Stupid ! ' シュン
いつもぐうたらな生活を過ごしていた。夜になれば、『青春』なんてふざけたな名前の居酒屋で友達と浴びるほど酒を飲んで、朝か夜かもわからない境目の時間に店を出る。朝日が出れば眼を細め、馬鹿な奴らが「俺、吸血鬼だから死ぬわ」とこれまた馬鹿な笑い声をあげて言うんだから、どうしようもない奴らの集まりだ。
「おい、シュン」
叫んでいる奴らの後ろから眺めていると、その団体からいつの間にか外れ俺の隣に立って言った。
「なに」
視線は前の団体を捕えながら、隣に立つソウに無愛想に声を出す。
「お前、最近彼女とうまくいってないって?」
「…お前ってほんっと男には優しくないのな」
「俺の溢れ出る優しさは女の子限定ですから」
「この、フェミニストが」
そう言うとソウはきれいな顔を少し歪めた。…この腹黒野郎が。
「で、どうなの?」
「どうもこうも。普通、だよ」
なにが普通だよ、と自分でもツッコミを入れたくなる返答に苦笑した。
このやりとりを見ていたのか、前の馬鹿な軍団改め悪友たちが一斉に振り向いた。もう、嫌な予感しか頭によぎらない。
「何、シュン。フられたの?」
「うっせぇーよ」
まだだっつーの。
「いや、まだらしいよ」
そう言い放ったのは隣のソウだ。
ってか、なんも言ってないだろうが。
「じゃぁさ、じゃぁさ。いま彼女に電話しよーぜ」
大概、こう言い出す奴は、無神経でモテないって相場が決まってんのに、ソウは例外なんだからおそろしいよな。
「馬鹿。今、何時だと思ってんだよ」
「恋に時間なんて関係ねぇー!」
「いや、カナメくん? 普通に時間は関係あるからね」
「シュンは真面目過ぎるんだよ。男ってのはなぁ、『俺についてこい!』っていう男らしさが必要なんだよ」
かわいい顔して野獣のようなカナメは、持論をのうのうと言った。ただの酔っ払いの戯言ともいう。そんな戯言に耳を傾けてやってる俺はなんて優しいんだろう。
「…カナメはそういうキャラだからじゃない?」
「ソウこそそっち系でしょ?」
ソウとカナメがきゃひきゃひと笑い声を立てて言うもんだから、まわりのアホたちもここぞとばかりに盛り上げようとする。
…冗談じゃない。
「じゃ、俺明日学校だし、もう行くわ」
店を出たのはついさっきだというのに、もう随分前のように感じる。時間の流れが狂っているのか、それとも酒にやられたこの頭が狂っているのか。そんなクレイジーな考えを導き出している時点で俺の脳はもうお手上げ状態だということに気づきもしない。
「えぇー。二軒目行かないのかよ」
「今何時だと思ってんだよ。お前ら勝手に行けよ」
そう言って団体から一歩踏み出し、抜ける。軽く手を挙げて帰る仕草をしながら。
「シュン」
後ろから少し大きな声で呼ばれ、思わず振り向くと馬鹿な奴らがどいつもこいつもいやらしい顔を浮かべていた。
「いいから、早くふられてこいって」
ほんっとにヤな奴らだよ。