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い、意外ですわね。ザンカルさん。

 ザンカルの精悍な顔が、徐々に迫ってくる。私は恐怖の余り声が出なかった。わ、私はこのまま魔族の慰み物になるの?


「······お前もか」


 ザンカルが小さく呟き、私から離れた。ど、どうしたのこの人?


「······お前も俺が怖いか。涙を出す程」


 ザンカルに言われて、私は初めて泣いている事に気づいた。そ、そりゃ泣くでしょ!うら若き乙女が、無骨な男にいきなり押し倒されたのよ!


「······その。無いんだ。俺は」


 え?何が無いって?私は着衣の乱れを直しながら、ベットの隣で俯いているザンカルを用心しながら伺う。


「無いんだよ。俺は女を抱いた事が」


 え?そうなの?こんな「俺は女に不自由してないぜ」的な雰囲気を出している人が?い、意外ですわねザンカルさん。って、そんな事を私に告白してどうする?


「どいつもこいつも、今のお前みたいに泣き出す。そんな女をどうこう出来んだろう」


 な、泣き出す?ひょっとして、手当たりしだい押し倒していたの?この人?そ、そりゃ泣くでしょう普通!


「お前の講義を聞き、お前なら大丈夫かと思ったが、そう上手くいかんな」


 わ、私の講義は聞く者に大きな誤解を与えでいたの?いやちょっと待て。私なら大丈夫かと思ったってどう言う意味よ!?


「······悪かったな。村娘」


 ザンカルはゆっくりと立ち上がり、ドアに向かって歩いて行く。彼は分かりやすく落ち込んでいる様子だった。


「ま、待ってザンカル」


 思わず私は呼び止めてしまった。や、野獣を引き止めてどうする私!?で、でもこの人は、唯一私に親切にしてくれたわ。


「······ザンカル。いきなり押し倒すのは良くないわ。もっと少しずつ相手に近づかないと。そうすれば、相手もあなたの事を理解して、怖がる事は無くなると思うの」


 そうよ。この人は目ためは厳つくて、一見近寄り難い感じだけど、中身は優しそうだもの。


「······そうか村娘!お前が講義で言っていたな。まずは挨拶。そして食事に誘い、人気の無い場所に連れ込む。押し倒すのはそれからか!?」


 いや、だからその押し倒すって考えから先ず離れなさい。あなたは。


「だから、押し倒すのは互いをもっとよく理解し合ってからよ!


「よし分かったぞ村娘!明日の講義は、その理解し合う方法を教えてくれ!」


 ザンカルは生気を取り戻し去って行った。わ、私は何の約束をさせられたのだろう?ザンカルが退去した後、ドアのノックが鳴った。


「リリーカいる?ちょっと付き合ってくれないかしら?」


 声の主は、紫長髪美人のシースンだった。


 リリーカに連れて行かれた一室は、高級酒場のような所だった。部屋の内装、ソファーにテーブルも高そうな造りだった。


 私とシースンはカウンターに並んで座った。彼女はもしかして、私をお茶に誘ってくれたのだろうか?


「いつもの頂戴」


 シースンがカウンター内の給仕に注文する。すぐ様シースンの前にグラスが置かれた。も、物凄く強いアルコール臭がこのグラスからするんですけど?


「リリーカ。貴方も同じ物でいいかしら?」


 私は大慌てで顔を横に振り、林檎の果実水を頼んだ。私は果実水のグラスを手にした時、シースンは自分のグラスを一気に飲み干した。


 ひ、一飲みでこの濃そうな蒸留酒を?シースンは空のグラスを給仕の前に差し出し、お替りを要求する。な、なんなんだこの人


「······リリーカ。さっきの講義だけど、私はやっぱり少しはお酒があったほうがいいと思うの」


 ま、またさっきの講義の話ですか!?


「だって、お酒無しで男と甘い話なんて出来ないでしょう?リリーカもそう思うでしょう?」


 いえ全く思いません。私は目を細め果実水を黙って飲む。その間に、シースンは蒸留酒を三回お替りをしていた。


「······その。無いのよ。私」 


 ん?この台詞。どこかで聞いたような?そうだ。ここ最近に聞き覚えがある言葉だわ。どこで聞いたかしら?


「······無いのよ。男に押し倒された事が」


 ま、またその話ですか!?え、こんなシースンみたいに美人な人が?そ、そうなんですねシースンさん。


「私を誘う男は、揃いも揃って皆酔い潰れていくの。全く失礼しちゃうわ。男共は何を考えているの?」


 いえ。貴方を誘った男性はきっと普通です。貴方の酒量が普通じゃないだけです。はい。


「ねえリリーカ。どうすれば私、男に押し倒されるのかしら?」


 今すぐ断酒して下さい。それしかありません。はい。取り敢えず私は、酒抜きで男性と会う事を勧めた。


「そんな駄目よ!しらふで一体何を話せるって言うの?」


 じゃあ押し倒されるのは諦めて下さい。無理です。はい。


 シースンは空のグラスを乱暴に置く。すかさず給仕がお替りを差し出す。一体何杯目だ。それ。


「······じゃあリリーカ。明日の講義で男に押し倒される方法を教えてね」


 わ、私の明日の講義は、更に困難な物になった。私は隙を見て離席する機会を伺ったが、シースンの絡み酒に小一時間拘束された。


 シースンの両目が、怪しい光を伴ってきた。


「······ねえリリーカ。私、無いのよ。男に押し倒されるた事が」


 ま、また同じ話ですかお姉さん!?席を立とうとする私の左手首を、シースンが掴んだ。


 ······私は世界の何処かにいる勇者様が、この城に立ち寄る事を心から願っていた。

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