プロローグ
突然だが、俺は武器が好きだ、人殺しが好きという訳ではない、武器というのは人間の【欲】のみを抽出している。鈍器のようなものから始まり、現代はロボ、無人機などと、ついには欲が無人で動き出す。
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汚らしい部屋、ホコリまみれの床に何に使うのかわからない工具の数々、閉めきった窓に向かう机には髪の伸びきった男がニヤニヤしながらPCの画面を眺めて手元の工具に何かのパーツを組み立てる
東道 風蘭 24才、現在色々な武器の研究を親の収入を担保に進めている、その研究資料は、広辞苑のような厚さになっている、銃の設計図はもちろん、戦闘機などの兵器、自動で戦闘するロボ、無論剣や弓まで研究している、要するに武器好きニートであり、親の収入を食い潰す様はこの世のゴミととも取れる
「いやああああ、なんで、あなた、あなたあああああああああ」
突如として部屋の中に風蘭の母親の声が響き渡る、その声には思わず風蘭も驚き、思わずドアの方を向く、無論、彼は親とうまく行ってはいない、それ故見に行くわけにも行かなかったがそれなりに風蘭にもどうしたのかという疑問の感情は生まれた、それと同時に彼には大きな好奇心が生まれた
彼にとって母親のその悲鳴は、剣を振り下ろす音、銃声、戦闘機のジェット音にもよく似ていたのだ、普通の人間のにはわからない感性ではあるが、その感性をわかりやすく言うならば、それは余念がない、何かただひとつのみを目的とした声であるということである、ジェット機には飛ぶ、銃声には殺す、そう言った一つのことしか出来ないしやらない、そういった音に感じたのだ
[ガタガタガタガタ]
母親が階段を登ってくる、その足音も風蘭にはまるで武器の音に聞こえる、殺意がにじみ出るように来るのがわかる。
ドアを開けた母親の顔は真っ赤である、髪の毛は腰元までボサボサと伸び、雨は血走り、左手には包丁を持ちエプロンの片方の肩紐はずり落ちたままと少々だらしのない格好である
「あ、、、あんたのせいよ!!!、この!」
風蘭の親はまるで風蘭を親の敵のような形相で眺めている、歯をガタガタと言わせ、手を震わせる、ヒキニートでも相当やばい状況であることぐらいはよく分かった
そんな異常事態であるのに風蘭はニヤニヤしながら回転椅子を回し、鬼のような母親に向かって話しかける。
「おふくろ、何があったんだい?」
「ふざけないで!貴方のせいでお父さんが、、、この!」
「なんだ?首でも吊ったのか?」
風蘭が言ったその台詞は大方合っていたようであり、母親は唇を震わせ目をカッと見開いた、足に力を入れた母親は包丁を坂手持ちにし、懐に向かって勢い良く走りだした
「、、、」
[ザシュ!]
風蘭の胸に包丁が深く刺さる、胸部は焼けるように痛み、次第に血がにじむ、そして刺した本人は包丁を引き息を荒立てる、その表情には余裕はなく、真っ赤な顔は本当の意味で真っ赤に染まった
そんな状況であるのにもかかわらず、風蘭の表情は未だニヤリとしたままだ、まるで痛みを友人としているかのように、血液を親友とするように、自分の悲惨な状況には目もくれず息の荒い自分を刺した母親をまばたき一つせずに眺めている
「どうよ!今の今まで人の金食いつぶして生活した罰よ!」
彼の心情に後悔も、恐れも、まして恨みもありはしない、只々親の問にニヤニヤしながら間を作って親を焦らし尽くす
「なにかいいなs」
「素晴らしい!!!!!、なんと素晴らしい!欲しかない!殺意しか無い!発言も行動も、あたなの欲を具現化したそれはもはや包丁ではない!短刀だ!はは、これは素晴らしい!流石俺の親だ!わかっているな!」
風蘭は突如手を広げてその問に答えた、異常で非常で無情な答えに刺した母親でさえもまるで悪魔を見るような目で見るその答え、しかし風蘭は伊達や酔狂で言ったわけではなく、心の底からこの状況を楽しんでいた。
母親は数歩さがって口元を歪めて包丁を再度手に持った、よほど恐ろしかったのか、先ほどとは違い凄く警戒している様子が目に見えた。
「あ、、、あんた狂ってるのね!!!!」
母親のその台詞に風蘭は少し鼻で笑うと満面の笑みで火に油を注いだ
「お前が言うかね!殺意の塊、まさに狂気そのm」
[ザシュ!ザシュ!ザシュ。。。。」
