13罪と人形
その日俺達は瑠奈に何を知ったか言わないで解散した。
キラーがいつも通り瑠奈に接していたから俺もそうするように努めた。
しかし心には大きな生暖かい重荷がある感じがする。
瑠奈に真相を聞こうか迷ったがまずはキラーと話し合った。
キラーが言うには今この雰囲気を壊すのはまずいので、今は触れないでおこうと言った。
そしてこうも続けた、
「僕達だって人を殺して人形になっている。そしてそれは触れてほしくない過去です。だからある意味同じ運命の中にいる存在です。たとえ人形にならなくても・・・。ましてや自分の罪を棚に上げて瑠奈ちゃんを責めたり、警察に突き出すなんてもってのほかです。」
たしかにそうかもしれない。
しかしもし警察に見つかったら匿った俺達はどうなるのか。
これほどの事をした人間を匿ったのだ、きっと重い罰を受けるに違いない。
ましてや俺達は人形。
即刻処刑されることもあり得る。
それに誰かが密告することも・・・。
どうする。
次の日の朝、瑠奈が起きて朝食を食べていると、俺達の微妙な気まずい雰囲気を察したのか
ちょっと不機嫌そうに俺のほうを向いて言った。
「なんかあったの?」
「えっどうした急に?」
「だって私に何か言いたそうな感じがするし」
「ないよ瑠奈。どうしたんだ」
「ふ~ん・・・まあいいけど私に隠し事しないでよ」
「大丈夫、しないよ。安心しろ」
会話を終えてキラーと港へ行った。
向かっている最中はいつも日常的な会話をしていたが今日はやけにお互い口数が少なかった。
港に着き漁船に乗って漁をしていると隣のベアが小声で話しかけてきた。
「なぁベア昨日は何もなかったか?」
「ああ何もなかったよ」
「そうか・・・じゃ今日新しいゲームやろうぜ。ドラゴンファンタジーってやつだ。知っているだろ。昨日最新作が発売してて早くも遊び場に置いてあったんだよ。その場で点数と交換しちまったぜ!おかげで2点しか残ってねぇ。まぁそれはいいんだがきっと瑠奈ちゃん喜ぶぞ!どうだ今日お前の家行っていいか」
「ああいいぜ、来いよ。瑠奈も喜ぶぜ」
ベアは笑って漁に戻った。
こういうときにでも明るく接してくれるのがベアのいいところだ。
少し気持ちが軽くなり、釣りに集中できるようになった。
釣りはすごく調子がよく、俺は過去最高の記録を出した。
そして漁が終わり漁船が港に戻り、いつも通り人形たちが整列して点呼を取った。
それが終わりみんなが点数票を取りに行こうとした時、看守の一人が
「看守長から大事な話がある!聞け!」
看守長が列の前に来て大声で話した。
「実は佐渡島に大量殺人犯・仙道瑠奈が身を潜めている可能性がある。彼女は自分が通っている女子高で銃乱射事件を起こして9人を殺した、けが人は多数。この前墜落した飛行機に彼女が乗っていた。飛行機が墜落したのも彼女の仕業という見方をする者もいる。知っていることがあったら看守に言え。ちなみに見つけた者には点数を20000点与えよう。以上」
人形たちはざわついた。
そして点数票を貰いに行くと、貰った人形が点数票と何か一枚紙を貰っていた。
俺が蜜柑の前に行くと
「おつかれ。今日すごいじゃん」
「ありがとう・・・」
「あっ、これ今日看守長が言ってた少女の写真。何か分かったら教えてね。」
「ああ分かった」
その写真には瑠奈の顔が映っていた。
まずい・・・このことは当然ほかの現場にも知らされている。
俺はほぼ走っているような早歩きで家に帰った。キラーも同じスピード歩いた。
自宅のドアを開けて瑠奈!と声を出すと、
「なぁに、そんな大声出してぇ」
おそらく昼寝をしたであろう瑠奈が階段からゆっくり降りてきた。
俺は安堵した。
「なにかあったの?」
