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最後の瞬間 -a side-
最後に覚えているのは、彼の声だ。
「ねえ…ねえ!!しっかりして!ねえ!」
ごめんね、そんな泣きそうな声をさせちゃって。いや、もう泣かせちゃったかな。
「血が…血が止まらない!誰か救急車呼んで!」
どんどん意識が遠のいていく。
それと同時に周りの音も聞こえなくなっていく。
それはまるで、暗くて、深い海に沈んでいくようで。
「やだ…嫌だ、置いていかないで!約束したでしょ!?僕のそばにずっといるって!」
そんな海の中でも彼の声だけは聞こえた。
変だなぁ、これが愛の力ってやつなのかな。
もしそうだとしたら、その愛の力でこれだけは伝えないと。
ごめんね、幸せになって、と。
言えたかな、伝えられたかな、君に。
泣き虫で甘えたでワガママで、でもどうしようもなく可愛い貴方に。
そうして、私と言うちっぽけな存在は、消えた。