のまま玄関に向かった。


「……ん、ああ…邪魔するぞ」


『田中さんも居たんですね』


ササッと会話用の紙とペンを懐から取り出す。

今となってはとっくに慣れた行為だ。


「お前にも大事な話があるからな」


『私にもって、澪にもですか?』


「そだよ…はぁぁ…」


『……とりあえず、玄関で話すのもアレですし、どうぞ』


------------------------


「ふぅ…」


「すまないな、飯まで食わせてもらって」


『多く作っておいたので、平気です』


彼女は煙草を吸おうと箱を取り出したが、ふと思い出したかのように顔を上げた。


「ここに来た目的を忘れてたな…2人とも、時間は大丈夫か?」


「え〜……ちょっと無いか『大丈夫です』……はい…」


「ありがとう。さて……私がここに来た用だがな、今日の検査でそこの電気娘がな、異常な数値の結果を叩き出したんだ」


『異常…』


以前の検査では全く異常なしだったのに、何故今回急に……?


「そこで、だ。澪には話したが、お前達には異能力学園に通ってもらいたい」


『その、澪に異常が発生したのと、その学園がどう繋がるんですか?』


「あの学園が能力の制御を覚えるのに1番効率がいい。ソースは何度か私が見学をしたことがあるから」


『わかりました』


何か言いたげな澪を抑え、了承を出す。

澪の人見知りが直ってくれればいいなと考えていると、田中さんはあぁ、そうだと呟き、私に向かい、


「お前には異能とかそういうのはまだ無いが、お前も行ってもらう。構わないか?」


まぁ大体そんなことだろうなと思い、黙って頷いた。


------------------------


時間は過ぎ、夜。

彼女達2人はオンラインゲームを遊んでいた。


「はぁー……狂華も来てくれるとか助かったよ…」


澪がそんな事を言うと、狂華は個人チャットを利用し、文字を入力した。


『まぁ、私いないと澪あれじゃん、うん』


「否定できないところが痛い痛い……」


学園に入学する日は、今日から三日後の4月17日らしい。

入試試験などはとっくに終わっているが、今回は田中さんのお陰で入学を許可してくれるそうだ。


「正直ね、未だに怖いんだよ。ほら、トラウマってそう簡単に払拭できるもんじゃないじゃん?」


『うん』


「だからさー、んー……なんて言うか…最悪入学式の時逃げる」


『うん』


「え、良いの?ボク本気だよ」


『良いんじゃないかな』


「そっかそっか……」


『けど、そんなことして後悔したら絶交ね』


澪は少し目を見開き、狂華の方を向いた。

彼女はいつもの表情とは変わりないけれど、雰囲気が少しだけ違った。


「…ふぅー……踏ん切りついた。ありがとね」


『うん』


「よーし、じゃあ今夜は徹夜でゲームしようか!」


『(乂'ڼ')No!!』


------------------------


翌日の朝、珍しく澪が早起きをしていた。

いつもなら起こされない限り昼まで寝ているはずなのだが……


「ん…あぁ……なんか…厨二病臭いけど……胸騒ぎがするって言うか…」


『とりあえず朝飯食べよっか』


「あ、ありがと」


朝食は食パンに目玉焼きを乗せてソースをかけるだけの簡単なものだが、実際こういうのが美味しい。


「……やっぱ落ち着かない…」


狂華の方を向くと、彼女は何も言えないのか、静かに同じものを食べていた。

うーむと悩んでいると、ピンポーンとインターホンが鳴った。


「「……」」


なんだろうか、さっきから起こっていた胸騒ぎがさらに酷くなった。

多分だが、今インターホンを鳴らした人物が原因なのだろう。


「ボクが出る」


『ん』


椅子から立ち上がろうとしていた彼女はまた椅子に座り、静かに食事を再開した。

ボクは焦る鼓動を深呼吸で落ち着かせ、玄関のカメラに繋がったモニターを覗いた。


「どちら様ですか……」


『あ、初めまして。僕、昨日隣の部屋に引っ越して来た者でして…』


インターホンの液晶に写ったのは、丸メガネをかけ、少し長めの髪を1本に纏めた少年だった。


『これ、えっと……僕が住んでたところの特産品を…えーっと……』


「あ…はい。ちょっとドア開けるので……待っててください」


彼の顔を見た瞬間、胸騒ぎが嘘みたいに収まった。

どう考えても何かしらの関係はありそうだが、今はそれを解決するすべが無いため、一旦置いておく。


「僕の名前、橘芦花って言います。粗品ですがどうぞ」


「あ、あり……がとう…ございます」


胸騒ぎが収まったのは良いが、人見知りという別の問題が発生した。

ぎこちない動きで正方形の箱を受け取り、名前をこちらも名乗ろうと息を吸った。


「すぅ………………はぁ」


吐いた。


「えっ……?」


「あっ……えっと……神音澪です…」


「神音さんですね。よろしくです」


彼はニコリと微笑み、握手を求めるように右手を出てきた。

返さない訳にも行かず、直ぐに握手を返した。


「……橘さんは、どうしてここに……来たんすか」


「僕ですか?僕は異能力学園に通うためですかね。ここ、安かったし割と近かったので」


「橘さんも……あそこ行くんですね……」


割と驚愕しているが、ビビっているせいで驚きが現れていない。

そう言うと彼は嬉しそうな顔をし、両手でボクの手を握ってきた。


「うひょえっ!?」


「もって言うことは神音さんもなんですね!僕嬉しいです!入学前に同じ生徒に会えるなんて!」


ニッコリ笑顔でブンブンとボクの手を降っている。

振り払いずらく、乾いた笑みを浮かべるしか無かった。


「ちなみに……クラスって、どこに行くんです?」


「ぼ、ボクは……SSSクラスって言われたけど…」


SSSと聞いた瞬間、彼は更に顔を輝かせた。

この様子から見るにクラスも同じなのだろう。


「このタイミングで同じ学園、クラスの人の隣に引っ越してくるなんて奇跡的ですね!!!」


「ソ…ソウデスネ」


カタコトな返事をすると、彼はあっ、と声を出し、ボクの手を離した。


「す、すみません…初対面でこんな変なところを見せてしまって……」


「だ、大丈夫です……」


悪意は感じないし、本当にただただ嬉しそうだったし、さほど気になることではなかった。


「それじゃあ……そろそろ失礼しますね…」


「あ、はい。ではまた学園で」


彼はさっきのことを気にしているのか、申し訳なさそうに微笑して帰っていった。


「……やっぱ人見知り……きっつ…」


どうにかしないとなと思いながらそんなことを呟き、後ろを振り返ると、狂華が立っていた。

彼女は『おつかれ』と書いた紙を片手に持ち、もう片手には『どうだった?』と書かれた紙を持っていた。


「良い人そうだった。あとこれ貰った」


彼女に貰った物を見せ、そのまま渡した。


『これ、予約年単位待ちの和菓子屋の和菓子だよ』


「マジでっ!?」


------------------------


丸メガネを外し、1本に纏めた髪を解き、ぼすんとベットに大の字で倒れ込んだ。


「……」


彼、橘芦花の部屋には何も無かった。

正確に言えば、勉強用の机に高性能なPC、テーブルやベットしか無かった。


「……友達…できるといいなぁ……」


彼は眠気に任せ、朝から眠りについた。

しばらくした後、すぅすぅという寝息が止まり、彼はむくりと上体を起こし、メガネをかけず、髪を結ばず、そのまま外へ出ていった。


「……ふふっ」



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