フローラとの約束の悲(喜)劇
カインの食堂「古き盾」に着くと、いつものように日替わり定食を7人分頼んで満足するまで食べた。
「やっぱ、カインの店で日替わり頼むのが1番だな」
ツッコは落ち着いて水を口に含んだ。
「今日のメニューの焼鳥も美味しかったね」
ボッケは膨れた腹をさすりながら満足そうにしていた。
「毎日ここで食べれるぐらいになりたいよ」「マイニチ タベタイ」
アマリは持って来たお手玉の上に座るドゥエンデの顔を拭いていた。
「本当に、毎回すげえ勢いで食ってるな」ロルフは楽しそうに笑い出した。
最近は、会えば大体一緒に食べるようになったロルフとフローラも同席していた。
「そういえば、フローラさん私達レベル4になりました。...だから魔法見せてもらえるとありがたいです」アマリは以前に約束していたことを聞いてみた。
フローラは少し予定を考え出した。
「...それじゃあ、3日後は空いてるから、その時一緒に行きましょう」
「俺もついてくぞお」ロルフはなんの考えも無しに、すぐに便乗した。
「ありがとうございます」
アマリは嬉しそうに言うと、ツッコがボッケに何か合図を送った。
「そうだ、俺たちの取ってきたキノコと魚食べてくれよ」
ツッコが言うと、ボッケが荷物から取り出し机の上に置いた。
「おお、くれるのか?じゃあ...おおい!カイン!これもらったから料理してくれ!」ロルフは厨房のカインを呼んだ。
しばらくすると、疲れた感じのカインが来て素材を確認中していた。
「カイン悪いけどよろしくね」フローラもすまなそうにカインに頼んでいた。
「余った分はカインさんも食べてよ」ボッケが言うと少し嬉しそうな顔になった。
「ちょっと時間かかるぞ」そう言うとカインは厨房から持ってきた箱に入れて戻って行った。
「ここって持ち込みも可能なんだな」ツッコは厨房に戻るカインを見ていた。
「カインは頼めば結構作ってくれるぞ、いいやつなんだ。...それよりお前達、西の森ではどうなんだ何か面白いことあったか」
ロルフは少ししんみりしたかと思うと、話題を変えてきた。
ツッコは「面白いことか?」と片手を頭で押さえ考えていると閃いた。
「そういや言ってなかったな、俺たちに新しい仲間みたいなもんができたんだ」
「どこにいるんだ?そいつは」ロルフは周りを見たがいつも通りだった。
「いやその、ピクシーなんだよ」ツッコは困った顔になった。
「ピクシーなら、そこにいるじゃねえか」
ロルフは満腹になり、お手玉に抱きついて休んでいるドゥエンデを指さしていた。
「もう1人増えたんだよ。そいつは森の中だけ一緒にいるし、多分今日は森で休んでるはずだと思う」ツッコは二日酔いでダウンしているプルを想像していた。
「一人でも珍しいのに?お前ら変わってるな?」
ロルフは顎に手を置き呆れた顔をしてる。
「そうよね、イタズラされたり、言うこと聞かないのが多いはずだけど」
フローラも同じように呆れつつもドゥエンデを見る目は優しかった。
ツッコは普通と違うと言われたような気がして少し焦った。
「い、いや、精霊と会って頼まれたようなもんだし」
「精霊と会ったの?森の精霊?」フローラは精霊という言葉が気になった。
ツッコはプルの話より精霊の方が好きなのかなあと漠然と考え話した。
「西の森の大樹で会ったんだ、カンフォラって名前のドライアドって言ってたな」
「な、なんですって、カ、カンフォラって言ったの?」
フローラが驚愕の表情で立ち上がった。
「おいおい、お前達本当かよ、カンフォラって言ったのか?」
ロルフも目を見開いて驚いていた。
「な、なんだよ、脅かすなよカンフォラさんて有名なのか?」
ツッコは二人の変わりように驚いていた。
「お前達知らないのか?有名だろ『森を怒こらせた冒険者達』って話?」
ロルフはツッコ達が全くわかってないのを見て、しょうがねえなあという感じで話し始めた。
「要点だけ言うぞ。このオールドゼニスがまだ栄えてた頃に西の森を切り開こうとして冒険者を大勢派遣したらしいんだ」
ロルフは途中から真剣な顔になっていった。
「そして切り進めてったらリーダーだった高ランクの冒険者の前にカンフォラと名乗った美しい精霊が出てきて、やめなさいと言ったんだ。けど無視して無理やり切り開こうとしたら激怒したその精霊に何も手も足も出ずに森に引きずり込まれて養分にされたって話だよ」
「そ、そういや、そんなこと話してたけど本当だったんだな」
ツッコはカンフォラに聞いた話そっくりだったので、背筋が寒くなり絶対に怒らせないようにしようと心に誓った。
「あなた達怒らせてないでしょうね?」フローラは少し怖い顔になっていた。
ボッケは何もしてないので正直に答えた。
「怒らせてないよ、最近は。でも毎日会ってるよ」
フローラは何か決断するとロルフに話しかけた。
「3日後なんて言ってられないわ、明日にしましょう」
