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KILLDOLL  作者: 青空ショコラ
第三章 戦い
15/15

15逃亡

公民館へ着くと大司教や教徒たちはいなかった。

部屋は俺達がさっき来た時と違ってシンっと静かで不気味だった。

俺達が部屋を見まわしていると着物を着た日本人形の教徒が1体、歌を歌いながら入ってきた。

教徒は俺たちに気づき急いで逃げようとしたがガイコツがとっ捕まえて、畳に投げ飛ばした。

教徒は怯えて手を前にかざして命乞いをするように言う。


「ま、待て、待ってくれ、殺さないでくれ」


俺は教徒の前で膝をつき言う


「瑠奈はどこだ、場所を言ったら殺さないでやる」

「し、知らねぇ、本当だ、」

「そうか。じゃ俺達のことがバレると面倒だ、殺すか」

「ま、待て、知っている!知っている!広場だ!遊び場がある海辺の町の隣の広場だ!」

「処刑はいつだ!」

「え?」

「いつ処刑が始まる?早くと答えろ!死にたいのか!」

「こ、今夜の0時だ!」


時間と場所が分かるとその教徒の体と口を縛り公民館の奥の押し入れに入れた。

俺達は急いで広場へ行った。

今は午後の10時、走っていけば間に合う。

疲れは感じなかった。

人のために命を懸けるのはあの日以来か。

あの日姉を守るために命を懸けたあの日以来。

俺が不安を感じる毎日を送っていた時瑠奈が来て大きく変わった。

もしかしたら人間時代の懐かしさを瑠奈に感じていたのかもしれない。

姉と母そして獅童と過ごした時代の懐かしさ。

ほんの少しだけあの時に戻れたように感じがした。

ここで瑠奈が死んだら俺が人形になって失ったもの、尊厳、思い出、幸福すべてをまたもう一度失うような気がする。

もう二度とそんな思いはごめんだ。

海辺の町へ着いた。

人形達が皆ざわざわしている。

俺は一人の人形に声をかけた。


「何事だ?」

「いやなんか生贄の儀式?みたいのがあるらしい、許されない人間を裁くだ、どうとか。あまり詳しくは知らないが」

「広場でか?」

「ああそうだ、広場であるらしい、すごい数の教徒の人形たちが集まっているぞ」


俺達は今までの走りの倍くらいのスピードで広場へむかった。

するとおそらく教徒であろう人形たちが広場の中心にある木製の大きな高台に群がっていた。

高台には大司教と黒い鎧を着た侍人形がいた。

近づいてみると大声で演説している。


「我々人形は罪を犯して神の裁きでこの姿になった。毎日続く空腹やのどの渇きに耐えて地獄のような日々を送っている。しかしこの苦しみが我々の償いなのだ。我々がいるこの世界こそが地獄そのもの。反対に罪を犯してない人々は幸せな生活を送っている。つまりの世界には幸福と不幸が内在している。言い換えれば天国と地獄が両方存在しているということだ。現実に神の裁きが存在するなら我々はこの世界のみで人間の善悪とその裁量を決められているということだ。そしてこれから来る娘は多くの人を殺した。にもかかわらず人形になってない。これは人間精神だけでなく罰を作り上げた神の精神そのものを否定している。決して許されることではない。神がこの娘を裁かないなら神の代行者である我々が裁かないといけない。これが神の意志である。そいして今それができないでいる神の代わりに裁くのだ。さあ娘をこちらへ」


すると広場の端にある小屋から瑠奈と坊ちゃん、護衛の赤い鎧を着た侍人形が出てきた。

瑠奈は腕ごと胸に紐巻き付け縛られていて、その紐の先を坊ちゃんが持っている。

瑠奈が通ると教徒たちは道を開け瑠奈に向かって罵声を浴びせた。

暗い表情で彼女はうつむいていた。

そして高台の階段を上り大司教の隣にいる黒い鎧を着た侍人形が刀を抜いた。

瑠奈は大司教の横に座らされた。

すると大司教が


「ではこれより執行する。罪びとに裁きを!!」


教徒たちは歓声を上げた。

そのありさまは狂気そのものだった。

俺は腰にある拳銃を握り教徒たちの群れを両手でどかして高台の前へ来た。

すると高台の周りには赤い鎧を着た侍人形が十体ほどいた。

一体が俺に気づいた。


「何している。お前!」


おそらく手に持っている拳銃を見たのだろう。

侍人形がもっている刀で俺に襲い掛かろうとした。

その時キラーがさっき処刑所で奪った刀でその人形の心臓を突き刺した。

教徒たちは大声で悲鳴を上げた。

すると大司教が俺達に気づいて


「反逆者だ!教徒たちよ!その裏切り者を捕えよ!」


教徒たちは一瞬まごついたが声を上げて3体がとびかかってきた。

その時ガイコツが現れ一瞬でその3体を斬った。

そして俺は叫んだ


「飛べ!瑠奈!」

「させるか!」


残りの侍人形たちが襲い掛かって来たがベアが現れどっから持ってきたか分からない丸太で人形たちをなぎ倒した。


「来い!瑠奈!」


瑠奈は一瞬躊躇したがなにか決心したかのように飛ぶ体勢に入った。


「させるか!」


坊ちゃんが黒い鎧の侍人形から刀を奪い瑠奈に切りかかろうとした。

俺はとっさに持っていた銃で彼を撃った。

バァンっ。広間に銃声が響く。

坊ちゃんは高台から落ちた。

他の侍たちが一斉に坊ちゃんに駆け寄った。

その隙に俺は


「瑠奈!」


と叫んだ。瑠奈は勇気を振り絞って目をつむり高台から飛んだ。

俺は胸で瑠奈をキャッチして急いでその場から瑠奈の手を引いて群衆を分けて離れた。

そしてガイコツとキラー、ベアもその場から一緒に離れた。

広場を抜けると高台の方から怒りの籠った絶叫が聞こえた。

大司教だ。激高している。

おそらく俺達を追ってくるだろう。


「大丈夫か瑠奈?」

「う、うん」


瑠奈は怯えた声で返事をした。

おそらくこの先のことを考えて不安になっているのだろう。

俺もそうだ。

しかし不思議と後悔はなかった。

俺は瑠奈の手をやさしく強く握りしめた。


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