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己か!私に一服盛ったのは!?

 私は夢の中で、幼馴染みのラストルと遊んでいる夢を見ていた

。ラストルは、自分の兄さんに憧れて、兄と同じ冒険者になると村を出ていった。


 ラストルが村を後にして、もう四年になるだろうか。今どこで何をしているのだろう。いっぱしの冒険者になれたのか。


 ラストルはいつも言っていた。自分はいつか、勇者ソレットの仲間になると。大層な夢物語はいいから。とにかく無事に帰って来てほしかった。


「······リリーカ様。リリーカ様」


 ······ん?私の名前を呼ぶのは誰?目を開けると、目の前にカラミィの顔があった。え?これ夢?現実?


「勝手にお部屋に入って申し訳ございません。リリーカ様。朝の食堂の開いている時間が、もう残り少ないので起こしに参りました」


 食堂の時間?え?私そんなに寝坊してた?カラミィは笑顔で二つのリボンを私に差し出した。


「あ、ありがとう。カラミィ」


 このリボンは、幼馴染みのラストルから誕生日のお祝いに貰ったリボンだった。ん?目の前にリボンがあると言う事は?


 私は顔が発火したように赤くなった。私は今、筋金入りの癖っ毛が、全開で全方位に暴発していた。


 それを、カラミィに見られてしまった!私は恥ずかしさの余り、とにかく髪を結ぼうとリボンを手にするが、焦って上手く結べなかった。


 ······すると、カラミィが優しい手つきでリボンを結んでくれた。


「あ、ありがとう。カラミィ」


「料理長には伝えておきます。なるべくお早くご準備下さいね」


 カラミィは天使のような柔らかい微笑みを残して去って行った。い、今のカラミィは悪魔では無く天使だった。


 妹のハクランが言う通り、タイラントの事が絡んで無いと普段は優しいのかな?とにかく私は急いで食堂に向かった。


 ······そして、食堂は閉鎖されていた。か、カラミィは料理長に何を伝えたのだろうか?愚かな人間など待たず食堂を閉めろとでも言ったのだろう?


 駄目よ。こんな人を疑う考えを持つのは。そうよ。これは何かの間違いよ。この城に来てから、変な連中ばかりに会うから人間不信、いや魔族不信になっているのよ私。


 私は空腹を我慢し、気を取り直した。私は今日、これから向かわなければならない戦場があったのだ。


 ······教壇に立つ私の目の前に、魔族不信の原因になった連中が顔を並べて座っていた。金髪寝癖魔族。短髪乱暴魔族。酒乱長髪魔族。発情眼鏡魔族。


 ま、まともな人が一人もいない。ふと気づくと、教壇の上にグラスが置かれていた。誰かしら?とにかく有り難いわ。


 空腹だった私は、グラスの中の液体を口につけた。口の中に果実の香りが広がった。これ、果実水だ。


 私は一気に飲み干した。そして飲んだ後気づいた······これ、果実水をお酒で割った飲み物だ。


 私は猛然とシースンを見る。シースンは片目を閉じ、嬉しそうに頷く。お、己か!?私に一服盛ったのは!!


 そしてちょっと待て!何をいい事したみたいな顔してるの?全然いい事じゃないからこれ!


 興奮した私に、空腹も手伝ってたちまち酔い回ってきた。わ、私そんなにお酒が強くないのに!!


「村娘!さっさと女を押し倒す方法を教えろ!」


「黙ってザンカル!リリーカ。それより男に押し倒される方法よ!」


「シースン殿には悪いが、リリーカ殿には別室に来て頂きたい」


「リケイ。娘を別室に連れて行ってどうするのだ?」


 金髪寝癖魔族の声が聞こえた所で、私は机を叩いた。


「あんた達!目的に最短で行こうと急ぎすぎよ!!」


 あれ?なんか頭が火照ってきた。身体もなんだが軽くなったような。もう嫌よこんな講義。さっさと適当に終わらせよう。


「押し倒すのだの、押し倒されるだの、交わるだの!いい?そこに辿り着くまでには過程と言うものがあるの!」


 ······ん?私今、とてつも無くはしたない事を言ってないかしら?まあいいか。


「はいそこのぼけっとした顔のタイラント君!先ず相手をよく知るにはどうするの?」


 私の突然の質問に、タイラントは真顔で考える。


「······分からんな。何故なら私は、相手を知ろうと思った事などないからだ」


 この、対人交流能力欠如魔族!何を威張って言ってるの!


「それは、相手の趣味趣向をよく知ることよ。タイラント。貴方の趣味って何?」


 タイラントは再び真顔で考え込む。


「私に趣味などない。最も、国の政務を司る身に、趣味などに費す時間などないがな」


 この下らなくどうでもいい講義に費す時間はあるんかい!!


「じゃあ、どんな女性が好み?」


 あれ?私何を聞いているの?講義と関係ないし、そもそもコイツの女性の好みなんて興味ないのに。


「私は女に興味を持った事などない」


 え?興味無い?女性に?じゃ、じゃあ貴方は男性がお好みですか?


「男も同様だ。それよりも娘。昨日の話の二人の設定は、片方が男か女のどちらだ。後、頬とおでこ。どちらなら許すか回答していないぞ」


 ······この金髪紅目魔族。昨日の私の話に乗ってきたと思っていたけど違うわ。こいつは単純に、話の中の疑問点を質問してきただけ。


「······タイラント。貴方は誰かを好きになった事も、何かに夢中になった事も無いの?」


「無論だ。私の務めは国を富み栄えさせる事。それ以外は必要無い。私はそう教えられてきた」


 ······初対面の際、タイラントは人間を殺してはいけないのかと質問してきた。タイラントは、幼少から叩き込まれた教育環境に、人格を形成されているんたわ。


 この時、私はタイラントとの間に、埋めようがない大きな隔たりがある事を感じていた。

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