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035 DJリッチー

「ヘイ! ヨー! 気が滅入る作業だな!」


 巨大な鋼鉄製サソリといった外見の魔獣ギルタブルルの背に乗って開拓村を捜索……キョンシー退治をしていたら、朝ごはん屋の屋台の残骸にDJリッチーが腰掛けていた。黒いローブに骸骨のような顔。髪の毛がまばらに生えた頭。


 どういう偶然か、こちらは俺一人だ。ついていたはずのルビーやリュミドラがいない。


「バトるつもりはネーyo!」


 DJリッチーは自然体といった様子で木製イスの角度を変えて俺の方を向く。


「ちょっと人払いをさせてもらった。」


 雰囲気が変わる。チャラけた感じから、重々しい口調に。重厚な男性のヴォイスだ。


「なんなんだお前は?」


「五百年前に召喚されて無理やりテン・センにされた男の成れの果てだ。」


「なんだって!?」


「名前はリッチー・デイモンド・ジュニア。アメリカ人。ミュージシャン志望。だった。」


「DもJも本名かよ……」


「元始天尊教……いわゆるドーキョーだな。その召喚により力を押し付けられて当時の問題を解決した……その後もずっとこの世界にいる。不老不死だ。アンデッドじゃないぜ。この顔は皺くちゃ白髪ジジイのさらにその先、骸骨みたいに成り果てた最先端のジジイフェイスさ。」


「マジかよ……本当に不老不死なのか。」


「五百年もジジイやってりゃ開き直るしか無いな。四百年くらい前に冒険者ギルドを作ったのも俺だ。そんで今も極秘裏にだがギルドの元締めをやってる。だから冒険者ギルドのメンバーの動きは常に把握している。ステータス測定器やギルドカード関係の備品を作ったのも俺だ。念の為いっとくけど宝具じゃないぜ。誰でも使えるからな。」


「うわぁ……それで、そんなDJリッチーさんがわざわざ俺に何の用だ?」


「この事態の収拾をつけに出てきたんだが、大体お前さんたちがやってくれたんでな。あとクジョウか。センキュウ。」


「そうだけど……全部がこれで片付いたのか?」


「半分な。転移門は閉じたしすぐに連中がどうこうってのは無い。だがバキュラどもにこの世界の座標を知られた。だから数年以内に侵略の尖兵が来ると思うが……派手に動く連中じゃない。すぐにはわからないだろうな。」


「終わってないじゃないか! 全然ッ!」


「クジョウに撃たれて自爆未遂したバキュラはロボットだ。たくさんいる。頭のビーコンを破壊すりゃ信号は止まるが、もう送信済みだからたいして違いはない。気分の問題だな。盗撮は継続中だ。まぁ潰しとけ。」


「お、おう……詳しいんだな。」


「地球を奴らから守ってた無免ヒーローは俺だ。だった。召喚されて守れなくなったが。海底ゲートの爆破前に呼び出されちまってな。」


「お、おいいいい!!? お前のせいで俺は……!」


「お?なんだ俺の後任だったのか? それとも勘違いでもされたか? すまんな。文句は元始天尊教の巫女に言ってくれ。この世界の時間で五百年前の。」


 今も昔もトラブルメーカーだな巫女!


「こうしていらん事までぶっちゃけてるのはな。あれだ。あの皇女はやばい。めちゃやばい。どうしようもなくやばい。直近で世界が滅ぶとしたら、お前さんがあの皇女さんの扱いを間違えたときだ。」


「エルジェ……が?」


「ハネエルフたちが説明しちまったが、世界を作り変えられる。だから、俺が俺であるうちにお前にいろいろぶっちゃけておこうかと思った。今この世界を危機にさらしている魔族の侵略やバキュラと危険度どっこいどっこいだな。全知全能にもっとも近いくらいのやばさだ。しっかり手綱しめとけと言いたいが……まぁがんばれ。」


「待って。ちょっとまって。」


「ん?」


「な……仲間になってくれ! 俺の仲間に! バキュラの問題だけじゃなく、こ、この世界を護るために! 俺は魔王を倒す! バキュラたちも倒す!」


 世界を護る……嘘ではない。俺は駄メガネが魔界に拉致されるのを阻止したいと思っている。そのために魔王を倒したいと思っている。バキュラが攻めてくるなら撃退したいと思っている。

