続 市場での悲(喜)劇
翌日は7日に1度と決めた休日だった。朝はいつもの粥を全員で食べ、洗濯をした。午前は市場で3週間分の食料を買い出し、午後は街で外食することにした。これまでに稼いだ銅貨は合計1278枚あった。
この街で一番賑やかな市場は、お祭りの出店のような楽しさと美味しそうな匂いに満ちていて三人には刺激が強すぎた。
「今日の昼は出店の串焼きだね!..あのソーセージ挟んだの食べようよ」ボッケは出店の方に躊躇なく進む。
「待て!俺たちの稼ぎじゃ夕食だけだ。俺も食いたいのに我慢してるんだよ!」ツッコはボッケを捕まえる。
「あれ美味しそうだね〜ドゥエンデ」アマリはソーセージしか見えてないようだ。
「お前もかあ!ちょっと待て!」ツッコは空いている反対の腕でアマリも。捕まえる。
「なんだ、買ってかねえのか。うまいぞ〜!」日に焼けた店の親父がソーセージを持ち煽ってくる。
3人ともソーセージに釘付けのまま喉を鳴らし鼻息も荒い。親父も3人の狂気すら感じる目に若干たじろいでいる。
「くっそお!食いてぇ..だめだ!お前ら、まず食料買ってからだ。まだ朝食ったばっかだろ!」
ツッコは歯を食い縛りソーセージから目線を無理やり外し涙目の2人を引っ張りながら遠ざかっていった。
そして色々歩きやっと、以前、粥の食料を買ったハンナの所に着くと
「あれ、確かいつか沢山買ってくれたお兄さん達じゃない?また何か買ってってくれるのかい?」
「ハンナさんだったよな、今日もこの前と同じ押し麦と乾燥豆まず10キロづつ欲しいんだ」ツッコは以前の値切らず買い失敗した教訓から様子を見る。
「あるよ!押し麦は10キロで銅貨120枚、乾燥豆は10キロ100枚になるね」ハンナは以前と同じように袋を持ってくると袋の中を見せ笑っているが、目は笑っていない。
「そいつは高えな、60枚と50枚でいいだろ」ツッコは真剣な顔で当たり前のように言う。
「そんなんじゃ売れないねえ、儲けもないよ。115枚と95枚だね」ハンナは鼻で笑って言った。
ツッコとハンナの目が険悪さを帯びる。ボッケとアマリは興味がないので他を見ている。周りの平和な空間とは裏腹に2人は狭い世界で本気の商売で戦いあっていた。
「き、き綺麗なあんたに言うのは忍びないが、この前と同じでさ、人参と玉ねぎとじゃがいもに似たやつ五キロづつ追加もするしさ、100枚と80枚でいいんじゃねえか」ツッコは下手くそな笑顔で昨日の夜、考えた値切り作戦パート2「褒めてみよう」を緊張してないふりして試そうとしていたがモロに言葉に出ていた。
ハンナは爆笑すると「確かに値切った方がいいっていったけど..あんたそれじゃ無理だって!...まあ、面白かったから、105枚と85枚でいいわよ」
ツッコは笑われたことと、自分が言った事の恥ずかしさと無理という言葉に呆然としガックリしていた。
「ツッコすごいね、この前より15枚ずつ安くなったよ」いつの間にか隣にいたボッケは、そんなツッコを見て不思議そうだ。
「15枚ずつ安く?...それなら!安くなったし俺たちの勝ちだよな!」ツッコも気づくと、まあいいかと持ち直した。
結局以前買ったものとほぼ同じ粥の材料を、麦と豆以外もさらに値切って以前より40枚少ない銅貨240枚で買えた。
「じゃあ安くなった分で、さっきの買おうよ」ボッケは一貫してブレがなかった。
「てめえ、まだ諦めてなかったのか」ツッコは呆れ顔だ。
「ねぇ、ねぇ、私お腹減った」「ヘッタ ヘッタ」アマリとドゥエンデは戻ってくるなり、絶妙のタイミングで言ってくるのでツッコは眉間を押さえている指が震えていた。
そして、40枚安くなった分で2人に押し切られツッコは俺の苦労ってと思いながらも、久しぶりのソーセージには逆らえなかった。しかも食べた途端もう夢中で食べ美味かったとか、そんなこと思う前に何も無くなり、空っぽの手を見るだけの寂しさに3人は途方に暮れていた。店の親父は執念にも近いその食べ様に満足感を感じる自分が何か悔しかった。




