第3話
わたしは一番にならなくてはいけない。
小さいころからそう思っていた。
わたしの家は貴族の家だが、名ばかり貴族。常に借金取りにおびえ、両親のけんかは絶えなかった。
たまにいく社交界では、わたしは常にバカにされた。
「あらあら、貧乏貴族がこんなところにいらっしゃるなんて珍しい」
「そんなボロボロのドレスでよく恥ずかしくもないですね」
「楽器もダンスもできない貧乏人がよく顔をだせるわね」
同年代からの心無い罵倒が胸に突き刺さる。
わたしは泣いた。悔しさに耐えられなかったのだ。
でも、わたしは負けないと心に誓った。
わたしをバカにしたやつらを見返すまでは、絶対にあきらめない。
悔し涙に濡れながら、帰ったある日。わたしは不思議な鏡を拾った。
小さな四角い手鏡だった。
しかし、それは不思議な手鏡だった。
話しかけると答えてくれるのだ。
「ダンスのやりかたがわからない」
とぼやくと、映像でやり方を教えてくれる。
宮廷マナー、楽器の弾き方。その鏡はわたしにすべてを教えてくれた。
わたしは必死に、その鏡から学んだ。
周囲の目も少しずつ変わってきた。さげずみの目線から、羨望のまなざしへ。
できることが増えると、生活に余裕のなかった両親も喜んでくれた。
わたしは、常に1番になろうとした。鏡のおかげで、それはほとんどが叶った。
ついにわたしは、王国一の才女として評判になり、国王陛下が主催するパーティーにまで声がかかるようになった。
何度もパーティーに招待されているうちに、ついにわたしは王様からプロポーズを受けることができた。
人生最良の日。まさにそうだった。
これでわたしは王妃。すべてはわたしが中心に回る。もう、誰にもバカにはされない。
わたしは気分が高揚し、鏡に問いかけた。
「鏡よ、鏡。世界で一番、美しいのはだあれ?」
「それは王妃様です」
嬉しさによって、視界がにじむ。
わたしはすべてを手に入れた。
そう、思っていたのだ。あの日までは……。