プルの優雅な日々の悲(喜)劇
「あれ?プルは、いないんですか?」
カンフォラは不思議そうな顔をしている。
「へ?プル...いないんですか?...昨日も確かここまで送りましたよね?」
ツッコも同じように頭を傾げた。
「それがですね、あの後出かけて行ったので、ツッコさん達の家に行ったと思ってたんですがね」
カンフォラは腕を組んで悩んでいる。
「ここ何日かプルは私達の家に泊まらなかったですけど」
アマリはそう言って頭を傾げた。
「そうなんですか!?...そういえば、ここ何日かは出かけて行っては何故か夜遅く帰ってきましたね?...昨日は帰ってきませんでしたからてっきり...」
カンフォラは想定外の事態に嫌そうな顔をしてため息をついた。
「もしかして、また街で飲んでるじゃないの?僕達が探してきますよ!」
ボッケがそう言うと、カンフォラはお礼を言って微笑んだ。
その前日の夜カインの店でプルの景気のいい声が響いていた。
「おかわりじゃああああ!うめえやつくれえ!」
プルは猫背気味であぐらをかくと若干半開きの目でコップでコンコンしだした。
「プ、プル様がおかわりを頼んでおるぞ!早く注ぐんじゃあ!」
「プル様の頼みよ!早くしないと!」
ブランとフローラの声が響くと、疲れた顔のカインがプルの前に新しい氷入りのシードルを置いた。
「プル様本当にいい飲みっぷりですね!」
愛想笑いのブランがプルに拍手をしている。
「さすがプル様!...ロルフも言って!」
若干引きつった笑顔で拍手しているフローラも、小声でロルフに強要した。
「さすがが..で、です、プル様!」
無理やり作った笑顔でロルフはいうと、やる気のなさそうな拍手をしていた。
「あたいはまだ、大丈ぶ...ヴェ...ぅうぉっぷ...おもてねえんじゃねえであるか?」
プルは立ち上がりフラフラ回りながら文句を言おうとして、少し吐きそうになった。目は完全に座っている。
「なあフローラいつまでこのバカに、こんな接待しないといけねえんだ?」
ロルフはプルの隙を見てフローラに小声で聞いた。
「そ、そんなの当たり前でしょ、カンフォラ様のお気に入りなのよ!もしカンフォラ様の機嫌が悪くなったらどうするの!」悲壮な顔のフローラが小声でロルフに言うとブランも同様に頷いていた。
「そこのデブ!おもろいこと言いためええ!」
プルの無茶振りが始まった。
「で、デブだとぉ!ってぇ...」
「ロルフ、し、辛抱よ!」
「ロルフ!カンフォラ様がお怒りになったらどうするんじゃ!」「...」
ロルフが怒って立ち上がろうとするとフローラが口と肩を抑えブランも両手で抑えたが足りないので焦ったカインまで加わり、ロルフを止めようとしたが少しずつ進んでいた。
「早く言うためええそっちのまな板も!」
プルは笑いながら無茶振りを続けると、ロルフもその言葉とフローラを見て吹き出すのをこらえた。
今度は激怒したフローラが立ち上がり体の周りの空気が揺らぎ出した。
「ま!まああああないたあああで...」
「フ、フローラ、ストップ!ストーップ!」
「カンフォラ様、カンフォラ様を思い出すんじゃ!」「...」
ロルフは必死の形相でフローラの口と肩を抑え、同じく必死の表情のブランとカインが肩と腰を掴んでフローラを止めた。
「さぁ、さっさとぅおしろ、デぇブぅう、ムぅまな板ぁ、死ぃにかけぇ、ん根ぇ暗ぁあどもがあああ」
プルはそう言って大笑い始めた。
「「「..............」」」
店の空気が一瞬にして凍りつきそうな凄まじい殺気が漂い出した。
プルはその気配を見て少し怖気付きながらも言い返した。
「んなんでぁあ?わたいぃに文句あリュぬかああ、き、キャンフォリャに言っちゃうああああ!」
カンフォラという言葉にフローラとロルフとブランがビクっと反応し、素に戻りカインはそんなに怒ってなかったので周りが落ち着いてホッとしていた。
「や、やばいわ...面白いことは、えーと、えーと...」
フローラはしょうがないので杖を回して少し踊り出してポーズを決めると顔が真っ赤になっていた。
プルはフラフラしながら同じように踊ろうとしてこけて笑いながら言った。
