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ソラと異国と綺麗な魔法  作者: みんみん
第一章 ソラと異国と綺麗な魔術
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3.従姉弟達との再会

本日、人物紹介とプロローグと本編3話、同時更新しています。

いきなりこのページを開かれた方は、目次に戻ってプロローグからお読みください。

「ドレミー! 会いたかった!」


「あ! 早速抱きつくなんて! ダメ! 離れなさい、麗美!」


「わーい、スピィ、元気にしてたー?」


「うんうん、ドレミに会えると分かってから、更に絶好調になったよ!」


「待て待て待て! 額同士をコッツンコとかしてるんじゃなーい!」


「スピィ、後で一緒に遊ぼうよ!」


「もちろん! そう思って、色々考えといたんだよ! 中庭が良いか、噴水で遊ぶか、裏手の林が良いか。でも、その中でも一番のおススメは、前行った秘密の場所のそばになってる野イチゴ摘みなんだけど、ドレミ、どうする? 魔法庁は広いからどこでも遊べるよ!」


「秘密の場所ってドコ!? そこでこっそりナニする気!? お兄ちゃんは許しませんよー!」


「わぁ、野イチゴ! ねぇ、お父さん、行ってきて良い?」


「ちょっと、ちょっと麗美! お兄ちゃんの言うことガン無視しないでー!」


「お兄ィ、うるさいよ。少し黙ってて」


「なんですとー!? ううう……お兄ちゃんは、お兄ちゃんは……!」


 部屋の中に入ったとたん、大興奮の麗美と、必死の俺に苦笑して、父レチタティーヴォは少し落ち着けと娘と息子の肩を叩いた。


「麗美、行っても良いけど、皆へのご挨拶がまだだぞ。礼儀はしっかりしないとな」


「あ、ごめんなさーい」


 てへ、と頭をコツンと叩き、すぐに部屋の中の人々に向かって麗美は元気よく挨拶をした。


「アンティフォナ叔母さん、アリアお姉ちゃん、マドリガーレお姉ちゃん、こんにちは!」


「こんにちは、レミちゃん。ゆっくりしていってね」


「はい、叔母さん、ありがとうございます!」


「こんにちは、レミちゃん。スピリトーゾとたくさん遊んでいってね」


「アリィお姉ちゃん、ありがとう!」


「良かった、レミちゃんがちゃんと来てくれて。もう、数日前からスーゾがずっとそわそわして落ち着きなかったからね」


「あ、ひどいっ! マーレ姉さま、内緒って言っておいたのに!」


 アンティフォナ、通称フォーナ叔母さん。俺の父親であるレチタティーヴォの弟、アルマンド叔父の妻である。優し気な風貌に穏やかな微笑みをいつもたたえているのに、なんと魔法長官の夫を支えるしっかり者の魔法副長官だ。こちらも黒の魔法副長官服を着ている。


 アリア、愛称はアリィ。叔父夫婦の長女で、十九歳。あと半年ほどで二十歳になり、成人すると同時に幼馴染の元へ嫁ぐことが決まっている。とても穏やかな気質で常に微笑んでいて、激怒している様子など俺は見たことがないくらいだ。


 マドリガーレ、十七歳。次女で、こちらは逆に常に怒っていて不機嫌そうな顔をしている。妹の麗美に対してはとても優しいのだが、俺に対してはライバル心をメラメラ燃やしているせいか、いつも(にら)みつけていて話にならない。愛称はマーレだが、俺はそんな風に気安く呼んだことなどない。今日もなんだか不機嫌そうだ。彼女の姿を見て、隠していたため息をまたひとつついた。


 そしてスピリトーゾ。愛称はスーゾ。麗美だけはスピィと呼んでいる。叔父夫婦の長男で九歳。ほんの小さな頃から「将来ドレミをお嫁さんにする!」と言ってはばからない、俺にとっては超絶迷惑な存在である。


 ちなみに、「ドレミ」というのは麗美のことだ。宍戸(ししど)麗美(れみ)とフルネームで呼ぶと「しし」「どれみ」に分けられることからスピリトーゾがそう名付けた。スピリトーゾは歌うのがとても好きで、レチタティーヴォ伯父さん一家の名前が皆、地球の音名で表せることができると知って大変興奮し、それからずっと麗美を「ドレミ」と呼ぶのだ。


 そして、彼は他の者が麗美を「ドレミ」と呼ぶのを許さない。自分だけの呼び名だと宣言して所有権を主張しているのだが、それがまるで麗美本人を所有する権利があるかのように振舞うので、シスコンぎみの俺としてはなんとも気に入らないところなのだ。


 しかも家族など親しい者が呼ぶ愛称として、スピリトーゾは「スーゾ」と呼ばれているにもかかわらず、麗美だけには「スピィ」と呼ばせている。自分達だけの特別な愛称で呼び、呼ばれることに、この幼い従弟はとてもこだわっているらしい。


 和気あいあいとなごむ室内で俺は、普段素直で優しい妹から「お兄ィ、うるさいよ。少し黙ってて」などとキツイ一言をもらってショックを受け、立ち尽くしていた。

 それに対して気を向けた者がひとり。


「ソラ、何をぼうっとしているの」


 マドリガーレだ。

 俺にとって、このふたつ年上の従姉は、そりが合わないくせに無視したくてもなかなかできず、そして相手の方も自分を放っておいてくれないという、なかなかに複雑な存在であった。


「まったく、相変わらず口を開けてぼんやりしてて……三年も経ったのだから、少しはマシになってるかと思ったのに」


 ふん、と小馬鹿にしたように言う従姉にムッとして、相手を上から下まで視線を這わせた後で言い返した。


「そっちこそ。三年前と比べて、ぜーんぜん成長しているようには見えないねっ」


「なっ……! し、失礼な!」


 ぷいっとそっぽを向く俺に、慌てて両腕を胸の前で交差するマドリガーレは真っ赤な顔で体を震わせた。


「奏楽、女の子に向かって言って良いセリフじゃないわよ」


 母親の蘭々が「めっ」とでも言いそうな顔でこつんと俺の頭を叩いた。


「ってーな。俺は別に何も特定して言ってないだろ。あっちが勝手に誤解しただけじゃん」


「それでも。誤解されるような言い方をしたあなたが良くないわよ?」


「まぁまぁ、ララ義姉(ねえ)さん。この子がツルペタなのは事実だから仕方ないわよ。ホントにこのままだったらお嫁の行く先も心配。ソラくん、どう? 引き取ってくれないかしら?」


「「ぜっっっったい、イヤ!」」


 アンティフォナ叔母の言葉に、俺とマドリガーレは声をそろえて否定した。

本日より連載開始しました。

12月まで週3回、更新する予定です。

次回は3月7日(水)です。

どうぞよろしくお願いいたします。


登場人物がいっぱいで混乱していませんか?

最初は、ソラには両親と妹、マーレには両親と姉と弟がいる、という程度に覚えていただければ良いと思います。

そして初登場時から険悪な感じのソラとマーレですが、ふたりの関係を見守ってくださいね。

どうか皆様に少しでも楽しんでいただけますように。

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