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  作者: 東稔 雨紗霧
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宝物は秘密裏に

 「どうしたん?それ」

 妹は目を杯に釘付けにしながら聞いてきた。


 「ん?拾った?」

 「何で疑問系?」

 「何となく?」

 「いや、聞かれても知らんがな」

 杯からやっと視線を逸らせ、こっちを見ながら呆れる妹。


 「窓から駐車場見ててんけど、何や落ちとんのが見えたもんやから拾って来たんや。綺麗やろ」

 金の杯を妹に手渡しながら説明をする。


 「うん、綺麗やなぁ。それにしても、へぇ、落ちてたにしては大した汚れも無いねんなぁ」

 「あぁ、それはポリ袋に入ってたからやろ」

 「なーるほど」

 妹は受け取ったそれを陽に当てて眩しそうに目を細めている。


 「これって本物やろか?」

 妹からの質問にうーんと唸る。


 「さあなぁ、どうなんやろ。大きさの割にはずっしりくる重さやから本物かもしれんなあ」

 本物だとしたらうちは物凄いラッキーだ。


 「でも、本物の金とか銀がポリ袋に入ってたりするん?」

 「……無いな」

 少なくとも自分なら入れない。

 もっと、こう、高級感溢れる桐の箱とかに入れて置く。


 「何や、金の純度を確かめる方法ってなかったっけ?」

 「あー何や聞いたことあるな」

 確か、金は熱伝導性が高いから温まりやすく、冷えやすいって聞いたことがある気がする。


 「でも、さっきまで外で陽に当たってたさかい温かいのは当たり前やで」

 妹にその事を話す。


 「せやったら、冷蔵庫に入れて冷やしたら?」

 突拍子も無い事を言い出した。


 「あのさ、冷蔵庫に入れてたらすぐお母さんにバレるやろうが」

 うちの言葉に妹はハッとした顔をする。


 「アホやろ」

 思わず呟いたうちの言葉に妹は華麗にスルーして杯を弄りだした。


 「ん?」

 「どないしたん?」

 疑問を含んだ声が聞こえたので聞いてみる。


 「何や、ここに彫ってあるわ、ほら」

 妹に手渡された金の杯を見ると、杯の裏の底の部分に何か彫ってある。

 ジーパンの裾で拭くと、それは数字の0の様に見えた。


 「0?それともO?」

 妹に聞かれるが、よくわからない。


 「ちょお、これも見て」

 妹は銀の杯の方を自分が着ていた水色のワンピースの裾で擦り言った。

 手渡されたのを見ると、銀の杯の裏にも同じ物が彫られている。


 「何やと思う?この文字」

 杯を机の上に起きながら聞いてみる。


 「もしかしたら製品番号かもしれんよ?」

 意外な事を言い出した。


 「製品番号に0とかOってあるん?」

 「さあ?」

 「…………」

 「そんな冷たい目で見んといてよ」

 ふざける妹と会話をしながら、杯を自分の机の棚の上に移動させた。

 棚の上の部分には丁度陽が当たっていて、杯はピカピカと眩しい位輝いている。


 「いや、飾んのもええけど先に一回洗っとった方がええんとちゃう?買ったんならまだしも拾ったんやさかい」

 妹に指摘された。


 「ああ、なるほど、確かに」

 直ぐに杯を洗う事にした。

 杯を持って階段を下り、洗面所で洗う。


 銀の杯は外に転がっていた割には泥汚れ以外の汚れは無かったので水を溜めてからよく擦って汚れた水を捨てる作業を三回程繰り返すと新品同然に綺麗になった。

 金の杯も同じようにすると、これまた新品同然に綺麗になった。

 二つとも錆びないように雑巾で丹念に水気を取る。

 うん、綺麗になったしさぁ行こう

 と出入口に振り向きかけた所で背後のドアが開いた。


 「あれ?二階に居るかと思うたわ」

 ぎこちなく首だけを回すとそこには母親がいた。


 「な、何?お母さん」

 不自然な動きにならないように気を付けながら体を母親の方に向け、さりげなく杯を体の陰に隠す。


 「もうすぐオヤツやさかい。そろそろ降りてきいやってのぞみにも言って頂戴な」

 「うん、分かった」

 と答えたが考え直して言った。


 「なあ、二階で食べてもええか?」

 「二階で?別にええけど、ボロボロこぼさへんようにな」

 「はーい」


 ドアが閉まった。

 緊張を解くと知らぬ間に浅くなっていた呼吸に気付き、深く息を吐いた。

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