第4話
最初は、たいしたことないつまづきだった。
義理の娘がわたしに懐かないのだ。よく、あることだ。亡くなった実の母を求めているのだろう。だから、わたしに反発する。気にもとめなかった。
でも、周囲は違った。
「やっぱり、王女様は、王妃様のことがお嫌いなのね。亡くなったお母さまと違って、あの人は朗らかではないですものね」
「ええ、やっぱり、育ちというものがでてしまいますわね」
わたしは陰口を言われるようになった。まるで、貧乏だった小さいころに戻ったような気持ちになった。わたしはまだ、上にいかなくてはいかないのか。すべてが絶望に染まった瞬間だった。
わたしは陰口を言ったものを片っ端から処分した。夫を失脚させたり、不敬罪で検挙したり。それでも、陰口はおさまらなかった。
わたしはどんどん荒れた。実力で批判を黙らせるため、努力に努力を重ねた。ほとんどの分野でわたしは大成したのだ。
しかし、ひとつ問題があった。
白雪姫だ。前王妃の娘であった彼女は日に日に美しくなっていった。
周囲の評判もかなり高い。
「まるで、亡くなった王妃様の生き写しのようだわ」
「気品と優しさがにじみ出ている」
「本当にお美しい」
それらはすべてがわたしを王妃として否定する言葉に思えた。
おまえは前王妃に及ばないと言われている気分だった。
わたしは焦燥にかられた。
気が狂ったようにわたしは鏡に問いかける。
「世界で一番美しいのはだあれ?」と。
鏡の答えは残酷だった。
「あなたの娘。白雪姫様です」
この瞬間、わたしは何かが壊れてしまったのだろう。
「やってやる。やるしかない。あいつがいなくなれば、また、わたしが一番だ」