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ソラと異国と綺麗な魔法  作者: みんみん
間章3 愛と迷いと決意の時
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7.ソラの秘密

本日は2話同時更新しています。

その1話目です。

 そうだった。

 なんだか俺は、教わってもいない魔法を使えてしまうのだ。

 別に、やろうと思ってやったわけじゃないから、次回も使えるかどうかなんて自分でも分からない。とにかく毎回、必死な時に発動した魔術だから、次はできないかも知れないけれど。


「恐らくだが……ソラが様々な魔術を使えるのは、フォーナの……つまり、第五家の魔力素質を引き継いでいるからだと思う。そして第五家には秘密があるのだ」


「第五家の秘密?」


「そう。第五家に生まれた者は、婚姻して他家に移ってからも決して自分の持つ素質や第五家の秘密を漏らしたりはしない。第五家には、他の者には決して話せない秘密があるのだ。だからわたし達にも、ソラの魔術が大暴発し命の危機を感じて、初めてフォーナが教えてくれたんだ。フォーナ、彼らにも教えてやってくれないか?」


「ええ。ソラは当事者。そしてあとの三人はソラを支えて一生生きていくのだから教えないわけにはいかないわ。だけど本当に、決して外で言わないでちょうだい。いいえ、外でと限定せずに、自分たちの口からこのことについては話題にも出さない、そのくらいの気持ちでいて欲しいの。良いかしら?」


「はい」


 若者四人は、口を揃えて返事をした。

 それを確認した後、アンティフォナ叔母は“誓約の魔術”というものを使った。そして落ち着いた声で「話すわね」と説明を始めた。




** ** **




 では、話すわね。


 実は第五家というのは……元は王家の庶子(しょし)が祖なの。我が国は王族と言えど一夫一婦制。けれども開国して間もない頃、三代目の王が外に子供を作ったの。その子が女児だったら問題なかったけれど、生まれたのは男児だった。つまり、女児であったら隠して育て、内密でどこかに嫁に出せば王家の因子は消えたのに、男児だったから王家の魔力素質を受け継ぎ、なおかつ次の世代にも繋げてしまえるという訳なのよ。


 そうなって問題が起きない訳が無い。王の妻である王妃陛下は嘆き悲しみ、怒り狂い、自分と自分の子を取るのか、それとも浮気相手とその子を取るのか、どちらかを選べと王に迫った。時の王妃陛下は隣国の王女。彼女を捨てて浮気相手を取れば、隣国との関係が悪化するのは必定(ひつじょう)。王は泣く泣く浮気相手とその子をあきらめた。


 けれども本当は生まれた子を捨てたくはなかっと言う。なぜならその子はとても才能にあふれ、後継ぎである王太子と同程度に、もしくはそれを凌駕(りょうが)するほど魔力的に高かったということだから。しかも男児、その因子は次代に受け継ぐことができる。王は表向きその子をテネレッツァ家に養子に出しながらも、密かにその子がいつの日か、日の目を見られるようにと養子先にくれぐれもと願って託したと伝えられている。


 その頃はまだ王家の力は絶大なもの。五家が誕生するのは遥か未来の話。

 その時から、わたくしの生まれたコン・テネレッツァ家は王家の影の存在として寄り添って生きてきたの。


 だから第五家には、実は王家と同じ魔力素質があるのよ。

 それは“時空”。

 王家と第五家には時空を操る力があるの。

 この辺り、以前パストとアリィとマーレには少し話したわね。

 でもソラは初めて聞く内容だろうし、あの時に詳しく話せなかったから、今日はいちから説明するわ。


 時空魔法。

 使用は、他国との争いがあった時のみ、と言われているわ。

 どうしても話し合いで解決できなくて、他国が我が国の領土に侵入、進軍してきた場合。

 ……おいそれと歴史に干渉することは禁じられているし、空間を勝手に繋ぐことも禁止されているから、どちらも使用時は王家と第五家本家の合意があって初めて許可が出されるという感じね。


