吟遊詩人と謎のスキルの悲(喜)劇
「吟遊詩人のスキル...」
ツッコは、マーサの言葉を反芻するように呟いた。
そういえばステータスに言葉(ツッコミ、ボケ、ラップ、DJ)のスキルがあったが、結界の家で色々と試したが何も起こらなかった事を思い出した。
「ああ?そういや、そんなんあったね」ボッケも思い出したように言った。
「あぁ?あれ...私も何も起こらなかったし、お兄ちゃん達も普通に漫才してただけだったね」アマリはそんなことより休みたかった。
ツッコは悩む...でも使えるスキルだったら...今は藁にでもすがるしかないと思った。
「その吟遊詩人に会いたいんだけど」ツッコは前のめりになって尋ねた。
「そうだねえ、吟遊詩人は気まぐれな人が多いから、ギルドを通して依頼するのが一番確実になるね。...本当に悪いんだけど、今稼いだ銅貨を依頼料にすることでいいかい?」マーサは困った顔をしていた。
あれだけ苦労した報酬が無くなるのは痛いが、まだ結界の家には食料は少ないがあった。3人は相談すると意を決して頷いた。
その後は全員が疲れはてて食事を詰め込むなと眠ってしまった。
次の日の朝に相談した結果、薬草採集の仕事を続けながら、薬屋に行く前にギルドで吟遊詩人の進展を聞くことにした。
早速、流石にまだ見つかってないと思ったがギルドでマーサに聞いてみた。
「あなた達、すぐに見つかったよ!よかっ...あっ!あそこにまだいたよ」
マーサは掲示板の方に呼びかけた。
「バルタザール!ちょっと、こっち来てちょうだい」
「なんだよ、おばちゃん」
そこに来たのは肩掛けカバンをかけてギターのような少し傷のある小型の楽器を背負った子供に見えた。しかし注意して聞くと声は声変わりした青年のようだった。マーサはその子供に3人を紹介した。
「さっき、スキル教える仕事受けたでしょ、この人たちがそうだよ」
「なあんだ、あんた達が依頼者さん?僕はバルタザール、バルって呼んでおくれよ」バルはニッカリ微笑んだ。
「おい!子供じゃねえか、冒険者って子供でも、できるもんなのか?」
ツッコは驚いた顔でバルを見ていた。
「僕、すごい、かっこいいねギター持ってるね!」
ボッケはバルの頭を撫で、それを見たアマリは、ほんわかしていた。
「ちょっと、あなた達、彼がその吟遊詩人よ。小人族ハーフローレで成人しても人間の半分ぐらいにしかならない種族なのよ!」マーサが横から注意した。
「馬鹿にすんな!僕はもう大人だぞ!それにギターじゃなくてリュートだよ!」ボッケの手を振り払うとムッとしていた。ボッケは驚きながら謝った。
「わかったならいいよ!そんじゃ広場に行こっか!」
バルはあっさり切り替えたのでボッケは安心し、なやまない性格なのかもと思った。
その後ギルド出ると紹介やスキル等を話しながら広場に向かうことになった。
しばらく歩き建物が途切れ、さらに歩くと開けた広場に着いた。
「それじゃあ、スキルの使い方を始めるよ...まずはその前に」
バルはボッケの前に来るとボッケを見上げた。
「これから足を踏むよ」
そう言ってニッカリ笑うと、結構な勢いでボッケの足を踏んだ。
「うぎゃああああああ!ぃ痛いい」
ボッケは激しい痛みで片足をあげて飛び回った。
「て、てっめえ!何しやがる!」ツッコはバルを睨みつけた。
アマリはツッコの後ろに隠れた。
「まあ、まあ、待ってよ、これは、これから使うスキルの効果の違いを体で知ってもらう為にしたんだよ。けっして、さっき頭を撫でられたからじゃないよ」
バルはすました顔で笑っていたが、目は笑ってないように見えた。
「な、何すんだよ、すっごい痛かったよ」ボッケは涙目で見ながら、やっぱり怒ってたのかと思った。
「ボッケだったよね、悪かったね、ちょっと休んで痛みが引いてから同じことするけど、今度は吟遊詩人のスキルを、使うから違う結果になるはずだよ!」
バルは悪びれずに謝った。そんな様子に3人は警戒感が増した。
しばらくして、ボッケの痛みが引いた。
「痛みは引いたのに、また同じことするの?僕嫌だよ」
ボッケはものすごく嫌そうな顔をしている。
「まあ黙ってて、始めるよ」バルは何かを始めた。
「言葉の力を始めます」
そしてボッケの方を見ると、バルが言葉を続けた。
「ボッケは冷静に動き守るだろう、それが無理だろうと、もう諦めはしない」
言葉を聞いた途端だった、体に力が漲っていくのを感じボッケは驚いた。
そしてバルはボッケに近づいて行った。
「また、これから足を踏むよ」
ニッカリ笑いボッケの足が、また結構な勢いで踏まれた思われた。
しかし、その瞬間ボッケがいつもと違う見たこともない速度で避けバルから少し離れた所にいた。
「ボッケ?」「お兄ちゃん?」2人がありえない動きを見て驚く。
「すごいよ、これ...なんか相手の動きを見て避けれたよ!」
ボッケ自身も驚いていた。
「これが吟遊詩人のスキルの一つで「守りの詩」って言うんだ。これは冷静さと集中力を高め、敵の攻撃の回避や防御力のアップが少しできるんだ。すごいだろ」
