小松シリーズ第二号 その3
【3】
「藤井氏! ドドドド、ド! 明日は会合ですぞ! ウンウン。場所はノリノリ庵でやりますぞ、オー!」
「うわっぁ! びっくりした。里中か」
「さっきから見ておりましたぞ、バンザーイ。話はもう会の中にまわりまわっております、ビシリ」
ビシリと敬礼をしたデブは里中というデ、いや仲間で飯会と言うただ飲み会をする会のメンバーである。
この会は小松が女を振る度に会合を開き、「モテる男を大学で後ろ指を指されるように活動する」という阿呆な名目で日々小松の身辺調査を行っているストーカー集団で、残念ながら俺もその一員だ。
飯会は自分たちでは良心的な飲みサークルとして振る舞っているが、あまりに個性的な面々が揃っているせいで飯会が学部内で後ろ指を指されているという不遇な立ち位置を迫られている。里中もその一人で、彼は自分の仕草が効果音として全て口から飛び出す。人は悪くないが変人だ。
「おぉ、里中じゃん。また飲み会すんの? 行くよ行く行く」
小松はニコニコ顔で財布の中を確認し始めた。俺は里中のジャージの袖をつまんで小松から一応離れた。
「なぁ、里中。また小松呼ぶの?」
「おっほう! 袖つまみイベントキタコレ、バンザーイ。でも男だからノーカン、ガッカリ」
「袖つまみでテンション上がるなよ。付き合い方見直そ。それで小松呼んだら、また上手いこと立ち回られて、最後には小松の信奉者として小松から慈悲の微笑みを受ける立場に……」
里中は人差し指を俺の口にピタリとくっつけ、不敵に微笑んだ。
「ニヤリ、チッチッチ。今回は最終兵器を用意しておりますぞ。だから大丈夫なのである、キリッ」
てか、初めての対策で最終兵器ってそれほど破壊力があるものなの? 俺、ちょっとこわい。いやいや、飯会レベルの最終兵器なら全然余裕だな。また小松を崇め奉る展開はなるだろう。
「いや対策してるならいいんだけどな」
「おい里中、藤井。何話してんだ?」
「オウフ、二人のヒ・ミ・ツですぞ。ニヤァ」
「というわけで小松、明日十八時にノリノリ庵に集合な」
「いやぁ、楽しみだな。小諸とか岩崎とか久しぶりだからな」
「小松氏。失恋して悲しいとは思いますが、グスン。元気を出してください、グッ」
「里中、お前いい奴だよな。あれ? でも俺が女と何かあった時に限って会合が開かれるような」
「小松の回転が二週間単位だから、偶然会合と重なるんだ。いい加減、もう少し長引かせろ」
「まぁ、確かにそれはそうか」
「ポッ、そういえばワタクシ今から講義なので、お二人ともまた明日、キリッ。では、サラバ。シュタタタタ」
大して速くない駆け足で去って行く里中を見つめながら、小松はニコニコと微笑んでいた。
「いやぁ、なんで里中みたいにいい奴がモテないのかね」
「……、お前みたいなやつが女を完膚なきまでに打ちのめすからだ」
「ん? 藤井なんか言った?」
「いや、なんでもない。里中はああいうキャラだから、女子との交際とか難しいだろう」
「やっぱ世の中が欲しているのは内面をしっかり見てくれる系の女子だよな」