母親は包丁で何度も屠殺しようとする、少しずつ意識が遠のく、しかし風蘭は抵抗をしない、こんな純粋な欲に殺されるなら、これほど現代において幸せなことはないだろう、こんな世界だ、これ以上の欲に出会うことはないだろう、人生楽しかった、最後は親に殺されるなんてな、武器作れなかったのは心残りだな、そう思いながら焼けるような腹部を眺めた後、薄れ行く意識の中で血眼で殺しにくる母親を眺めて頬を上げた
――その後部屋は阿鼻叫喚の地獄とかした、風蘭は肉片になるまで刺殺され、母親は最後、大笑いしながら自分の首を叩き切り、その事件は一家惨殺事件として報道されることになるのであった。
白い世界、白百合は一体に咲き誇り、鼻を劈く甘い匂いはそこら中に舞う。
風蘭は起き上がると思わず周りを見渡した、周囲を見渡せばそこら中に百合が咲き、上には空のような、雲のような、はたまた絵のような光景が何処までも続く、薄気味悪い世界を少し堪能した後にここは何処かと考える。
最初に思いついたのは天国であった、しかし、自分がまさか天国に行けるはずはない、そう思い他の可能性を考えた。
「起きなさい、貴方はまだやるべきことが残っています」
突如、まるで最初からそこにいたかのように綺麗な女性が立っていた、女性の髪の毛はこの世のものと思えない程の金色で、白い古風なドレスはきらびやかに揺れ、青い瞳はまるで空のように蒼く、そして胸は大きい、風蘭はこんな綺麗な女性と話せるのなら夢であってもまた一興と会話に乗った
「おいおい、やるべきも何もおっちんじまったぜ」
「貴方はまだ生きる選択肢があります」
風蘭はそんなはずはない、自分に救いなどあってはならない、そう思い思わず驚く
「地獄はどっちだ?」
「説明しますね、、、今地獄というのはかなり満員なんですよ、、、かなり悪いことしないと送れないんです、まして何もせずニート生活していたあなたは地獄にはいけないんです」
「なにも、、まあそうだな、で、どうするんだい?」
余りにも辛辣な理由に思わず風蘭は心を痛める、確かに就活すらしない生活ではあったし、迷惑はかけていたが特別悪いことも確かにしてはいなかった、そう思い複雑な心境ではあったが風蘭は女神の言葉を受け入れた。
「実験に付き合うか、今すぐ赤ん坊になって転生です」
「実験とは?」
すると女神のような女性が後ろから本を出してきた、本は真っ赤な表紙であり、金の刺繍は施される、しかし不自然である、題名がなく刺繍はあるが絵はなく、何の本かは検討もつかない、そもそも百合の草原から一体どうやって本を取り出したのかさえ謎である。
「現在ですね、もっとも地獄を満員にする要因の世界に人を送り込んで解決させようという作戦を立ててるんですよ」
「別の世界?」
風蘭がそう言うと女神は少し得意げな表情でどこからともなくスクリーンを下ろし、まるでプレゼンをするかのように説明を開始した、風蘭は長くなりそうだと百合の草原に座り込んだ、すると百合は座られる瞬間に淡い青の光になって宙に舞った、しかしもはや風蘭は驚かない。
「あなた方の世界で言うファンタジーな世界です、しかし、ファンタジーって魔物がいるじゃないですか、それが強すぎて死人が増加、さらに文明レベルの低さ、文明が低いと出産率は上がる傾向に、おかげでリンボは満杯なんですよね、そこで貴方のような善行も悪行もない人に神の加護をかけてその世界に送り、その世界の問題を解してもらうんです」
要するに、魔物退治に明け暮れる代わりに世界を救えということであろう、確かに経済的だ、魔物を倒して、世界を救って、地獄の問題解決して、一石二鳥どころか釣りが来るレベルであろう、感心して風蘭は思わず顎に手を当てた
『さすが引きこもり、こういう話は食いつくか』と女神は内心この実験が上手くいくとドヤ顔をしていた
「断る!行く意味が無い!」
しかし女神の思惑は見事外れた、風蘭にとって特はないからだ、人生に未練もない、地獄に行くのはつらそうだが転生できるなら転生したほうがよほど楽そうだ、そう思ったのだ、まず自分に世界を救う能力も今生もありはしない
「まあ、話を聞いて、神の加護であなたには【物質の変換】【造形魔法】の2つを付与します!さらにあっちの世界の私物をお付けします!」
女神は先ほどの凛とした感じとは変わり、少々驚き、慌てた表情で異世界計画の話を進めた、速くメリット説明しなければ下手すれば断られると内心ドキドキしているのである
しかしどうでも良さそうな風蘭の表情は未だ変わらなかった
「それでも行く意味は無いだろ」
風蘭がそう言い切ると、間髪入れずに女神はパサリとその場に座り込み、小さな声で一言言った
