わ、私は何をしたの!?何を言ったの!?
······私はまた夢の中にいた。一面に広がる草原の中で、一人の子供がぽつんと立っている。
迷子になったの?私は膝を折り、子供の顔を覗き込んだ。紅い目をした子供は、拗ねたような表情で黙り込む。
······大丈夫。あたなは一人じゃないわ。私は子供を抱きしめた。何故そうしたのか、自分でも分からなかった。
いや、分かっていた。私は、そうしなければならないと。その為に、私は彼と出会ったのだ。
「······これからは、私が傍にいるから」
······私は自分の声で目を覚ました。今、私はなんて言ったのかしら?見慣れた自分の部屋の天井を見ながら、よく回らない頭でぼんやり考えた。
私は身体を起こし、カーテン越しに部屋に差し込む光を見る。今は朝かしら。私の頭は少しずつ回転し始めた。
身体は軽い。紅茶と一緒に飲んだ薬の影響も無くなったのかな
。ん?薬と言えば、カラミィはどうなったっけ?
そうだ。ネフィト執事長。確か調理室で私はネフィトさんの話を聞いて、部屋を飛び出して、それからタイラントの部屋に行って······
「部屋に行ってええええぇっ!!」
私はベットの上で絶叫した。頭がフル回転し、鮮明な記憶が甦ってきた。わ、私はタイラントの部屋に行き、部屋の薬の事を話し、そ、そ、それから······
「あああああっ!!わ、私は何をしたの!?何を言ったの!?」
再び私は絶叫する。両手で頭を抱えながら、自分の行動を思い出す。わ、わわ私はタイラントにキスをして、あ、あああ愛していると言っ······
「ったあああああああ!!」
私は三度絶叫し、身体を左右に激しく動かした。私の身体はベットから落ち、勢いそのまま部屋の端まで転がっていった。
ま、間違い無いわ。全て私のやった事に。そ、その後の記憶が全く無い。多分、私は気を失ってしまったのだろう。
自分でも信じられない行動に慄きつつ、私は急いで部屋を出た
。カラミィを早く牢屋から出す為だ。
メイドの司令室に向かう途中、ネフィト執事長がこちらに歩いて来た。
「目が覚めたようですね。リリーカ様。お急ぎの御様子ですが?
」
「ネ、ネフィトさん。カラミィはまだ牢屋ですか?」
ネフィトさんは穏やかや微笑んだ。私が気を失っている内に、老練な執事長は全てを収めていた。
私が飲んでしまった薬は、私が砂糖と間違えて入れたと言う事にしたらしい。確かに私は、仕事で薬庫と調味料庫に出入りしていた。
そこで砂糖と薬を取り間違えた。そう言う事になったらしい。カラミィは即日釈放された。
カラミィは妹達を庇っただけだと判明し、その妹達も無実だった為だ。よ、良かったカラミィ。牢屋から出られたのね。
「リリーカ様。私は自分の罪を貴方に被せました。この事をタイラント様に伝えるのは、貴方の自由です」
「······いえ、それで構いません。ネフィトさん。貴方は責任を取って城を出る事より、タイラントの御両親の遺言を守る事を優先した。それでいいと思います」
私は笑顔でネフィトさんの行動を肯定した。それが、彼にとって何よりも大切な事なんだ。
「リリーカ様。貴方に借りが出来ましたな」
ネフィトさんは少し困ったような表情になった。
「利子は必要ないので、ある時払いで構いませんよ」
私はネフィトさんを見上げながら、ちょっと生意気な事を言った。
「······リリーカ様。私は貴方の事を危険な存在だと思っていた。いや、それは今も変わりません。ですがこうも思います。貴方は、不思議な方だ」
ネフィトさんをそう言って去って行った。私は司令室に駆け込み、カラミィの姿を発見した。
「カラミィ!良かったわね。牢屋から出られて」
カラミィは私を見て少し驚いた顔をしていた。
「······ネフィト執事長から聞いたわ。リリーカ様。何故私が犯人では無いと思ったの?」
黒髪の美人メイドは、厳しい表情で私を睨んできた。私は返答するのに考える必要が無かった。
「簡単よカラミィ。あなたが犯人だったら、私は今こうして生きていないわ」
そう。カラミィが生半可な毒を使う筈が無かった。彼女は確実に即死する毒を使用するだろう。
「······ふん。これで私に借りを作っただなんて思わないでよ」
「あらカラミィ。私の借りは高いわよ。特に利子のほうが法外なの。早く返さないと、雪だるま式に増えていくからね」
私は思いっきり意地悪な顔をした。こうする事で、カラミィは私に変に遠慮する事がないだろう。
「性格悪すぎる人間ね!そっちこそ気をつけなさい!今度倒れる時は、気絶じゃ済まないから!」
カラミィが頬を紅潮させ叫んだ瞬間、司令室のベルが鳴り響いた。私とカラミィは、貴族の御用を聞きに行く為、足早に司令室を出ていった。




