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何?この城?

 奴隷と小間使いの中間。それが、私に与えれた立場だった。魔族の城の中で、人間の娘である私の処遇と身分の名を、目の前の連中は頭を抱えて考えていた。馬鹿なの?こいつら?


「リケイ。奴隷と小間使いの中間では、呼び名が長くて面倒だぞ


 タイラントが両腕を組み、白髪眼鏡の男に苦言を呈する。じゃあ、自分で考えたらどうなの?この金髪紅目男。


「は、タイラント様。人間の娘を城に置くという前例が無い為に、致し方ないかと」


 リケイが頭を掻きながら恐縮する。それを見兼ねて、シースンと呼ばれた紫長髪美人が口を開く。


「タイラント様。では奴隷人間小間使い、でどうでしょう?少しは呼びやすくなったかと」


 タイラントは前髪に手を当て悩む。ほかにもっと悩むべき重要な事が多々あるでしょう?暇なの?あんた。


「よし娘よ!お前に選ばせてやろう!奴隷と小間使いの中間!若しくは、奴隷人間小間使い!どちらが好みだ!」


「どっちもいい訳ないでしょ!!馬鹿かあんたは!!」


 私の罵声に、タイラントは怯んだ。三人の魔族は頭を抱えて悩む。もうやだ。この連中に付き合ってられない。


「国王の客人。部下達に説明するなら、それで充分だろう?」


 突然、男の声がした。私と三人の魔族は、声の方向を一斉に見る。半開きになった扉に、銀色の甲冑姿の魔族が立っていた。


「おいタイラント。この人間の娘か?お前が例の村からさらってきたのは」


 甲冑の男はズカズカと大股で歩き、無遠慮に私の顔を覗き込む

。ち、近いんですけど、顔が。


 短髪の男は、若く精悍な顔をしていた。額と頬に刀傷があった

。戦場で負った傷かな?


「ザンカル!タイラント様を呼び捨てにするなど不敬極まりないぞ!」


 紫長髪美人のシースンが、甲冑の男を一喝する。お、怒ると怖いなこの人。


「怒るなシースン。俺はタイラントとは寝小便する頃からの付き合いなんだ。今更呼び方なんて変えられんさ」


 ザンカルと呼ばれた男は、そう言うと私の隣に座った。だ、だから近いんですけど。


「良いシースン。それより、ザンカルの意見は傾聴すべき物がある。私の客人。要を得て簡潔だ。それに決めよう!」


 タイラントは満足した様子で頷く。リケイとシースンも了解と言わんばかりに敬礼している。


 かくして私は、魔族の首領の客人となった。なんなの?この茶番?


 今日は日も暮れ、私の教えは明日からという事になり、私は自分の寝泊まりする部屋まで案内されていた。


 な、なんで案内するのが、この甲冑の人なの?ザンカルと呼ばれていた男は、相変わらず大股で歩いて行く。


 ちょ、ちょっと歩くの早くて、ついていくのが大変なんですけど!その時、廊下の曲がり角で、さっきの黒髪メイドに遭遇した


「ザンカル様。よろしければ、私がその方をお部屋までご案内しましょうか?」


 黒髪メイドは、優しく微笑んだ。私はこの無骨な魔族より、優しそうなメイドの方が嬉しかった。


「······そうだな。じゃあ頼んだぞ。カラミィ」


 ザンカルはそう言うと、去り際に私の肩を叩いた。え?何?


「村娘。何か困った事があれば俺に言え」


 ザンカルは笑みを残し、去って行った。え?あの人、結構いい人?


「こちらへどうぞ。ご案内致します」


 私はカラミィと呼ばれたメイドの後に付いていく。さっきのザンカルと違って、彼女はお淑やかにゆっくり歩いて行く。


 私は、さっき彼女が淹れてくれた紅茶の感動を伝えたくて口を開く。


「あ、あの、さっきの紅茶、とっても美味しかったです!」


 カラミィは優雅に振り返り、優しそうに笑った。


「まあ。ご丁寧にありがとうございます。お口に合って良かったですわ」


 ······この娘、よく見るととっても可愛らしいわ。美少女のメイドなんて、あの金髪魔族には勿体無いわ。


 この穏やかで優しそうな性格。私、この娘となら友達になれるかもしれない。そうよ、相手が魔族だからって、差別は良くないわ。


 心を開けば、人間と魔族だって友達同士にきっとなれる筈よ。部屋の前に到着した時、私はカラミィに自分の名前を伝えようとした。


 ドンッ!


 部屋のドアを背にした私の右目の横に、カラミィの腕が見えた

。カラミィの左手は、私の頬を掠めドアに叩きつけられていた。


 な、ななな何?


 カラミィが左腕をたたみ、顔を私に近づける。お、お顔が近いんですけど!カラミィさん!


「······人間風情が、タイラント様に色目を使ってるんじゃないわよ」


 え?色目?私が?あの金髪魔族に?いえいえ誤解です。大きな誤解よそれは!そ、それよりもカラミィさん?


 その乱暴な言葉使いに、私を睨みつけるその鋭い眼光。さっき迄の愛らしい貴方は何処に消えたの!?


「いい事?あんたの健康の為に忠告しといてあげるわ。タイラント様に近づくな。紅茶で毒殺されたくなかったらね」


 私の思考回路は混乱を極めた。カラミィの表情と殺意がこもった言葉に恐怖し、必死に自分の頭を上下に振り続けた。


「お利口ね······では私はこれで失礼致します。リリーカ様。ごゆっくりお寛ぎ下さい」


 カラミィの表情は、悪魔から天使に豹変した。そして彼女はお淑やかに去っていく。その後ろ姿を見送りながら、私は恐怖に慄いていた。


 ······何?この城?


 

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