ピクシーの二日酔いの悲(喜)劇
それから2日プルとの採集は順調に進んだが、3日目に事態は起こった。
朝飯を終えプルを迎えにカンフォラの大樹の下に着くと、上の方からいつも通りの呑気な声がした。
「クプル?どうしたのですか?もう下に来てますよ」
「ヴッ...あ頭痛い!み...水ください...キ、キキ、気持ち悪い」
プルの弱々しい声が聞こえてきた。
「だからお酒飲むのは、やめなさいと言ってるでしょ!...全くいつもどこで飲んでくるの」
カンフォラの怒りの声が響いた。
「ゥヴゥ...今日...無理...スイマ...セ」
プルの最後の方の言葉は、ほぼ聞こえないぐらい弱々しいものだった。
しばらくすると、カンフォラが大樹から出てきた。
「ごめんなさい、昨日の夜お酒を飲んで二日酔いでダメみたいなの、本当に申し訳ないけど明日またきてくれる?」カンフォラが頭を下げた。
「いやいやいや!俺達全然大丈夫です!」
「僕達に気を使うなんてとんでも無いです!」
「わ、私は森が大好きです!」「モリ スキ」
全員が口々に言い深々と頭を下げた。カンフォラは最後の言葉が少し気になったが愛想笑いで答えた。
「そうだ、カンフォラさんプルに言っといてくれ!俺達7日に1回は休みの日にしてんだ。だから飲むなら、その前日に飲んでくれって。そうすれば次の日は今日みたいにダメでも休みだからいいって」ツッコはハッと思いつくと提案した。
「あなたは優しいのですね」
カンフォラは少し驚いた顔してから笑った。
「違いますよツッコも僕も以前は休みの前の日に飲んでたんですよ。だから僕達も、お金があれば普通に飲んでると思います!」ボッケが胸を張って説明した。
「威張るとこじゃないでしょ!ええと、つまり、お兄ちゃん達もプルと同類ってことですよカンフォラさん!」
アマリの言葉にカンフォラ納得すると少し苦笑いをしていた。
「まあ酔っ払ってくれた方が、いい時もあるし...ングゥ」
ボッケの口を素早くツッコが塞いで愛想笑いしていたがカンフォラは、それも含め少し考えていた。
「ちょっと待ってくださいね」
カンフォラは大樹の上でプルに水をあげると戻ってきた。
「それでは今日は私が一緒に行きましょう!」
「えぇええ!」全員で驚くとカンフォラは微笑した。
その後は、カンフォラが先頭の案内で採取をする事により、いつもより薬草やキノコ等たくさん取ることができた。
「なんか今日はツノウサギとかオオトカゲほぼ見ねえし、すぐ逃げちまうな」
ツッコは不思議そうに辺りを見回しながら言った。
「本当だね、いつもは、こんだけ歩けばもう2−3匹は狩れてると思うのにね?」
ボッケも同じように不思議そうだ。
さらにカンフォラに付いて行き開けた場所に出た。そしてそこが、以前アオイノシシから逃げた所だった事に気づいた。その時、奥から青い光を反射させた異様なアオイノシシが歩いてきていた。すぐに危険を知らせようとしたが、カンフォラを見た途端ものすごい勢いで逃げていった。
「皆さん!」その時カンフォラが振り向いた。
「「「はいぃ!」」」即座に姿勢を正し直立不動になる3人だった。
「そういえば、この森の動物の一部は、もう私に近づかなくなりましたね。...皆さんは狩りをしてましたよね、これは悪いことをしてしまいましたね」
カンフォラは昔を思い出すように話した。いつもなら落ち着ける、水が水面に落ちるような甲高い残響のある声が、物凄いプレッシャーにしかなってなかった。
「だ、だ、大丈夫です、薬草とかキノコとかだけでも、すごい助かってます」
「じ、じ、自分達だとこんなに取れないです。ありがとうございます」
「わ、わ、私は森が大好きです」「ダ、ダ、ダイスキ ダイスキ」
「しかしまた、その言葉ですか?そんなに恐れなくても...ああ!クプルの言った人間を怒って養分にした事ですか?もう覚えてないぐらい昔の事ですし、今は温厚です安心してください」カンフォラは満面の笑顔で語ったので、全員青い顔で全力で頷くと、カンフォラは少し悲しげな顔で話を続けた。
「そうです!あの人間共は忠告を再三無視して私の大樹を破壊しようとしたのです。だから、その大将格を見せしめにしました。あなた達はそんなことしないでしょう。...あと薬草やキノコも私達に近いですが、あなた達にとってネズミのようなものです。ネズミが殺されたからと言って怒りますか?その程度のものなので、薬草やキノコを取る事は別に文句はありません。...それと朽ちた木だけにナイフで印を付けていたのはいい判断です。その上、他の生きている木も傷つけなかったのはポイントが高いです。まあ、かなり大きくならない限りドライアドはいないので、いない木は別に切ってもいいのですけど...切り過ぎたら怒りますよ(笑)、なので今のところ敵意は全くありませんよ、安心したでしょう!」カンフォラが優しい顔をして怖いことをサラッと言った。
「「「カンフォラ様、私は森が大好きです」」」全員涙目になってハモった。
この時、全員ができるだけ植物に傷つけないように言ってくれたマーサ様(格上げされた)に心の中でありがとうと言っていた。
「も〜様は入りませんよ、皆さん本当に森が好きなんですね」
笑い出すカンフォラと、冷たい汗が流れる3人だった。
二日酔いが治り大樹で待っていたプルは楽しそうなカンフォラと青い顔で愛想笑いをする3人を見て不思議そうな顔をした。
「プルもう絶対二日酔いしないくれ!休み作るからぁ、そん時だけで頼む!」
「頼むよお、プル7日に1回だけ呑まない事にしてよぉ!」
「私もプルと一緒に行きたいよ!」
プルを見るなり3人は熱烈な要求をして唖然とさせた。
「何したのカンフォラ!」プルが言うと、少しやり過ぎたと思い目線を逸らすカンフォラだった。