 つまり王家と第五家は、同じ力を持っていて協力し合いながらも、互いに監視をし合う関係という訳ね。


 次に時空魔法の具体的な使い方を話すわ。

 まず第五家が時を止める。当主が中心となって魔術を行うけれど、当主ひとりでは成しえないので、第五家に生まれた者は有事の際には他家に嫁いでいてさえも召集がかかることになっているの。だからわたくしも、もしも他国から攻め込まれた時には前線に行くことになっているわ……。


 まぁ、それは置いておいて。

 とにかく、第五家が一族総出で魔術を行い、時を止める。

 次に王族が空間魔法を使って敵兵を彼方に飛ばす。一度に全員を同じ場所に飛ばすのではなく小分けにして、この戦に関わりのない国々の首都や、あるいは山の奥深くなどに飛ばすと聞いたわ。そうして第三国の首脳陣に敵兵の処断を任すというの。つまり、我が国に攻め入った敵国は、経済を含めた外交的に諸外国から孤立するという訳ね。そのため、我が国は周辺国との関係を良くし、何かあった時に味方してもらえるよう常に気を配っているし、そもそも敵国を作らないように外交に力を入れてきたわ。


 そして王族が敵兵を飛ばした後、第五家は全力で時を戻す。攻め込まれる直前まで戻すことができたら、人も物も失わずにいられる……そのために第五家に生まれた者は、幼い頃から徹底的に魔力訓練を受けるの。


 本当は、わたくしは生来もっと魔力が少ないはずだった。けれども第五家に生まれたからにはと幼き頃から訓練をし、それでようやくアルと婚約することができるくらいに成長できたのよ。だから魔法副長官にというお話をもらって、アルやレーヴォ、それからセリオが『もっと努力すれば必ず魔力は上げられるよ』と言ったけれど、実はもうその頃には、わたくしの伸びしろはもうとっくに限界にきていたの……。


 ああ、なんだか話が()れてしまったわね。

 とにかく、そうして第五家は王家と共に国を守るのが役目。

 だからこそ“王家の護り人”と呼ばれるの。


 ただし、いくら時を戻し人命も土地も元通りになったとしても。

 人々に、攻め込まれた時の記憶は残ってしまう。

 命を落とした瞬間や、建物に圧し潰されていく時間……そういった記憶が心に深く傷をつけてしまうの。

 それは第五家や王家にとっても同じ。

 戦を()の当たりにして、いくら元通りにできたとしても、国を蹂躙(じゅうりん)された記憶は残ってしまう。


 だから第五家は、外交の重役に必ず就くの。表に出過ぎないように責任者は他家に任せながら、第二位の地位にはかなりの確率で第五家がなるのよ。そういう意味では、魔法庁の中で総務部を引き受けているのもそんな感じね。表に出ず、後ろで控えていながら、それでもすべてを把握して国が道を外れていかないように見守る……それが第五家の使命なの。


 まぁ、第五家の説明はこんな感じね。

 ここからは、それを踏まえてソラの力について話すわね。


 本来ならばわたくしは嫁に出てしまったので、わたくし自身は第五家の招集に駆け付けなければならないけれど、わたくしの子供達にはその義務もないし、その力も受け継いでいないの。わたくしが女性だから、それは当然のことよね。


 でもソラには魔力合わせによってわたくしの……第五家の力が引き継がれてしまったの。三人で行った魔力合わせによって、レーヴォの中にわたくしの魔力素質が一時的に宿ってしまったから。


 だからソラは、王家の、そして第五家の魔力素質も引き継いでいるのよ。

 春に商人街でソラが魔力暴走者の腕を止めたと報告を受けたけれど、パストに詳しく聞いたら、それは結界ではなく時の魔術だったとのこと。ソラの瞳は使用する魔術で色を変えるというけど、その時は紫色だったというから間違いないと思うわ。ソラ、あの時、魔力暴走した若者を止めたのは、あなたの結界魔術ではなく、時の魔術だったのよ。


 時空魔法を使うと、空間が……空が紫色に染まると聞いているわ。実際に第五家の人間が魔術遮断室で時空魔術の訓練を行うと、部屋の中は紫色に染まるの。だから第五家の魔力の色は紫だし、空の曜日は紫なのよ。