バルは3人の反応に満足げな表情で言った。
その後、残りの2人も、かけてもらうと実感した。
「これはLV1でも、できるはずだよ。効果は1時間ぐらいは続いてるよ。あとLV1なら1日9回ぐらいできるんだけど、それ以降は言っても頭痛いだけで効果も無いんだ」バルは自分の頭を指さした嫌そうな顔をした。
「それじゃあ、やり方を説明するよ『言葉の力を始めます』てまず言うんだ、これでスキルが使えるようになるんだ、使いたくなければ『言葉の力を終わります』ていえばスキルは使えなくなるし効果も消えるよ。だから間違え無いように、戦闘終わったら言ったほうがいいよ。あと一応『言葉の力を終わります』って言わないでも、1時間以上寝ても同じで、スキルは使えなくなるし効果も消えるよ」
バルは思い出しさらに続ける。
「まー今はスキルが使える状態の時を話すね。まず、その時にスキルを使いたい相手を見ながら、さっきの『守りの詩』なら、『ボッケは冷静に動き守るだろう、それが無理だろうと、もう諦めはしない』って言えば効果が出るはずだよ」
「あのぅ、最初に名前がありますけど、名前がわからない人にかけたい時とか、どうするんですか?」アマリは少し怖がりながら質問した。
「ああ、そん時は、『杖を持ったあなたは』とか何か相手の特徴を指定すればいいよ。...それとLV1だと効果範囲は自分から半径50Mぐらいだよ。...あ!あと、複数の指定は、スキルで複数指定できるスキルが発現すれば使えるって話だよ」バル不安そうな感じで言った。
バルは説明が済み実践に移した。
「じゃあ、まずツッコとボッケがお互いに、かけてみようか?...でも、スキルの『言葉(ボケ)』と『言葉(ツッコミ)』は吟遊詩人の『言葉(詩人)』と似てるけど何が起こるかわからないから少し離れてやってね。あと『守りの詩』の効果は、もう、解けてるよ」バルはニッカリ笑った。
ツッコとボッケは真剣な表情で向かい合っている。
少し離れた場所でアマリとバルは座って眺めることにした。
「じゃあ、行くか!『言葉の力を始めます』」
ツッコは体から何か湧き上がる感じがした。
「よし、僕も行くよ、ええと、確か『言葉の力を始めます』」
ボッケも同様の感じがした。
2人は、ほぼ同時に言い合った。
「いくぞ!『ボッケは冷静に動き守るだろう、それが無理だろうと、もう諦めはしない』どうだ?ボッケ?」ツッコはボッケを見ながら言った。
「いくよ!『ツッコは冷静に動き守るだろう、それが無理だろうと、もう諦めはしない』どう?ツッコ?」ボッケはツッコを見ながら言った。
「何も変わってねえぞ?」ツッコは頭を傾げている。
「あれ、何も変わらないよ?」ボッケも何も感じないようだ。
その後3回試しても、何も変わらなかった。
バルは気まずそうに言った。
「う〜ん、やっぱスキルの言葉は似てるけど違うんじゃないの?...まあ、気を落とさず頑張りなよ」
ツッコは肩を落とし、ボッケも同様だったが気を取り直そうと口を開いた。
「ツッコ、このままじゃ詩人というより、もうすぐ死人になっちゃうね」
その瞬間だった。ツッコがツッコミを返す間も無く、足がスベると思い切り後ろに転び頭を強打した。
「ウゲッ」ツッコは頭を押さえて、うめいていたが、なんとか立ち上がった。
バルもアマリも急にツッコが勢いよく倒れたので驚いている。
「どうしたのツッコ、まあ大丈夫...そうな気がしないね」
ボッケ驚き、心配しつつも笑いながら言った瞬間だった。
またツッコの足がスベリ思い切り後ろに転ぶと、また頭を強打した。
「フガゲッ」ツッコは頭を押さえて転がりまわる。
バルはその光景に驚きながらも吹き出しそうになるのを堪えていた。なぜなら、隠していたが笑い上戸だからだった。アマリは口を押さえて失笑を堪えていた。
少しして、ツッコはかなり痛そう表情でフラフラしながら立ち上がった。
「ツッコ本当に大丈夫?相当な回転もしてたよ?採点したら10点満点ぐらいの」
ボッケは何が起こってるかわからず心配しながらツッコに声をかけた瞬間だった。
ツッコは、ものすごい寒さに襲われると自分の周りの半径50cmぐらいの範囲が地面と足ごと5cmの厚さで凍りついた。
「すげえ、さみぃいい」ツッコ腕を抱えると呆然としながら呟いた。
その時ツッコは足が動かないのでバランスを崩して後ろに倒れてそうになった。それを見たボッケが急いで駆け寄っり後ろから抱きしめたのは良かったが、足場が悪かった。抱きしめたまま足が滑るとツッコの靴の辺りの氷が割れ、まるでバックドロップのようにツッコの頭を地面に打ちつけた。
「ほゴッゲ」ツッコは白目になり気絶してしまった。
「ツッコ、ツッコ返事してええ!」
ボッケは大慌てでツッコの肩を揺らして目覚めさせようとしている。
バルはもう見てられなかった。
「もうやめてくれぇ、馬鹿なの、馬鹿なの」と腹を抱えて爆笑している。
アマリも助けに行きたいのにつられて笑ってしまっていた。




