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擬人化チートガチャ考察

 クジョウさんと知り合って数日後。

 日本の思い出話をしながら一緒に釣りをしたり、竹籠などの工作を教えてもらう仲になっていた。


 今日も、扉の隙間からルビーのなんかジトッとした視線を背後に受けつつ家を出て、川べりで二人で話をしている。


「チート?」


「はい。クジョウさんはチート的な能力を持ってますか? ゲームのアバターがレベル高いとか、無限に入る四次元アイテムボックスとか。」


「うーん、とりあえず四次元アイテムボックスは無いね。もともとのゲームが重量制限があって、武器防具のほかは手荷物くらいしか持っておくことができなかったんだ。」


 都合よく矢筒が無限に湧いてくる事はないらしい。


「素材とかのたくさん使うアイテムは倉庫ってシステムがあって、そこに保管していたんだけど、この世界では倉庫にアクセスできるポイントが無いんだ。少なくともこの百年、見つけたことがない。」


「それじゃあ、手持ちのアイテムだけで?」


「うん。持ちきれないものは捨てたり、売ったり。家においたり。普通の人とおんなじだよ。」


「住んでる場所は……」


「森の管理人だからね。森のなかに猟師小屋があるんだ。そこ借りて住んでるんだよ。」


「毎日来れる距離なんですね。」


「うん。一番のご近所さんなんだよ。」


 辺境の山奥だけどお隣さんがいたらしい。

 もっとも話を聞くと、大人の足でも数時間かかるそうだ。


「チートと言えるかは微妙だけど、硬化って能力がある。」


「硬化?」


「うん。文字通り身体が固くなる能力。風魔法とかは、この世界の魔法を学んだんだけど、硬化は貰い物の能力。」


 貰い物ってなんだ。

 俺みたいに神様からもらったんだろうか。


「貰い物なんですか?」


「うん。とあるダンジョンのボスを倒したらね、身についてた。」


 ダンジョンに限らず、野生のエンシェントドラゴンなどネームドモンスターを倒すと稀に能力がもらえるらしい。

 ユニークスキル、というやつか?


 ルビーが冒険者ギルドで作ったギルドカードには、レベルと能力値、クラスが明記されていた。

 他に火魔法5レベルや格闘4レベル等のスキルを保有しているそうだが、ギルドカードではそこまでわからない。

 調べるには専門の鑑定スキルが必要になるらしい。


「アバターのちからとは別ってことですか?」


「うん。このアバターはボウスナイパーって職業で、弓矢の攻撃に特化してるの。」


「へえ……そこはゲームの能力なんですね。」


「弓矢メインで風魔法で補助するのが、僕の戦い方だね。硬化は冒険者してる時に、ついでに手に入った力なんで、接近専用。僕のスタイルとは相性が悪い。あんまり使ってないね。」


 君は?と目で催促された。


「僕は……擬人化チートガチャって力があります。」


「なにそれ。」


「お金を消費して、持ち物を美少女に変えられます。」


 誤魔化してもしょうがないので、誤解を与えないように伝える。

 人に話したのは初めてだ。ちょっとドキドキした。


「んー……回数制限や一回使ったら次に使えるようになるまでのクールタイムはあるの? 連続で使えば一晩で女の子だけの村や国を作れるの?」


「いえ、まったくわからないです。今まで使ったのは一人だけです。」


「軍団を創るスキル……? 出てきた子の制御とか指揮はとれるの?」


「ぜんぜんいう事聞いてくれません。従順とは程遠い感じです。知識は最初から持ってて自分で物事を判断してます。」


「君の神様は何を考えてそんな能力を……」


「あ、いや、えーっと、最初は違ったんですよ。俺がほしかったのはあくまでガチャを引く、美少女キャラがキャラクターのままで欲しくってっ!」


 しどろもどろになりながら説明する。

 クジョウさんは黙って一通り聞いていた。


「……というわけなんです。」


「それ、間違いない?」


 コクリとうなずいて答える。


「そう。じゃあ、ちょっと考察というか思いついたことを話すけど……」


 クジョウさんがそう前置きする。


「神様がくれるチートってある程度パターンが決まってて、アキレウスの踵以外不死身とか、ジークフリートの背中以外不死身とか、神話にルーツがある能力はある程度似通ってたりするんだ。」


「はい……わかります。」


「それで、最初はギリシャ神話のカドモス王が女神アテナから授かった、竜の牙を消費して地面から生えてくる兵士とか、ロシアのイワンが悪魔からもらった、振ると兵隊がいくらでも出てくる魔法の稲穂がチートの原型なのかな。と思ってた。」


「詳しいですね。」


「でも話聞いてる限り、女神様は『百年使った道具が意思を持つ付喪神や長い年月を生きた猫が猫又になるという伝説がありますが、それらを自力で起こせるようになる力』って言ったんだよね。」


「はい……あっ!」


「その能力、元となったのは『妖怪を生み出す力』なんじゃないかな……それを基本ベースに、女神様がその場でアレンジしたんだ。」


「ええー。」


 あの駄メガネ、日本の神なのかよ!!!!!

 白いドレスとか着てたからギリシャとかそっちかと思ってたぜ!


「アレンジ内容は、出来上がる妖怪が美少女に限定。お金を消費。所有権。手元にあって触れる。元となった品が消える。元には戻らない。……かな。もしかしたら他にも制限やアレンジがついてるかもしれないけど、女神様の発言を分析すると最低限これだけあると思う。」


「じゃあ、ルビーは……」


「すごく失礼なことを聞くけど、スタールビーさんは……年齢としを取ってる? 加齢しているなら人間だし、加齢していないなら……」


「ルビーは、八年分、ちゃんと、変化してます。変わってます。」


 まさかババアになってるとかは言えない。

 大事な家族だし……いや、それだけだし!


 ルビーが年をとってることは確かだ。

 出会った頃が十四~十五歳程度で中学生くらいだったが、今は二十代前半の容姿に変わっている。


「じゃあ、妖怪化はないね。人間だ。」


「ほっ」


 なんだか知らないけどすごくホッとした。

 本当になんでか知らないけど、心臓がバクバクしてた。


「あとは、道端の小石じゃ能力が発動しないというのもわかった。もともと妖怪になれるような、百年使った器物という表現が当てはまるような、古かったり、無念や怨念や執念といった使い手の想念が染み付いてたり、自然の精霊が宿るような特別な道具じゃないと能力の対象にならないんだ。」


「あ、そういうことか! でも、怨念とかって……」


「マイナスな感情、いわゆる陰の気から生まれるほうが妖怪っぽいよね。陽の気を高めて歌って踊る妖刀とかあんまりないし。」


「そうですね。」


「隠者の家も、確か六十年くらい前に建てたはずだから……あそこの道具じゃ百年以上も古いのはないかな。」


「いろいろ知ってるんですね。」


「長生きだからね。しかし妖怪化してなくてよかったね。子供を山奥で育てるとか、まんま金太郎の山姥のようじゃない。」


「いやそれ、洒落になりませんから……」


 ルビーが聞いてたら激怒だろうな。と思う。

 しかし妖怪かぁ……妖怪かぁ……。


「なんだか妙にスッキリしました。ありがとうございます。」


 本当にストンと納得できた。


「いえいえ。まぁ、なんだ。頑張って。」


「はい。」


 その日、クジョウさんと別れた後で――魔王のことを相談し忘れたと気がついた。


 あと帰ったらルビーがスネてた。クジョウさんからもらった鹿の燻製肉でも機嫌が治らないため、ご機嫌取りにしばらくかかると思う。

誤字等ご指摘願います。

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