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あんた等、全員不正解です。

 広いが慎ましい調度品に囲まれた部屋で、私の左手はタイラントに握られていた。


「······この様子だと、もう薬を塗る必要は無いな」


 タイラントは私の左手に、手荒れの薬を薄く塗りながら呟いた

。ん?なぜか残念そうに聞こえるのは気のせいかしら?


 あの料理対決から一週間が経過し、泣きキノコの毒で入院していた三人の料理人は無事復帰した。


 お陰で私の調理場雑用係はお役御免となった。タイラントの薬の効果もあり、私の手荒れはすっかり良くなった。


「······それにしても。本当にすごい数の薬ね」


 私は改めて、木製の戸棚に所狭しと並ぶ小瓶を眺めた。タイラントは物心ついた頃からあったと言うけど、誰が用意したのかしら?


「知らぬな。知ろうと思った事も無い」


 つむじの寝癖を気にもせず、金髪魔族は素っ気なく答えた。そうだ。私は用があるとタイラントの部屋に呼ばれたんだっけ。


「娘。お前が勇者達の前で言った話だ」


 ·······私の講義は討論会に形を変え、教室に集まる事となった。そう言えばあの時、タイラント達は私の話を聞いて、ずっと大口を開けていた。


「リリーカ。待たせたわね」


「リリーカ殿。お待たせしました」


「リリーカ!聞いたぞ。厨房の仕事から解放されたらしいな!」


 シースン、リケイ、ザンカルが教室に入って来た。既に着席していたタイラントを中心に、私達は向かい合って座る。


「今日の議題は娘。お前が以前言った両種族異業種交流についてだ」


 タイラントが口火を切り、討論会の開始を宣言する。あれ?ちょっと待って。私が言ったのと、ちょっと違うような?


「タイラント様。失礼ながら違います。異業種交流では無く、両種族酒量検定協会です」


 シースンがタイラントの言葉を訂正する。誰も酒量検定なんて言ってませんよ?シースンさん?それ、ただの飲んべえの集団でしょう。


「タイラント様にシースン殿。お二人共に違います。正しくは両種族健全乱交協会です」


 リケイが自信に満ちた顔で二人を訂正する。おい待て発情魔族。その協会はちっとも健全じゃないぞ。乱交の場を提供する協会ってどんな協会よ?


「お前ら記憶は確かか!?リリーカはこう言ったんだ。両種族押し倒し斡旋協会とな!」


 顔面崩壊から見事立ち直ったザンカルが大声を上げる。いや、あのねザンカル。あなたの答えが一番遠いわ。


 押し倒しを斡旋する協会なんて、この世界の果てまで探しても無いわ。いや、あってたまるかい。


 全員が私を見る。皆自分の答えが正しいよね?って顔だ。いや

、あんた等全員不正解です。


「両種族共済組合機構。私が言ったのは、人間と魔族が協力して公共事業を行う組織よ」


 私はため息をつきながら答えると、タイラントは不機嫌な表情になった。


「ふん。覚えにくい名だな。娘よ。もっと一般庶民でも覚えやすい名にしたらどうだ?」


 は、はあ?自分が間違えたからって、何逆ギレしてんのよ、この寝癖魔族!


「そうね。両種族酒豪協会なんてどうかしら?リリーカ」


 いや、あのねシースン。お酒からまず離れて。それ、公共事業する気が全く無い組織になるわ。


「そうですね。両種族乱交協会なんてどうですか?リリーカ殿」


 おい発情魔族。さっきの怪しい名の協会から、健全の文字を取っただけだろう。しかも、いよいよ乱交だけが目的の組織になっているぞ。どんな組織だそれ。


「妙案があるぞ!両種族問答無用押し倒し協会だ!覚えやすいだろう!」


 あのねザンカル。あなたがさっき言った協会より荒っぽい名前になってるわ。問答無用って、既に悪の組織よ。それ。


 あんた達、頭に両種族つけてるだけで、後は自分の願望並べているだけでしょ!


「皆の者は娘の意図を理解していないようだな。私が提案しよう

。その名も、両種族異業種交流斡旋協会だ」


 ちょいタイラント!アンタもそれさっきのに斡旋つけただけでしょ!


「私は以前、娘に強制され厨房で皿洗いをした事がある」


 タイラントの言葉に、シースンとリケイが動揺する。奴隷と小間使いの中間の存在が、一国の王に皿洗いをさせた事実に。


 ちょ、ちょっと手伝ってもらっただけじゃない。


「私は生まれて初めて、国を司る役目以外の仕事をした。それは、意外な程新鮮な気分だった」


 タイラントが話を続ける。そ、そうだったの?なら、毎日手伝ってくれても良かったのに。


「そこで私は考えた。お互いの仕事を交換する事で、異業種をしている相手の考えが分かり、相互理解が生まれるのではないかと


 シースン、リケイ、ザンカルまでもが真剣にタイラントの話を聞いていた。あれ?ちょっと話が違う方向に向かっているような


「素晴らしいお考えです」


 私達の間違った討論会は、男性の声で中断された。教室の入り口には、黒服を着た細見の老人が立っていた。



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