「...けど、オレ達だけだとやばいんじゃねえのか」
ロルフは険しい顔になっていた。
「...この子達が生きてるんだから大丈夫でしょ、きっと間違いだと思うから確認するだけよ」フローラは若干焦っているように見え、ロルフも緊迫していたが、ツッコ達3人はプルとカンフォラのドタバタを毎回見ているので全然ピンときていなかった。
そして次の日になり、待ち合わせ場所にした街の入り口に向かった。
すでに来ていたロルフとフローラは食堂にいる時とは違って、全身に防具をつけピリピリした雰囲気だった。
「あなた達ポーションは持ってるの?」フローラの眉間に皺がより緊張感が漂っていたので確認してすぐに頷いた。
「何かあったらオレの後ろに隠れるか、合図があったら全力で逃げるんだぞ」ロルフも眼光鋭くバトルアックスを確認し、頑丈そうな兜と肩当てのついた鉄の鎧をつけていて準備は万全のようだった。
「そ、それじゃあまず、プルと合流する場所に行きます」ツッコは緊迫した感じに若干丁寧な感じになってしまった。その後も3人は雰囲気に呑まれ、ほぼ無口で目的地に向かっていった。
喉が渇くような緊張感により水場に着くのに、いつもの3倍ぐらい時間がかかっているかのような感じがした。そして、いつ見ても圧倒される巨樹が見えた。
「あ、あれがその、カンフォラのいる巨樹だぜ」
ツッコはフローラとロルフの重い雰囲気に少し疲れていた。
「確かに、何かいるようね」フローラの顔に冷や汗が流れる。
「大丈夫かフローラ?やばいのか?」ロルフが険しい顔で聞いている。
「逃げたほうがいいかもしれないわね」フローラは圧倒されている。
「そこまでの奴がいるのか」ロルフは驚きの顔をしている。
「おい?1人いないぞ?」
ロルフが言いながら探すと、ボッケはすでに巨樹の下の近くに向かっていた。
「バ、バカ、殺されちゃうじゃない」
フローラは決心すると飛び出し、全員がその後を追いかけた。
「あれ?みんなもやっと来たの」
ボッケはすでに巨樹の下に着いていた。
「ボッケ、早く逃げるわよ」
フローラはボッケに追いつくと手を取って逃げ出そうとした。
その時だった上からプルが降りてきた。
「あんた達遅かったじゃないの?寝坊でもしたの」
そして大樹からカンフォラがぬるりと出てきた。
「ツッコさん達、今日は遅かったですねえ」
カンフォラの水が水面に落ちるかのような甲高い声が残響を伴い響く。
「新しい人ですねえ?ツッコさんのお仲間ですか?」
カンフォラが近づくとフローラが後退りし怯えていたのでロルフは咄嵯に武器を構えた。
「あ、あ、あんた名前はカ、カンフォラ」
ロルフの声は緊張のあまり言葉が出てこなかった。
「私に武器を構えると言うことは仲間じゃない?...と言うことは森を切り開きに来たと言うことですか?」
カンフォラの声に少し怒気がまじり威圧感が倍になると、睨まれたフローラの腰が抜け青い顔で震え出し、ロルフもフローラのただならない様子にフローラの前に立つと手が震え真っ青になっていた。
ボッケは威圧に少し慣れていたので、急に武器を構え戦意喪失してる2人と少し怒ってるカンフォラに慌てて言った。
「ち、違うんですカンフォラさん、今日は、この2人にアマリのけ、稽古つけて貰うために呼んだんです」
「稽古?ああ、そうだったんですか...先に言ってくれればいいのに。プル、あなたも見習いなさい。みなさんのように真面目に努力するのですよ」カンフォラは威圧を解くとニコニコ笑いながら言った。
「しかし、ハーフエルフにドワーフですか?珍しい組み合わせですねえ。あなた達もプルと仲良くしてあげてくださいね、ただし、森を不必要に切るなら怒っちゃいますよ」
カンフォラはそう言うと呆然とする二人を置いたまま、さっさと大樹に入って行った。
呆然とした2人とプルを伴い大樹から離れていくと
「ほ、本物だった昔話の最後で森の守護者カンフォラを怒らすなって。私これからカンフォラ様って呼ぶわ」フローラはまだ少し震えていた。
「昨日ギルドとも話したが、昔話を信じて切り開かなくて正解だったんだな」ロルフもやっと落ち着いてきた。
「カンフォラさんは別に木に悪さしなければ優しいよ、怖い時もあるけど」アマリは正直に話した。
「そうなの?あなた達すごいわね」フローラは威圧の恐怖から優しいと思えなかった。
「お前達って本当は強いのか?」ロルフもフローラと同じだった。
ツッコは誤解されてると思ったので、プルとカンフォラと自分達についての関係をわかりやすく話した。
「そんなバカな話で、ほぼ人前に出てこなかったカンフォラ様が?...でも優しいのね」
「信じられねえけど、そうなのか...なんか過保護な親みたいだな」
ロルフとフローラはプルを眺めると余りの馬鹿らしさに少し気が抜けた。
「ワタイの悪口を言ってるのはツッコかあああ」話を聞いていたプルがツッコの頭をポコポコ叩き出した。
そして全員で笑い出した。