「いやそのぉ・・・あっ、ベアが今日ドラゴンファンタジーの最新作持ってくるって!」
「ほんとぉ!やったぁ!丁度やりたかったんだよなぁ」
瑠奈が今までの笑顔トップ3に入る顔で笑った。
誤魔化しは成功したが内心は凄まじい緊張感が走る。
そしてベアとガイコツが来て早速ゲームをプレイし始めた。
ベアと瑠奈は声を上げながら楽しくプレイしていた。
二人が楽しんでいるの見てガイコツがコッソリ俺に近づきささやいた。
「気をつけろ・・・看守もだが教徒たちにも気をつけろ」
俺は小さく頷いた。
そういえば坊ちゃんとその教徒たちは来ていない。
嫌な予感がする。
その日は終わりガイコツとベアは帰った。
キラーが寝る支度に入ったので俺も寝ようと思った。
寝るとき瑠奈が俺の肩を後ろから叩いた。
「どうした?」
「あのう・・・その・・・一緒に寝てほしいの」
「一緒に?」
「嫌なの?」
「いや嫌じゃないよ。分かった、先に寝ててくれ、すぐ行くから」
「うん」
俺は部屋の片づけをした後物置部屋に入った。
部屋の真ん中に布団が敷いてあり瑠奈がドアの反対側を向いて横になっていた。
俺はドア側を背にして瑠奈が使っている掛け布団少しこちらに寄せて寝た。
しばらく静かな時間が流れた。瑠奈が起きていることは分かっていた。
すると
「ねぇディア」
「なんだ」
「私の事好き?」
「どうした急に」
「いいから答えて」
「・・・ああ好きだぜ」
「・・・・・・」
「どうした瑠奈」
「あのねぇ・・その・・これから聞く事はあくまで例えね。いい?」
「いいぞ、どうした」
「私がもし大量殺人鬼だったらどう思う」
「えっ」
俺は固まった。まるで心臓が止まるかのような勢いで。
「どうしてそんなこと聞くんだ。瑠奈は大量殺人鬼じゃないだろ」
「いいから答えて。もし私が大量殺人鬼だったらどうする」
「・・・・・」
「ディア?」
「なんとも思わない。変わらず接する」
「どうして?」
「仮に瑠奈が大量殺人鬼だとしてそもそも人殺しの俺が瑠奈を責めることはできるのか?それに俺はお前のいいところをたくさん知っている。たとえ大量殺人鬼でも俺はおまえの善の心と向き合う。人殺しではなく瑠奈。やさしい仙道瑠奈として接するね」
「ほんとぉ・・・私が大量殺人鬼でも変わらず接してくれる?」
「当たり前だ」
「ありがとう、お兄ちゃん」
「お兄ちゃん?」
瑠奈は俺の方へ向いて俺の胸にうずくまった。
俺は瑠奈の背中をさすった。
静かだがやさしく温かい空気が部屋の空間に流れるような感じがした。
翌朝瑠奈はぐっすり寝てた。俺達は今日は朝早かったから朝食を作って家を出た。
港へ向かう途中何回もキラーに夜に二人で何を話したかを聞かれたが適当にはぐらかした。
港へ着きいつ通り漁をしてすぐ自宅に帰った。
昨日のことがなぜかうれしかった。
瑠奈がそういう悩みや思いを相談してくれたことが自分の気持ちにある違和感を取り払い一つの答えを出してくれた。
そうだ。俺は新たな人生を歩むんだ。人形としてではなくまだディア・アルフォートとして人生を歩んでいるんだ。
生きてていいんだ。
ステップを踏むよう歩いた。
キラーは不思議そうに見ていたが何かを察したのか薄笑いでこちらを見ていた。
玄関のドアをあけた。
瑠奈が降りてこない。おかしいと思い流し台を見たが朝食は食べてあった。
「瑠奈!」
返事をしても来ない。
二階へ上がり物置部屋を見ると中は壮絶な争いの跡があった。
本棚は倒れ、布団は破れ中の羽毛が出ている。
家の中を隅々まで探したが瑠奈はどこにもいなかった。
キラーと途方に暮れているとガイコツが向こうから走ってきた。
俺達の前へ来るとガイコツは言った。
「大変だ!ディア。瑠奈が教徒に攫われた!」