「す、すげえええ、あ、あろ酒ええええ、あとデブ早くぅうう」
ロルフは、もう諦めると吹っ切れた顔をして言った。
「ああもうう!!もう一気飲みするぜええ...」
そういうと、でかいジョッキ型の入れ物に入ったエールを一気に飲み干しゲップするとプルは大笑いしていた。
それ以降も夜明け近くまでプルの無茶振りは続けられたのであった。
「おむぅあぇりぁあああああ...しぃ、あい、こぅじゃあ...」
プルは魔道具で回復するのも忘れ笑顔のまま酔い潰れて眠り出してしまった。
それを見届けた疲れ切った四人も糸が切れたように机に突っ伏した。
それから時間が経ちツッコ達は門番のグースにプルのことを聞いていた。
「プルかあ?...朝の交代の時にカインの店から酔っ払いの声が聞こえたぞ?」
「そ、そっか!...グースありがとな!」
ツッコ達が急いで横を通り過ぎるとグースはいつも通り空を見上げると苦笑した。
カインの店に入ると酒の匂いがただよい机の上には様々な大きさの空のコップと、幸せそうな顔でいびきをかいて寝てるプルがいた。そしてその対面の席には死んだように眠るブラン、フローラ、ロルフ、カインがいた。
「みんなすげえ、飲んだんだな?」
ツッコは駅やホームで酔い潰れて倒れていた人を思い出し微妙な顔をしていた。
「なんで、プルと一緒にいるんだろうね?」
ボッケはこの4人と一緒にいる理由がよくわからなかった。
「お酒くさいよ〜」「クサイ クサイ」
アマリは濃いアルコールや人から出る汗とも入り混じった匂いに顔をしかめ、ドゥエンデも近寄りたくないのかアマリの上の方で飛んでいた。
その後ツッコ達はブラン、フローラ、ロルフを起こそうとしたが、相当疲れていたのか中々起きそうにないので、1番マシなカインを起こすことにした。
「カインさん、カインさん、大丈夫か?」
「...あ、あ、ツ、ツッコ達か...昨日は今までで指折りの最低の日だったよ」
疲れ切った顔のカインが要領よく話してくれたことによると...数日前にプルがブランとフローラとロルフの酒を見ていた...フローラがカンフォラのお気に入りと気付いた...ブランにそのことを紹介すると接待が始まってしまった...そしてカンフォラとのことを聞いて接待してることにプルが気づいたのか態度が大きくなっていった...こんなことが数日続き、しかも昨日は一定量を超えて飲んだのかいつもよりひどく豹変して無茶振りし出したと言うことだった。
ツッコは盛大なため息をつくと悲しそうな顔で言った。
「こいつ、本当に飲むと最悪だな」
ボッケは昔飲んで失敗した時を思い出し、苦々しく言った。
「ツッコ、昔の僕達もこうだったのかな?」
「もう!さっさと連れてこうよ!でもなんか臭いね!」「バカ クズ ゴミ」
アマリは心配そうな顔をしてるが臭いので引いている。ドゥエンデも近寄らず鼻を押さえていた。
ツッコ達がカインに謝るとカインは少し考えて、悲しげに言ってから笑った。
「謝ることはない、フローラ、ブランが率先して接待してたから...それにこちらとしては儲かったしね」
その後、またジャンケンで負けたツッコがなんともいえない表情でプルを手に持つとカンフォラの所へ向かった。
「プル、プル起きなさい!」
カンフォラが心配そうに駆け寄ってきたが、酒臭いので少し体が引いていた。
「...うう、あ...き、きもち、わるいし、さ、寒気もす.........い、いいや」
すると、頭の魔石に手を当ていたプルの青白かった顔がみるみる元に戻った。
「ああ、昨日はなんか楽しかった気がするけど...あれ?カンフォラのとこに帰ってる?わたいすごい!」
「すごいじゃねえよ、俺たちが連れてきたんだよって!?...お前二日酔いだったのにどうして治ったんだ?」
ツッコは不思議そうな顔で呆然と眺めていた。
「本当ですね?急に治りましたね?」
カンフォラも目を見開き驚いている。
「やば!...ああのこれはそのう、わたい丈夫になったんだ」
プルは斜め上を向いて口笛を吹こうとしたが何も鳴らなかった。
「プル?何を隠してるのですか」
カンフォラは眉間に皺を寄せプルを睨んでいる。