「貴方、武器を作って使いたくないんですか?」
「!?」
風蘭にとって武器の製作は長年の夢であった、、欲の化身を作り動くかを確かめるそれは現世では出来なかった自分の言わば未練であった、
風蘭は先ほどの態度と完全に変わり、目を見開き、体を女神の方へ倒し、噛みつくように女神に向かって話しかけた
「頼む!!、その話詳しく聞かせてくれ!!」
女神は内心上手く行ったと安堵してにこやかに風蘭の頼みに応じた、その姿に先ほどの焦りはもはや見受けられない
「ありがとうございます、では交渉をしましょうか」
女神がそう言うと風蘭は期待に体を揺らし、まるで餌を求める子犬のように女神に向かって率直な疑問を投げかけた
「で、その特典について説明してくれ」
そう言うと女神は先ほど取り出した本を出して見せてきた、幸いにも日本語で書いてある、文字は全て金色で書かれており、挿絵とともにわかりやすく色々な説明が書かれている
「えっと特典は、最低限の異世界での基礎知識、人族以外のも、人型だとエルフとかあるのでそちらのランダム選択、最初に必要な金、これが最低限の加護です」
まあ良くファンタジーにありそうな感じだ、しかしまあ、これはこの女神がファンタジー作品に似せたと思って間違いはないであろう、事実先ほど女神の口からはファンタジーと言う発言があった
「他にもあるんだろ?何とか魔法だとか」
「はい、お好きな魔法を2つ、自分の私物を1つもってけます」
風蘭は少し頭を悩ませた、こういった選択は恐らく間違ったら最後、慎重に決めねばならないという意識である
「おすすめあるんだろ?さっきなんか言ってたろ」
「造形魔法と物質変化魔法です、造形魔法は想像したものを物質から作る、物質変化魔法は土20キロから鉄1キロなど、決まった比率で物質を別の物質に変える魔法です、比率はなんとなくわかります、その世界に行けば」
若干のアバウト説明に思わず風蘭は頭を掻いた、しかし、物質を作れて形を作れれば、今まで自分が想像したあんな武器屋こんな武器も作れてしまうだろう、そう言った感情と思考はまるでウイルスのように風蘭の頭を侵食した
「私物が一つだっけ?」
「ええ、もちろんあの武器の設計書の束でしょ?」
完全に条件がそろう、もはや否定の条件は風蘭にはなかった、彼はまるで金を目の前にしたかのように、飛びつくように女神の手を握って頭を下げ、百合の花に頭を埋めた
「女神様!ぜひそっちの世界に連れて行ってくれ!」
「契約成立です、ではランダムで決まった種族や貴方の選択した能力をまとめますね」
「おう!頼むは!」
期待に満ちた風蘭の手元に紙が渡される、そこには名前、能力、持ち込み物、種族などの情報が書かれている、風蘭は目を輝かせながら上から順番にその文字を読んでいく
所属、吸血鬼、性別男
初期魔法、物質変化魔法、造形魔法
私物持ち込み、自作武器制作書
風蘭は目を数回パチパチさせた後、少し苦笑いをして首だけ女神の方へ向けた、その表情は意味がわからないという感情が見て取れる
「あ、、、あの、俺の種族どう見ても魔族ですよね、本末転倒では」
風蘭がそこまでいうと女神は急いで立ち上がり、まるで意地の悪い主婦のように左手を前に出して右手を口元に持っていく、顔を少しそむけて汚いものを見るかのような目で座り込む風蘭を見下ろした
「、、、悪しき魔物よ、去りなさい」
「は!?、設定したのお前だろ!?」
意味の分からない状況に風蘭は思わずツッコミを入れた、しかし女神の表情は悔しそうというか、何とも言えない表情であることからきっとランダム設定のミスか何かであったのであろうとすぐに想像がついた
すると女神と風蘭の間に半径3mほどの魔法陣が浮かび上がった、魔法陣の範囲はなぜか白百合が消えて、茶色い地面がむき出しになる、魔法陣は蒼く輝くとくるくるとその場を回り、次第に緑色になった
「おい、これ黙って魔法陣に立ってれば良いのか?」
「はい、そうすると異世界に飛びます、服装は吸血鬼らしく黒のコートに黒のメット、日差し防止のフェイスマスク付けますね!」
満面の笑みで女神はサラッと意味のわからないことを行った、流石にこの発言には突っ込まざる負えない 風蘭は魔法陣に負けない声で女神に怒鳴りかけた
「おい!、それは普通のカッコか!?」
「不審者ですねどう見ても」
さらに笑顔を増加させる女神に風蘭は怒りを覚えて魔法陣の停止を呼びかける
「おい!、まて!この女神!!!!」
[バン!]