 DJリッチーはまじまじと俺を見た。


「俺ァしわくちゃのジジイだぞ。あとすげえ変人だぞ?」


「構わない。むしろ助かる! まわりが女ばっかりで気が狂いそうなんだ!」


「お前さんいつかヒガミで刺されるぞ。」


「望んでいなかったんだ!」


「あーはいはい。と、は、いってもなぁ。俺はソトに出れるツラじゃないんだ本来は。どう見ても骨太郎だろ? 身元不明の人骨ジョン・ドゥーだ。」


「宝具! 宝具の設計図、全種類知ってる。中には外見を変えるのもあった! 教えられる。」


「お前さんちょっと不気味だな。」


「ぐ……」


「宝具の設計図は正直ありがたい。なにせ五百年前でさえ二つしか残ってなかった。俺の力は若い頃ハイスクールで学んだ学問と年月で得た知識とこの世界のメイジ系魔法とHIPHOPだけだ。新たな力をくれるってんならお礼をしなけりゃな。」


「HIPHOPで……?」


「それが一番重要だろう? 連絡と情報はマクバーンか各地方のギルドマスターを通せば伝わる。俺はギルドマスターの更に上、ギルドグランドマスターって肩書になってる。正体と所在地は一部しか知らない。」


「ギルドグランドマスター……」


「おっかねえ皇女さんに見つかりそうだからそろそろ消えるぜ。あばよ。」


 DJリッチーが物陰に消えると、エルジェブブが目の前に現れるのは同時だった。瞬間移動で現れたかのように一瞬だった。遅れて周囲に風が舞う。


「ご主人様! この開拓村すべての索敵がおわりましたわ! もうテロリストの残党はいません。」


「お、おう……すごいな。」


 エルジェブブは目をキラキラさせてとても褒めてもらいたそうだ。俺はよしよしと頭を撫でる。


「それでご主人様、いいことを思いつきましたの。」


「なんだい?」


「あれです。」


 はるか遠くに見える超巨大な山脈のようなアイランドヌーを指差す。電波祭りに惹かれてやって来た愉快な仲間の最後尾だ。電波は止めたのでもう近寄ってこないはず。正直、あの巨体はどう対処していいのかまったくわからないので助かった。


「あのアイランドヌーは身体の中に複数のダンジョンコアを持つ生きたダンジョンであり、さらに背中に複数の都市と国家があります。」


「そうなんだ。」


 スケール感がおいつかない。本当に島じゃないか。


「はい。あれをそっくりまるごとご主人様のしもべに作り変えて、魔女の山にあるフォートレスの門前町にしてしまいましょう!」


「ちょっと待て」


「もちろん、低レベルだったり品性がない住人は作り直さずに他の部分の強化部品として再利用します。ご主人様のしもべにふさわしくないのは入れません。」


 なんてこった。

 エルジェブブは多少いびつな場所がらもこの世界に存在している国と、いまも生きて笑って泣いて日々を一生懸命生活している国民たちを複数まるごと誘拐して改造して洗脳して辺境の土地に配置し直すつもりだ、まるで都市を作るゲームをプレイしている途中で他人が作った別の都市のデータを再利用して使い回す感覚で。これがハネエルフの言っていた破壊と創造なのか?


「エルジェブブ、ステイ。」


「まぁ……ご主人様が名前を呼んでくれた。」


 エルジェブブが感極まったといった様子でくるくる回る。


「なんか雰囲気変わってない?」


「気がついたのです。この世界は、わたくしが持っていたエルジェの記憶にあるよりも『思い通りになる』と。ハネエルフの言葉や、機械の竜との戦いでわかりました。力を振るうのに魔法を使う必要は本当はなかったんです。ただ念じればそうなる世界だな、と。」


「そ、そうなんだ……」


 ああ、うん。


 ハネエルフたちの。DJリッチーの気分がちょっとわかった。



 ヤ バ イ



 これはやばい。世界が危ない。

誤字等ご指摘願います。


ギル祭りのため更新頻度下がります。ご容赦下さい。

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