魚で金策の悲(喜)劇
5日後の仕事休みの日までは本能のまま優先的にキノコを取り多く取れたものは干しておいた。その結果、休み前日に公衆浴場行っても銅貨2700枚ほどを稼ぐことができていた。そしてその夜の雑談で、お金を何に使うかが話し合われていた。
「次はボッケの装備だな。..これで次の囮役は、お前だな。ざまあみろ!」
ツッコはボッケを見ながら嬉しそうに言った。
「えぇ.....と。そ、そ、そんなことより、魚捕る道具買おうよ。ツッコ先行投資だよ儲けが出たら装備を買えばいいよ。魚は美味しいよ!」
ボッケは嫌そうな顔をすると考えつくまま話した。
「魚なんか俺たち素人が、すぐ取れるわけねえだろ。そもそも、この世界に釣り糸とかあるのか?」ツッコは不思議そうな顔をした。
「そ..それは、ハックにでも聞いてみようよ。毒ザルがあったなら何かあるはずだよ。まず見に行こうよ」ボッケは必死に説得する。
「私も久しぶりに魚食べたいな」「サカナ サカナ?」
アマリとドゥエンデの加勢もあり、まずハックの店に向かうことになった。
翌休日は晴天となり全員で洗濯をすると、気分よく雑貨屋に向かった。
毎回騒がしい市場近くの年季の入った店やって来ると、まだ朝方だったからか、お客はまばらだった。
「よお、ハックの爺さん。また来たぜ!」
ツッコは気軽に手を上げながら挨拶した。
「おお、お前さんは...ツ..ツッタコ君じゃったな。元気そうで何よりじゃ」
ハックは髭を触りながら微笑んだ。
「『タ』いらねえよ!なんだよ、その足つったタコみてえな名前はよ!ツッコだよ!爺さん。」ツッコは疲れた顔をしている。
「すまんのう、毎日来てくれれば忘れないんじゃがな。そんで今回はなんのようじゃ」ハックは楽しそうだ。
「あ〜っと今日は魚捕る道具あったら見せて欲しいんだけどよ」
ツッコは顎を手で触りながら質問した。
「おじいさん、釣り道具とか投網とか他にも魔法で簡単に取れるのとか、面白いのなんかないの」ボッケは前のめりで質問した。
「まぁまぁ、落ち着いてボ..ボッタクリ君。ちょっと探してみるから」
そういうとハックは探しに行こうとした。
「ぼったくりじゃないよ。ボッケだよ。おじいさん!でも面白いの持ってきてね」ボッケは憮然としながらも要求はしっかりした。ハックは笑って頷くと再び探しに行った。
「ツッタコとボッタクリ...」アマリは呟くと顔を伏せ肩を上下に揺らしていた。
しばらくするとハックが木箱を持ってくると机にヨイショと置いた。
「そうじゃな、まずは普通に、この釣竿じゃな」ハックは竹のよう素材の竿と釣り糸というには相当太い麻縄の先に針がついた物を差し出した。
「これなら銅貨200枚じゃから安いじゃろ。餌はその辺の虫とか芋虫でも捕まえてな。まあ中々腕がないと釣れんがな」ハックは机にそれを置くと、次は麻縄で編んだ網の先に重りがついたような投網と思われるものを取り出した。
「この投網なら銅貨800枚じゃな、初心者には難しいが漁師の上手い奴は取れるらしいんじゃがの」と言って投網も机に置いた。
「他は、まあ魔法とはいかんが、この小さい網罠みたいなのに餌を入れて水に沈めておけば、次の日には魚が取れるそうじゃぞ。こいつは銅貨500枚じゃな」
そして、竹のような素材で作ってあるカゴがのような網罠も机に置いた。
「じゃがな、残念ながら、この投網はお前さん達には売れんのじゃ。領主の許しを得た漁師だけが買えるもんじゃからの、あと漁師は、ほぼ世襲制での。じゃから、売るほどの量は取れない自分達だけで食べる分だけぐらいしか取れないこの竿か網罠になるが、それでいいのかのお」ハックはそう言って髭を撫でた。
「おい、どうすんだよ!儲けれるほど取れないらしいぞ。いらねえんじゃねえのか?」ツッコは二人に話しかけた。
「ツッコ!僕たちの生活に必要なものは美味しい食べ物だよ!魚が手に入るなら買おうよ!この網罠がいいよ楽で!」ボッケはいつもと違い真剣だ。
「私も楽に魚食べたいし、困った時は食べずにギルド持ってけば少しはお金になるよ多分」アマリも両手を握って真剣な表情だ。兄妹揃って食い意地が張っていて、楽が好きだなとツッコは苦笑いをした。