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まるで板が開くような音がすると異世界に飛ばされた、地面までは20mってところだろう、女神の言った通り黒ずくめ、マスクどころか手袋もしてる、その感覚はドッキリ企画で落とし穴にはめられた芸人のようであり、あまり魔法とは思えない感じの移転方法であった、そして現状況を次第に飲み込んだ風蘭は思わず声を上げた
「あの女神空中に飛ばしやがった!!!ふざけるな死ぬだろこの!!!!」
地面まではどんどん近づく、異世界の重力は非情であり、ご都合主義な思考時間もくれずに風蘭を地面にいきよいよく叩きつけた
[バゴン!!!]
風蘭の体中に激痛が走るが、不思議とすぐに痛みが引いた、どうやら吸血鬼というのは便利な種族らしく、この程度のダメージではほぼ無傷のようである。
風蘭は思わず体を捻ったりして眺めるが、外見上自分で見て変わったことは何一つ無かった
「てかここどこだよ、、、よくよく考えたらこれ突然飛ばされても迷子だよな」
風蘭は周囲を見渡す、しかし何もない、見慣れない木々が生えており、人影一つない、鳥の声、虫の音は絶えず森に響き渡る、まさに森の中、まさに迷子、都合よく街に飛ばせばいいものを女神はなぜか森に飛ばしたのだ、さらに森独特の湿度はまとわりつく熱さを生み出し、風蘭のいらつきを増加させる。
風蘭は蒸し暑さゆえにマスクが鬱陶しくなり、思わず真っ黒なフェイスマスクを外す。
「いってええええ!なんだ!?あっつ!!」
フェイスマスクを取ると異常に口元が焼けるように痛くなった、どうやら直射日光はだめらしい。この国や文化などの知識はなんとなくわかる、しかし吸血鬼に関しては、『忌み嫌われている、滅多に居ない』しかわからなく、どうやら一般知識では足りない部分があるらしい、勉強の必要があると風蘭は少し学習した。
「まて、これって血を飲むのか、、、」
自分の知っている吸血鬼の想像であれば、日射光に弱く、十字架に弱く、そして血を吸うという想像であった、知識に乏しい風蘭にとって、特に食事が血液である可能性を否定できないがために今後の異世界生活に大きな不安を覚えた
風蘭は試しに生えてたりんごをむしって食べた、林檎は赤く熟しており、匂いは非常に美味しそうである
「、、、美味しい!」
食事は普通らしい、風蘭は内心ホッとした、とりあえず何とか泊まる場所を確保しないとこのままじゃ異世界に来て、落ちて、焼けて、野宿!なんて展開になる、武器制作どころじゃなくなってしまう、何とか町を探さなければならない、そうした感情から街を探すべく風蘭は歩みを進めた
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半日ほど歩いたのだろうか、小さな村のようなものが見えた、まるでRPGの世界の村だ、想像通り、街の真ん中には広場があって、子供が遊んでいる、風蘭は村に入り宿を借りれないかと聞いてみた。
宿の中は木の受付があり、バンダナを巻いた可愛らしい受付嬢はゆらゆらと体を揺らす、宿の内装はというと、受け付けの両隣に階段があり、ロの字型に階が広がる、天井は高く吹き抜けになっており宿に泊まる行商人風の男は二階から下を見下ろしていた
「すまない、旅のものなのだが、宿を貸していただけないか?」
「す、、すごい格好ですね、、、何をしてるんですか?」
(やばい、いまこの世界に来たのだ、身元不明すぎてやばい)
黒ずくめの格好、流石に怪しまれる、宿の娘はまるでお化けを見るような目で風蘭の格好を眺め、少し警戒した感じで接してくる、それには風蘭も思わず苦笑いを隠せない
