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  作者: 東稔 雨紗霧
8/13

後悔

 ポチャンッ


 湯船に水滴が落ちる音がお風呂場に響く。

 今はまだ、お昼になるか否かといった時間だがそんな時間にも関わらずうちはなみなみとお湯を張った湯船に浸かっている。

 理由は言わずもがな、さっきのカラスの血があっちこっちに飛び付いてしまったからだ。


 あの後、うちは泣きながら吐瀉としゃした妹が落ち着いた頃合いを見計らって風呂場に放り込んだ。


 直ぐに屋根の血を水で洗い流すなどの後片付けを済まし、妹がお風呂に入っている間に血のこびり付いてしまった妹のワンピースを石鹸で洗う。


 この石鹸、昔おばあちゃんが送ってきた物なのだが、臭いは酷いが大抵の汚れが落とせる位超強力石鹸なのだ。

 思った通り血は全て落とす事が出来た。

 ありがとう、おばあちゃん。

 貴女のお陰で今とても助かっています。


 ワンピースを洗濯機に放り込んだ所で妹がお風呂からあがった。

 最初は、今にも倒れそうな位青い顔をしていた妹だったが、湯船に浸かっていたお陰か大分顔色も良くなった。

 ボーとする妹は心配だったが、自分も血があちこちにこびりついているので早くお風呂に入って落としたい。

 ちゃんと髪の毛も拭くように言い付けるとうちも血を洗い落とす為にお風呂に入った。

 妹が心配なのなら一緒にお風呂に入るのが一番なのだがそうしなかったのは妹をあんな目に合わせた手前、気まずかったからということと、暫く一人で考え事をしたかったからだ。


 あの杯は一体何なのか。


 ずっと心の奥底で思っていた疑問が今日の出来事で一気に浮上してきた。


 あの杯に関するであろう事柄を調べれば調べるだけなぞは深まっていく。

 最初は仏教などで使われる祭壇に何かを置くための物かと考えたが何に使うのか想像できないし、一致する事がないからこれは違うと思う。

 次に、何て事はないただの杯。

 これは思いついて直ぐ違うと否定する。

 ただの杯にあんな不思議な現象が備わって堪るかと思ったからだ。

 最近ではあれは悪魔崇拝や生け贄を捧げる時など怪しげな事に使われるのではないかと考え始めている。

 その考えはさっきのカラスの件でますます強まった。

 もしかしたらこれは一番杯の正体に近いのではないかとうちは思っている。


 「そろそろ出たら」

 「!!」

 扉の外からいきなりかけられた声に驚いた。


 「え、あ、うん」

 「それと、話がある」

 やっぱりさっきの事かな、謝らないと……。



 お風呂から上がって暫く経っても妹はずっと押し黙ったままで一向に話そうとしない。


 「あの、さ……」

 沈黙に耐えきれず声をかける。


 「…………」

 「ごめんな」

 「…………」

 「まさか、あないな事になる、なんて……思いもせんかったもんで」


 自分で言ってから余りの白々しさに自分で吐き気がした。

 スズメの事を言い出した時に結果を予想しようと思えば出来たのに。

 ただ、考えが至らなかった。


 「…………」

 「…………」

 「……ごめん」

 黙ったままの妹にもう何も言えなかった。


 「…………」

 「…………」

 沈黙が重い。


 「…もう、えぇよ」

 「…え?」

 「耀かて、あないな事になる思わへんかったなら、ショック受けたんとちゃう?」

 「そ、れは……」


 嘘だ。

 そんな大層な事を言っておいて覚悟が全然足りなかった。

 自分に反吐へどがでる。


 「それに、未知の領域に挑む事には犠牲が付き物だってさっき言うてたやん」

 確か、に言った。


 「もう、あんな事言い出さへんよな?」

 「…うん」

 言い出す訳がない。


 「ならもうええわ」

 「……え?」


 もうええの意味が分からず、不安になる。


 「この後、ご飯食べたら図書館行くんやろ?」

 「…行く」

 「ならちゃっちゃっとご飯食べて行こうや」

 笑いかけてきた妹にホッとする。


 「うん!」



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