「この網罠って何個まで買えるんだ?」ツッコは網罠を見て質問する。
「まあ3人いるから2個までじゃ。網罠に魚が入る量は1個で大量の場合で20cmの大物が4匹入るらしいから2個で合計で8匹ぐらいは取れるんじゃないかの」ハックは網罠を前に出すとウィンクした。
「じゃあ、この網罠2つと、こうなりゃ竿も1本買っとくか」
ツッコのは2人を見て言った。
「それでいいよ!あぁ、久しぶりの魚だねぇ。塩焼きでも、お粥に入れても、どっちでも美味しそうだよね」ボッケは妄想が止まらない。
「川魚かあ、マスみたいのかな?うなぎもいたらどうしよう!」
アマリも妄想の海に沈んだ。
「よし!爺さん。網罠2つと、竿1本くれ!」
ツッコは迷いなくそう言うと銅貨1200枚を支払った。
「毎度あり。頑張ってな」ハックは満面の笑みでそういった。
ハックに礼を言い、人気のない場所でドゥエンデの収納にしまった。
「残りは銅貨1500枚か、まあ革の鎧なら買えるよなボッケ君」
ツッコはボッケの肩を掴み耳元で囁くと、
「じゃあフラムルのとこ行くか!」ボッケの返事も待たず宣言すると、さっさとフラムルの店に向かった。
「待ってよツッコもったいないよ、まだ早いよ...」
ボッケの文句は聞き入れられる事はなかった。
いつものようにガンガンこもった鈍い音を外に響かせる店の鉄製のドアを開きでかい呼び鈴が鳴ると、小柄なドワーフのフラムルがメガネを拭きながら奥のほうから出てきた。
「おお!ツッコか、元気か!俺の装備はバッチリだったろ」
フラムルはでかい声で迎えてくれた。
「もちろん最高だったぜ!今日はボッケの鎧探してんだ。安いのねえかな。銅貨1300枚まででさ」ツッコも笑顔で、でかい声で返した。
「そうだな、その値段だと革の鎧だな。お前らが以前買ったのと同じで銅貨1200枚だな」フラムルはボッケを見ながらそう言った。
「僕はこっちがいいなあ」ボッケもでかい声でプレートメイルを指差した。
「その体つきじゃ全然ダメだ!もっと鍛えろ!着たら、ほぼ動けねえぞ!あと価格も無理だしな!」フラムルはでかい声で言うと、ボッケの背中をバシバシ叩き笑っている。ボッケは困った顔のまま、その振動でガクガク揺れていた。
「フラムルには兜といい世話になってるからな、これは少ねえけど、そのお礼だ」
ツッコはそういうとフラムルに食用のキノコを渡した。
「おいおい、ありがとうな!俺はキノコの歯応えが好きでよ!いいつまみができたぜ」フラムルがそう言うと皆楽しそうに笑った。
フラムルの提案通り革の鎧を買う事になり、ボッケに微調整してもらった。渋るボッケを無視して銅貨1200枚を払い、お礼を言って店を出た。
「これで、お前も囮役ができるな、兜も盾も貸してやるから存分に囮役をやってくれ、何しろこれまで、ず〜っと俺だったからな、次は、お前からだよな」
そういうとツッコはボッケの肩を組むとニタリと笑うのだった。
「...もうわかったよ、次の囮役のときは僕がやるよ。でもせっかく網罠2つ買ったんだしさ、二人でどっちが多く取れるかそれで、決めない?久しぶりに賭けしてみようよ!そうだな、僕が負けたら2回連続するよ!」
ボッケの言葉に、ツッコのギャンブル好きな血が騒いでしまった。
「よし、てめぇ言ったなボッケ!確実に俺の方が取る!勝負だ、ボッケ!」
ツッコは指差し宣言した。アマリはもう先が見えていたのでドゥエンデと魚談義を始めた。
そして二人して街の川の引き込んでいる小川までいき、餌のミミズと芋虫を探し、よくわからないこだわりを発揮させ別々の場所に網罠を沈めると目印をつけ放置した。その様子をアマリは冷めた目で見ながらも、魚が取れると嬉しいので、応援はしていた。そして翌日見るとツッコには小さい魚1匹で、ボッケは大きいのが1匹入っていた。
「賭けには買ったけど。...大量の場合って言ってたもんね...」
ボッケは現実を噛み締めながら呟いた。
「賭けって、いつも思い通りいかねえんだよな..いつもいつも...疲れるのに..しかも少ねぇ」ツッコの呟きは小さかった。
「醜い争いだったねえ」「ミニクイ ミニクイ」アマリとドゥエンデは離れた場所で空を見ながらつぶやいた。




