精霊の悲(喜)劇
「卵食べたいねえ」倒したスライムの魔石を回収しながらボッケは呟いた。
「時々、鳥、見るから木の上のどっかに巣があると思うよ?」
アマリは木の上の方を見て呟いた。
「そういや、食ってねえな卵?市場にあるんじゃねえか?次行ってみるか」
ツッコはそう言うとスライム体液をスポンジ草で回収した。
この前のアオイノシシに会いたくないので、以前見かけなかった西の森の水場でスライム狩りをメインに採集を始めていたのだった。
「しっかし、この木、本当に立派だよな」ツッコは水場にある中では一番の巨樹に圧倒されながら言った。その木は水場の開けた場所のほぼ中央にあり、幹回りは5Mを超え見上げれば枝が生い茂り巨大な日影を作っていた。
「何度見ても、こんなでっかいと驚くよね!まあ、日本にあったら絶対、神木とか言って標縄ついてるよ!」ボッケもスライムやオオトカゲを探しながら同意した。
「おい!なんか上の方で、ピクシー飛んでねえか?こいつら、ここに住んでんのか?」ツッコは上の方の枝をフラフラ飛ぶ影を見ながら言った。
「ねえ、多分ここにオオトカゲいるよ」アマリはその、巨木の近くの地面の盛り上がりを見ると指差した。
3人は地面の盛り上がりの5M先まで近よると慣れた動きで準備を始める。
まず地面に潜り込んでるオオトカゲの5M前でツッコが盾を構え、その2M後ろにボッケ、その左後ろにアマリという布陣になっていた。
「じゃあ始めるぞ!」ツッコの掛け声が響いた。
「「「言葉の力をはじめます」」」3人ほぼ同時に同じ言葉が続いた。
「オオトカゲなのに、やることは小さいねえ」
「お前に似てるじゃねえか、大物ぶるところとかな」
笑顔のツッコにボッケは嫌そうな顔をする。
「NO! オオ オオトカゲ 中トカゲ 小トカゲ 俺無駄に得意げ! アイッ(Aight)!」仮面アマリもドゥエンデも無駄に元気だ。
次の瞬間オオトカゲは被さった土ごと滑り頭を打ち、さらに滑り頭を打ちつけた。そして起き上がると同時に約20cmの石が結構な勢いで頭に落ちたが、すぐに頭の石をどけ態勢を立て直し突進しようとした。
だが、もうすでに3人の準備はできていた。
「オオトカゲって、王様みたいなやつだよねってことかな?」
「お前の疑問のように曖昧だな!」
ツッコのツッコミがボッケの精神にダメージを与えた。
「OH! オオ ト カゲ 生真面目 裏目 今大詰め ワッサ(What's up?)」
仮面アマリはドゥエンデと一緒に楽しそうにリズムを取っている。
その瞬間のオオトカゲの約半径50cmの範囲が足ごと5cmの厚さで凍つき、その氷ごと滑り頭を打つと、衝撃で氷が壊れた。 そして、その倒れた頭上に約20cmの石が結構な勢いで頭に落ち動かなくなった。
「あのオオトカゲも変なポーズだあ」と言う声と笑い声が上からした。
さらにその瞬間オオトカゲの周りが爆発する鈍い音が響いた。オオトカゲは3Mぐらい上に飛ばされ叩きつけられ倒れていた。
「何んだああああああ!」「どうしてえええ!」「えぇえええええ!」3人とも何でスキル漫才のボーナススキルが出たのかわからなかった。
「ちょ、ちょっと待て!まずみんなスキル終わらせろ」
ツッコの声に、とりあえず全員スキルを終了させた。
「おい!もしかして、まさかプルがいるのか?」
ツッコが叫び、3人は周りを探すと、上空から声がした。
「ワッサ、ワッサ.....ってわかるかぁあ! ワタイの住処にくるとは....お土産ください!」相変わらず酔っていて、ノリノリと思えばフラフラと降りてきた。
「しかし、お前毎回酔ってるな?少しは反省したんじゃねえのか?」
ツッコは呆れた顔で言った。
「お!お前らのせいでぇ。デェ デェ ウ ゥ... 吐きそう」
というと草むらで無言で吐いていた。しばらく、うずくまっていたが、またフラフラ飛んできてアマリの前に落ちた。
「ワタイ....頭痛い、水くだらぃ」しょうがないのでアマリがボッケのカバンから水筒を出し水をあげるとガブガブ飲みはじめた。
「クプル大丈夫?」その不思議な声の方向を見ると、大木の中から薄い緑色に輝く小さな女性が心配そうに出てきた。
「な、な、あんた、何もんだ?」ツッコが声を出し、残る2人も驚きで固まった。
「私は、この森の木の精霊ドライアドのカンフォラです」カンフォラの声は水が水面に落ちるかのような甲高い音で残響が若干あり、心が落ち着く音だった。
「前、マーサさんが言ってた森の精霊って、この人のことじゃないの」
アマリも目を見開いて少し興奮しているようだ。
カンフォラはプルを心配そうに見たあと、こちらに振り向いた。
「クプルに水あげてくれて、ありがとう。あなた達いい人ね。しかも不思議なスキルを使うのね」カンフォラは微笑んだ。
「カンフォラさんはプルの親なのか?全然違う形だけど」
ツッコは不思議そうに聞いた。
「プル?って呼ばれてるのね。...この子は私の子供ではないわ。種族が違うもの」カンフォラは続ける。
「この子の本当の名前はクプル・ソフォス・バルドル・カルディアていうの。あるピクシーの王族の4番目の子供よ」
カンフォラの宣言に驚く3人の横でプルは二日酔いの頭痛と戦っていた。
「この子がプルという名を語ったのもアル中になったのも、その名前のせいなの」カンフォラは眉間に皺を寄せると顔を隠すように下を向いた。
「....なぜなら略すと...クソバカ..になるからなの」
そういうと肩を揺らして笑いを堪えていたが、結局笑い出してしまった。3人も少し間を置いて少しづつ理解すると吹き出していた。
「...しかも、父親の名前は略すとソバカスでお爺さんの名前は略すとバカスギなの」そういうとカンフォラも大笑いしだし、3人はもう爆笑していた。
「フゥ..だから、周りの仲間からバカにされて逃げてきて、お酒に逃げてしまったの...それで私のいる木に住み着いてしまって余りに可哀想だから」
プルは拗ねて皆に背をむけて体育座りをしていた。
「ワタイ、クソバカじゃないもん」少し酔いが覚めた悲しい顔でつぶやいた。
全員居た堪れない表情になってしまった。




