夏の休みの悲(喜)劇
「あ゛?あああああああああああああああ!」
カンフォラさんは一瞬凍りつくと、頭を抱えて絶叫した。
その前日にプルが監禁されてから結界の家に帰った時まで話は戻る...
ツッコ達は夕ごはんを済ますと居間で休憩をしていた。
「プル、かわいそうだったね」「アイツ ナイテタ」
アマリが言うとドゥエンデも珍しく落ち込んでいる。
「まあ自業自得だけど、今まで見たことないぐらい落ち込んでたよな」
ツッコは腕を組み眉間の皺が深くなった。
「少しも話さなかったしね...あの時は、こっちも寿命が縮んだよ...」
ボッケは水を飲むと息を吐いた。
「でもカンフォラさんも最後の方は呆然としてたもんな...」
ツッコの言葉に全員が沈黙してしまった。
しばらくするとボッケがツッコの顔を気にしながら言った。
「それより、これからどうすんのプルいないならアオイノシシは倒せないよ」
「そうだよな...2週間なんだよな...アマリ、お金ってどんだけ貯まってたっけ?」
アマリは部屋の奥の収納棚に複数に分けてあったお金の袋を確認して答えた。
「冬の備えを差し引いても銀貨100枚(銅貨10000枚)は余分にあるよ」
その後ついでに水を持ってきてドゥエンデと一緒に飲みだした。
「あんだけ苦労した氷作成と今までの貯金足しても、それだけかあ」
ツッコはため息をつくと、少し考えてから続きを言った。
「...防具新調するにも革から買い替えだし高いよな...一人分の鎧買って終わりぐらいかあ」
「そんな鎧より、もっと美味しいのが食べたいよ!...ちょうど2週間あるし夏休みにしようよ!」ボッケは頰杖をつき嫌そうな目で見つめた。
「私も、いつもの塩味とキノコと魚のだし以外の味も食べたい!」
「オイシイ! タベタイ!」
アマリとドゥエンデが賛同すると、ボッケは嫌味な笑顔を浮かべながらツッコさらに見つめた。
「お前ら、食うことになると意見が一致するな...」
ツッコは周りの視線にたじろぎ、眉間に皺を寄せながら言った。
「だって貯めてばかりだといつまで経っても新しいもの食べられないよ!」
ボッケは真剣な表情で食欲を吐き出した。
「そうだよ!少しはストレス発散しながらじゃないと防具買ってるだけで全然楽しくないよ」アマリも少し疲れた表情をすると食欲に忠実な意見を言った。
ツッコが答えに詰まり、ボッケはあと一息と踏んで畳み掛けた。
「それに氷作りでみんな頑張ったじゃん!なんか僕達にもボーナスください!」
さらにツッコが困った顔をしたのを見てアマリとドゥエンデも畳み掛けた。
「私もボーナスください!」「ボーナス ボーナス」
「お、お前らなあ...」
ツッコはそれだけしか言えず、目をつむり少し考えヤケグソ気味に言った。
「しょうがねえな、今んところ余裕もあることだしハックの店でなんか買うか!」
「「やったあああ!」」「ヤッタ ヤッタ」
全員が喜んでいる中、ツッコが言った言葉は誰にも聞こえていなかった。
「ただし、必要ないもんは買わないからな!...って聞けよ!」
そして買い物以外の夏休みの計画は翌日に持ち越しとなり、同じテンポでささやくように鳴く虫の声を聞きながら眠りに落ちていった。
翌朝支度を済ませハックの店に行く前にカンフォラに休みの報告をしに行った。
大木の前に行くとカンフォラがソワソワした感じで既に待っていた。
「ツ、ツッコさん!え、え〜とプルはどうなってますか?」
カンフォラは答える暇も与えずさらに掴みかかるような勢いで喋りだす。
「プルの面会はどのぐらいで行くのですか?」
ツッコは引きつった笑みを浮かべながらなんとか答えた。
「プルはすごい落ち込んでいて話しませんでした。」
カンフォラの口も手も震え、両頬を押さえている。
「...あ、あと面会は7日のうちに1回で行くつもりです」
ツッコがそう言うとカンフォラの顔が怒りの顔になっていく。
「...少ないんじゃないですかあ?...仲間っていってましたよねえ?」
カンフォラの残響を伴ったいつもより低い声と見開かれた目も怖すぎる。
「た、大変申し訳ありません!、で、でもカンフォラさんが言ったんじゃないですか!普通のピクシーと同じようにって!」
全員が土下座する中なんとかツッコが言ったところで冒頭のカンフォラが叫びになったのだった。
「そ、それはですねえ...」
カンフォラは一転しどろもどろになりながら考えだした。
「あ!、あれはツッコさん達以外に言ったのです。ツッコさん達は...そのプルの仲間です!特別なんです!だからいいんです!」
カンフォラがどんどん言い寄ってくるたびに、ツッコ達の頭は千切れるぐらい上下にうなずいていた。
「...じゃあ7日のうちに2回...」
カンフォラは無言で目を見開いて凝視していて怖すぎる。
「...さ、3回で...」
カンフォラの無言での凝視が続いていて怖い。足が勝手に震える。
「...よ、4回で...」
カンフォラの無言での凝視が続いていて怖い。全身が勝手に震える。
「...ご、5回で...」
「そ、そうですかあ、悪いですねえ!7日5回報告お願いしますねえ!休む日はその前に行ってください!」
カンフォラは両手を組んで満面の笑みで答えた。
カンフォラに挨拶を済ませ、疲れきった足取りで街へ向かった。
「もぅ、ツッコ!2回でやめておけばいいのに!」
ボッケは安心したのかツッコを見ながら文句を言った。
「お前も頷いてたろがああ!」
暑い日差しを避け日陰へ逃げるボッケをツッコが追いかけていく。そんな二人を冷たい目で見るとアマリはつぶやいた。
「...冷たいバカというかもう、いつでもバカだよ」