 ふふっ、これはちょっとした豆知識ね。


 まぁ、それはともかく。

 こんな風にソラは、人には無い才能を持っているの。


 ひとつは魔力量。

 それは国で一番の実力者と、三本の指に入る魔力量を誇る補佐官、そして微力ながらわたくし、という三人の魔力合わせ直後にできた子供だから。


 もうひとつは魔力素質。

 第三家の風の資質をベースに持ちながらも、第五家の、ひいては王家の資質を受け継いでいるの。

 これは王族に勝る素質だわ。王家には風の資質が足りないから。


 そして他の五家もそうだけど、国の始まり頃から比べて人の持つ魔力量はどんどん減ってきているの。五家が作られたのは王がひとりでは大魔術を施行することができなくなったからだし、時代を経るごとに人々の魔力は落ちていく……そんな中、時折王家や第五家で、先祖返りのように飛び抜けて魔力が高く、様々な魔術を操る才能に恵まれた子供が生まれる場合があると言われているわ。


 きっとソラはそういう子として生まれてしまったのだと思うの。

 それがソラの秘密よ。


 ソラは水も土も炎も、元々の素質がないにもかかわらず、先祖返りの力をもって大きな魔術を使うことができてしまう……王家にとって、ソラは物凄く貴重で欲しい人材のはず。お願いよ、ソラ、王家から婿入りの話や嫁取りの話が来ても断ってちょうだいね。




** ** **




「はいっ!」


 アンティフォナ叔母から顔を覗き込まれて、思わず大声で返事をしてしまった。隣でマドリガーレがホッとした気配が感じられた。


「まぁ、王家だって婚姻に関して無理強いはしてこないだろう。奏楽が嫌がれば無理を通してはこないはずだ。それより心配なのはやはり元老院だ……奏楽が生まれる時はあんなに反対したくせに、奏楽に類稀(たぐいまれ)な才能があると分かった途端、マーレとの婚姻と魔法長官の座の強要をしてきた。今後も何かしてくる恐れがある。各人、じゅうぶん気を付けるように」


「でも……何かしてくるって、たとえばどんなものなのかしら? 私達は何に気を付ければ良いのかしら……」


 アリアがぽつりとこぼした質問に、アルマンド叔父は難しい顔をして答えた。


「そうだな……具体的に、何、とまでは言えないけれど……そうだな、たとえば今後、ソラの教育方針に口を出してくるとか、元老院のソラに対する影響力を高めようとして婚約式や結婚式に口を出してくるとか。あるいは気が早いけれど、ソラとマーレに子供が生まれたらその教育方針やら婚約者やらを決めるのに口出ししてくるかも知れん。それに付随(ふずい)して、ソラが元老院の要求をあっさりと()()けないように、近親者の弱みを握ろうとしたり、何かに誘惑したりするかも知れん……まぁ、全ては悪い想像でしかないがな」


「奏楽が生まれた直後は、どうやって元老院から隠すか頭を悩ませたものだよ……何しろ当時、奏楽の魔力を視ると赤子のくせに物凄い量で、しかもそれが虹色に光ってバンバン垂れ流し状態だったのだからな。きゃっきゃと笑えばドバドバ虹色の輝きがあふれ、おぎゃあと泣けば魔流となって渦を巻き、静かに寝ている時でさえ魔素がゆったりと立ち上って辺りをキラキラと光らせていたのだからな。一年、二年と経つうちに虹色が薄くなり、緑色が主体の一般的な魔力に、質も量も変化していってどんなに安堵したことだろう。五歳時魔力検査までにすっかり緑色になっていて本当にほっとしたよ」


「ああ、レーヴォ、本当にそうだな。わたしが医師としてソラを生まれた時から診ていたから、定期報告を当たり障りないものにして提出できたので幸いだった。まぁ、五歳時魔力検査までには裏工作も必要がなくなって良かった」