「傭兵です、これは私の故郷の戦闘服なんです、困ってる人に雇われて助けながら旅をしてるんですよ」
それっぽい嘘を言って風蘭は何とかその場を収めた、宿の娘はなるほどと言った表情で表情をゆるめ、泊まらせる部屋を指差して部屋の説明をした
「そ、そうなんですか、では10番にどうぞ、お金は銀貨2枚です」
風蘭の手持ちは銀貨で4000枚、余裕のある金額であり、この世界にきてようやく女神に感謝できるような状況となった、しかし黒ずくめの格好、高所からの落下移動、森への放置、それらの事情からして風蘭は女神に一切の感謝はなかった
「では、ごゆっくりどうぞ」
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部屋の中は質素なものであり、木製のベットがドアから見て右側に 左側には机と椅子があり、机の隣には窓がある、窓のふちには花瓶が置いてあり、綺麗な菊のような花が入れられている。
ゲルトは椅子に座り、机の上に大量の木材を置いて一息ついた、窓から見える夜空はとても綺麗であり、こんな満天の星空を見たことは今の今まで一度もなかった
そして腰にかけてあった武器の設計書を取り出し手の上で広げると風蘭はニヤニヤしながらページを捲った。
風蘭は村を見つける前に、木材を大量に用意した、それで手に入れた鉄で銃を作る、今回作る銃だが、魔法は使い慣れないとなかなかうまく扱えず、単純な作りのものにした、重要なのは単純で作りやすいことだ、今からミサイルや戦艦は無理、本来は剣や弓を作るべきだが、ぎりぎり銃が作れそうなので今回は銃にする。
今回作る銃はステンというものだ、確かに性能がいいわけではないが、生産性は最高レベルであり、サブマシンガンの元祖と言ってもいいレベルの骨董品である、銃の形は水道管にマガジンをつけたような不格好なものであるが、風蘭はそこまで形は嫌いではなかった。
「造形魔法発動!我の想像を具現化すれ!」
魔法を唱えるとそこには銃がある、それにマガジンが4つある、風蘭は魔法の成功と目の前の初めて作り上げた本物の銃器に興奮し、息を荒くして思わず立ち上がろうとする、その喜びようは丸でクリスマスにプレゼントを貰った子供のようである
[バタン!]
「あれ、足に力が入らない、これが魔力切れってやつか、やはり知識だけじゃ足りないな、、、思ったよりきつい」
風蘭の喜びに反し、足は無情にも膝から折れ、そのまま地面に伏してしまった、もはや腕にもまともに力が入らず、首だけ上に向けて風蘭は銃のほうを向き頬を上げた
知識にはあったのだが、風蘭のような初心者が魔法を使うと魔力が切れて倒れるらしい、思ったよりも魔力切れが苦しいことが分かった、体に力が入らない、風蘭はベットまで行くことも出来ず床に寝転がったまま目蓋をおろしてしまった。
「これ以上は動けなさそうなので寝ることにした、明日動作テストしないとな、、、」
包丁を持つ母親、爪の甘い女神、そして殺されて化物にされて落されて迷子になって不安になって焼けて怪しまれて、そんな散々な一日でさえ風蘭にとって銃器一つで幸せこの上ない一日となる、事実彼の表情は眠りについた後でさえ、幸せそうに頬を上げて無邪気な寝顔となっている。
彼と共に落っこちた武器の設計書の最初のページは何処からか吹いた風によって最初ページが捲られた、ページの最初には武器の設計ではなく、前書きのようなものが書いてある
――神は天にいまし、全て世は事もなし、武器は地にいまし、全て事は世にあり、さして我に幸福あり