プロローグ『せかいのおわり』
新作です。今回はあらすじ、タイトルを丸一日使って考えました。今回の話は短いので、次の話を早く出せるようにがんばります。
「うわ…ビリビリだ…」
「怖い…」
ボクは、見た目とある力のせいで避けられていた。
見た目で避けられた理由だが…最初は好奇の的だったのだ。
他の人とは一線を画すような、輝かんばかりの金髪。
小学校の入学式の時から噂になっていたらしく、学校生活が始まるという時、ボクは人気者になった。
「凄い髪の色ー!」
「きれー!」
「外国人!?」
少し恥ずかしかったが、その時は嬉しかった。
だが、人気者も長くは続かず、むしろ束の間と言えるほど短かった。
「ぎッ!」
「…えっ…?」
ボクの手を握った子が、短い悲鳴を上げて倒れたのだ。
どうして倒れたのか、初めは理解できなかった。
倒れた子は運ばれ、どういう原因で倒れたのか、教師の口から直接告げられた。
「その…電気による感電…で倒れたらしいです…」
ボクは常に超高電圧を内包しているらしく、これがとある力。
あの金髪に触れると死ぬなんて噂が広まり、まともにボクと付き合おうとする人はいなくなったのだ。
「…あ、あの!」
電気を通さない手袋をはめて、思い切ってこちらから話しかけても、避けられた。
「だれか…一緒に遊ぼうよ…」
気付けば屋上がボクの特等席になっていた。
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ボクが独りになってから、1年が経った。
変わり映えしない、みんながボクを避ける教室。
しかし少し気になる単語が耳に入った。
「ねぇねぇ、今日って転校生来るらしいよ」
「転校生…って何だ?」
「もう…他の学校から新しい人がここに来るんだよっ」
(転校生…)
もしかしたら、ボクを知らないその人となら、仲良くなれるかもしれないと、そう考えた。
「ちょっと楽しみかも……」
手袋でページをめくりにくい本を読みながら先生が来るのを待った。
その間に色々思案する。
(挨拶はどうしよ?やっぱり大事だよね!でもどんな挨拶をしようかな…こんにちは?ううん…微妙…友達になって?ストレートかなぁ…)
本をめくる手を止めながら考えても答えは出ない。
どうしようと思っているとチャイムが鳴り、先生が席に座るように号令しながら入って来た。
「みんなー席に着いて。今日は新しい仲間を紹介します」
「転校生!?」
「どんな子なの?」
「はやくー!」
他の急かしてる人のように、ボクの気持ちも早くと鳴っている。
「はいはい…じゃあ入って来てー」
先生の合図で入って来た子は、とっても静かな雰囲気をまとっていた。
「…」
「じゃあ…名前黒板に書いてね」
全くの無表情で淡々と黒板に名前を書いていく様を見て、さっきまでの大騒ぎが嘘みたいに消えた。
「…」
「神音狂華ちゃんです。皆さん、狂華ちゃんは喋ることができませんので、優しく接してあげて下さいね?」
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「はぁ〜……あの子、見るからに仲良くなれなさそう…」
屋上に寝そべり、友達がまた出来ないのかなぁと思いながら言葉をこぼす。
神音狂華、容姿は人形のように綺麗だが、纏う雰囲気が静かで冷たく、近寄り難い。
もうこの学校をやめようかなと思っていたその時、扉が開く音が聞こえた。
「…」
「あ…きょう…神音ちゃん」
屋上にやってきたのは、今考えていた神音狂華その人だった。
いきなり名前で呼ぶのは流石にアレかなと思い、咄嗟に苗字で呼んだ。
「…」
「へ?何書いて…ここで何をしてる…?あ、喋れないんだったね」
そう言うと、彼女はコクリと頷いた。
「ここはボクの避難所なの。ここなら誰にも怖がられることも、陰口を聞こえないから……」
彼女はまたメモ帳にペンを走らせ、紙を破りこちらに見せた。これが彼女の会話の方法なのだろう。
『どうしてこわがられたり、かげ口を言われたりするの?』
「どうして…まぁ…過去に色々あってさ…ちょっとクラスメイトに怪我させちゃったから…かな」
『けが?』
「うん…ボク…手袋を外して触るとね……電気が出るの」
実際に手袋を外し、金属の手すりに触れると、手すりに電気が迸った。
『すごいね』
「すごい…?怖くないの…?」
『うん』
彼女は表情をひとつも変えずに淡々と文字を綴った。
普通その様子は不気味に思うだろうが、ボクはそれがひどく嬉しく感じた。
「あの…ぼ、ボクの名前は--」
その時、大きく地面が、学校自体が揺れた。
地震だ。
手すりを掴んだままのぼくは急な揺れに体勢を崩し、そのまま彼女、神音狂華に向かって倒れた。
「避けてっ!!」
反射的に手が出てしまった。
今は手袋をしていない、触れてしまえば彼女もボクから離れて行ってしまう。
しかもボクの電気は日に日に強くなっている。
もしかして死ぬかもしれない…!
「あ…」
だが、触れてしまった。
「っ!」
すぐに手を離したが、3秒ほど触れてしまった。
やってしまったと、心が罪悪感で押し潰されそうになったその時、
「……え?」
彼女はなにも違和感が無かったかのようにむくりと起き上がり、
『いたくないよ』
そう書き、ぼくの手を握った。
「あ、危な…い…」
ビリビリと彼女の手をボクの雷は焼いている様に見えるが、まったく焼くどころが傷一つも付けていない。その事に驚きつつも、地震の事を考えた。
ここまで大きな地震は初めてで、ボクは大きな恐怖に襲われた。
「い、1回校内に行こっ…収まるまで…ここに居なきゃだけど…」
『うん』
だが、地震は収まる気配を見せず、依然ボク達は動けないままだった。
『ねぇ、あれなに』
彼女が見せた文字を見た後、指をさされた方を向くと、絶句した。
「なに…あれ…」
とてつもなく大きな、杭の様な物が空から赤熱しながら降ってきたのだ。
その超常な景色に、ボクの常識が崩れていく気がした。
『まって、なにかへん』
彼女の手が震えているのか、ガタガタの文字でそう書かれた紙を見せられ、心臓が締め付けられるような感覚に陥った。
「だ…大丈夫…?」
地震がやっと落ち着きを見せ、また何か起こらない内に動けない彼女を引っ張り、校内に避難しようとした。
だが、その時、
「あぅっ…あ、あ…あがぁ…ッ!!」
全身に電流が流れた様な…違う…… これはボクの身体の中の電流が、荒れて--
「あ…」
意識が途切れる前に、地面を、地球を貫く大きな杭が目に残った。