「ああ、セリオのおかげで助かったよ。きみがいなければソラはすぐさま元老院に捕獲されていただろうからな。だから本当に皆、気を付けるように。今後レッジェロからブリランテ殿下にソラの能力が伝わり、それが巡り巡って元老院に知られてしまった時が恐ろしい。以前はずっと父上が我らを守ってくださった。テンペストーゾ様に対し、許可を得ようと掛け合ってくださったし、防波堤にもなってくださった。だが、もうあのお優しかった父上はいない。五年も前に亡くなってしまった……今度こそ、我らの力だけでテンペストーゾ様に、そして元老院に立ち向かわねばならぬ」


 祖父を懐かしみつつ皆に注意を促す父レチタティーヴォの言葉に、しかしセリオーソが綺麗に微笑みながら毒を吐いた。


「だが、きみ達のお父上と、我が父レンタンド、そして元老院議長のテンペストーゾ様が、かつて親友であったというのは大いに疑うべきことだと、わたしは考えているよ。アモソーゾ様が亡くなった時も、葬儀の時も、彼らはついぞ顔を見せなかったではないか。それどころか命日にすら今まで一度も顔を出さない。そんなふたりがアモソーゾ様を大切になさっていたとは考えにくい」


 セリオーソの言葉に皆がシンとなる中、アルマンド叔父が真剣な目をして皆の顔を見回した。


「確かにそういったことはある。だがしかし、生前父がおふたりを頼りにし、親しみを込めて接していらしていたのは事実だ。……まぁ、そうだとしても、父上が今いらっしゃらない以上、我らだけでおふたりに向かわなければならないことに変わりはないがな。……心してかかろう」


「そうだ。しかも、奏楽の大きな魔力と魔法力の秘密が周囲に知られてしまった場合、国力を上げるために優秀な子を産ませようとして、薬による一時的な魔力合わせをするような子作り方法が編み出されても困る。自分達で間違いを犯しておきながら言えた台詞ではないが、自然の摂理に反した生命の誕生は望ましくはないから……」


「そうとも。だからこそ、これらを元老院に知られてはいけないし、ソラを奪われる訳にはいかない。魔力の相性が良いというだけで、容易(たやす)く婚約を勧め、話を進めていく組織に、我らは立ち向かわなければならないのだ。皆、どうか心得ておいてくれ」


 皆、神妙(しんみょう)にうなずく。


「俺、さ。今日の説明も、元老院のことも、なんだかイマイチ良く分かんなかったけど……でも、分かることもある。俺、自分の人生を他人に決められたり、押し付けられたりするのは嫌だ。何があっても抵抗してみせるよ。テンペストーゾ様からじっと見つめられた時は、なんか背筋がぞぉっとして冷や汗までかいちゃったけど。でも絶対に抵抗するよ。俺の人生だ、誰にも邪魔はさせない」


 俺がそう言うと、皆は口々に「その意気だ」「そうだよ、ソラ」「頑張って」と声をかけてくれた。

 隣でマドリガーレがにっこり笑ってくれる。腕を組んできたので、その手をそっと撫でた。


 今後のこととしてはとりあえず、俺達家族は一度日本に戻り、八月――こちらでは炎の一の月と言う――の末にあるマドリガーレの誕生日にお祝いの会を開くと言うので、それに合わせて再び来ることになった。

 そして秋にはパストラーレとアリアの結婚式がある。

 それから冬休みにまた、まとまった日程で訓練に来る。

 そんな感じだ。


 もしも、ちょうどこちらに訪れたタイミングで、王家や元老院から何かアプローチがあったとしても大丈夫。俺がしっかり自分を持っていれば平気だ。

 脅しには屈しないし、良い条件を出されたって選べるものは決まっている。

 自分の大切なものが何か、それを見失わなければきっと平気だ。


 俺は皆の顔を見回して、自信を持って「大丈夫」と笑った。

ソラの秘密がようやく全て明かされました。

そして、親世代、子世代、共に、元老院……すなわち、議長である第四家テンペストーゾと、その親友の第一家レンタンドに対して、真っ向から立ち向かう決意をしました。

彼らと向かい合うのは最終章です。

間に入ってくれていた祖父のアモソーゾは5年前に他界しています。

どうなってしまうのか、楽しみにお待ちいただけたら幸いです。


このまま続けてエピローグをお楽しみください。

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