「明らかにうそついてるね?あんな酷そうな二日酔いがそんな早く治るわけないよ...魔石に手を当ててたしその魔道具が怪しいのかも」
ボッケは少し考えて魔道具を指差し微妙な顔をしている。
「!!!...そそそっそっっっそんなこと、あ、ある訳ないよおおおお」
プルは頭の魔道具のリングを両手で触りながら首を振っている。
「確実にそうだねこの反応は」「アヤシイ アヤシイ」
アマリもボッケに同意し、ドゥエンデはプルの周りを飛びながら言うとアマリに隠れた。
「そうですねえ、見てみますか」
カンフォラはプルの魔道具に手を触れて確認すると厳しめの口調で言った。
「プル!こんな効果があるなんて聞いてませんよ!!自分の二日酔いを1日1回は回復できるなんて!」
「な!何い?こいつ最近、夜中遅く帰ってこれてたのは、このおかげかあ」
ツッコは納得したように呟いた。
その時ボッケは今日聞いた事を説明すること忘れていたので、とりあえずカインに聞いたことをカンフォラに報告した。
「ああ!忘れてた!...カンフォラさん、カインさんに聞いたら、この数日間プルはカンフォラさんのお気に入りだからって接待されて酒を貢いでもらってたらしいですよ。それから今日は飲み過ぎて、その人達に無茶振りして朝まで飲んでたって言ってました」
「...プル、確か2週間ぐらい人間達の牢屋に入って反省したと言ってましたよね?」
カンフォラが悲しそうな顔でプルを見ている。
「カ、カンフォラ、あ、あいつらが勝手になんかカンフォラ様は元気ですか?って、それで好きなだけお酒くれるって言ったし、そんで、わたいも覚えてないけどここにいたんだもん」
プルは目を泳がせ動揺していたが必死に言い訳をした。
「あなたが、人間達に無茶振りしたと言ってましたが?」
カンフォラの目がプルを見つめている。
「あ、あいつらが、カ、カンフォラって名前出すだけで、なんかビクビクするから適当に遊んでただけだよ...ってああ」
プルはやばいという顔で口を抑えたが時すでに遅かった。ツッコ達は顔をおさえ、真剣に聞いていたカンフォラから普段聞いたことがない尋常じゃない歯を噛み締める音が響き全員がビクッと震えた。
「ツッコさん?」ツッコはすでにカンフォラの怒りが怖すぎて土下座している。
「はいいいいい、何なりと言ってください」ツッコは頭を上げられない。
プルは今まで見たことがないカンフォラの怒りが体に伝わり冷や汗と震えが止まらない。そしてカンフォラから今まで聞いたことのない音が響きだした。
「クソバカ!いつまでも甘えてばかりだと、埋めますよ?」
カンフォラの視線のあまりの恐怖にプルは失禁して崩れ落ちた。
「ご、ごめんなさあああああい、うわあああああああああああああああん」
プルは土下座して謝り泣き出した。それを見たカンフォラも少し落ち着いたのか息を吐くと普段に戻った。
「ツッコさん、人間達にプルを以前のように2週間監禁するように言ってください。あとプルを私の名前出さずにただのピクシーとして罰を与えるように言ってください。それとこれ以降も私目当てでプルに接待をしないようにと。しかし今回の件は接待を持ちかけた人間達も悪いので接待した人間達によるプルへの私刑は禁止しますと」
カンフォラは返事はするものの頭をなかなか上げないツッコ達にため息をついた。
「あとプル、私がいいと言うまでお酒禁止です。破ったら埋めます」
その時プルは泣いていたが、アマリが一瞬顔を上げて見たカンフォラはものすごい悲しそうな顔をしていた。
その後二日酔いが回復した時に話を聞いたブラン、ロルフ、フローラ達はギルドのピクシーの監獄に監禁されて人生の終わりのような顔で体育座りをして、時折すすり泣くプルを見て余計な事をしたことに後悔していた。
「なんか接待する方もされる方もあわよくばって欲深さによって自滅したね、お兄ちゃん達も気をつけてね?」
アマリはまあ2週間経ったらカンフォラと仲直りして自分達と再出発できるといいなと思いながら言うとボッケが青い顔で言った。
「プルがいないなら...これから2週間アオイノシシを倒せないよお!!!!」




