公衆浴場の悲(喜)劇
初めての西の森での結果は予定通り早めに切り上げ、薬草23本、毒消し草10本、ツノウサギ2匹、オオトカゲ2匹で銅貨227枚になった。後マーサが言い忘れていたオオヤスデの買取りは無く、とらなくて正解だった。しかも危険を感じると、気絶するほどの悪臭を放つので強い衝撃を与えないように言われた。そして、まだ時間があったので色々雑談した時にマーサに聞いていた公衆浴場に初めて行くことになった。
マーサの書いてくれた地図の場所は街の中心近くで引き込んだ小川も流れていた。かなり古そうな石造りの建物で「癒しの池」と入り口に彫刻されていた。料金は1人銅貨15枚の合計45枚の出費になった。仕事を早く切り上げ昼を大体2時間過ぎた時で、お客は余りいないようだった。入口兼休憩所でお金を払い、そこから男女の入り口に分かれていて脱衣所を抜けると風呂場になっていた。中もほぼ石で組んであり腐って壊れてるような心配はないようだ。敷いてる石は若干滑るが段差も少し付いていて汚れはどこかに流れていくようだ。浴槽は2つあり片方は水、もう片方はお湯で広さは10人入れるぐらいの大きさがあり、洗い場と休憩するスペースはかなり広かった。水風呂は川の水が掛け流しで、順番はまず、汚れを水で落としその後、体を洗って、風呂に入ったり水風呂に入ったりそれを繰り返すようだった。
風呂の熱気が漂い天井から時々水滴も落ちてくる、石造りの壁や床石には水苔がうっすらと生え、よく見れば修繕された後もあり、かなりの年季を感じる。
「風呂があるなんてな...」ツッコは感動していた。いつもは結界の家に帰り桶に水を入れ順番に洗ってるだけだった。入れない日も多く、痒い時もあったが慣れると痒さを感じなくなり余り入ってなくても良くなっていたのになと感慨深かった。
「さっき店の人に聞いてみたんだけど、魔石を使って奥であっためて循環さすんだって。そんで汚くなったら水抜いて洗ってまた循環させるんだって。年季入ってるけど、すごいねこれ!」ボッケは周りを見回し色々感心している。
周りは皆、同じように気が抜けようにぐったりとし「ヴェェ」「フゥウ」とか声にもならない音が響いていた。
「銭湯思い出すなあ..確かコーヒー牛乳とか冷えたの美味かったよな」久しぶりに体を洗ったツッコが湯に入りながら呟く。
「まあ、この世界も乳もあるし、氷も魔法であるけど。...それに飲み物屋も休憩のところにあったけど、お金がね...」ボッケも体を洗い湯に入りながら呟く。
「ゥヴゥェヘェ..まあ、まだ西の森で稼げるとわかっただけでも、いいじゃねえか」ツッコは湯に浸かり首を回すと、顔を洗い笑顔になった。
「クフゥゥ...そうだね今日もツッコはついてなかったよね。...アマリ大丈夫かな人見知りだけど」ボッケは少し心配そうに言ってるとツッコに頭を沈められていた。
その頃アマリはドゥエンデと、少ない人々から離れた隅っこで、お風呂を満喫していた。
「ドゥエンデってすごい綺麗なんだね」ドゥエンデの帽子を取った姿を見たアマリは思わず口に出た。
「キレイ キレイ」恥ずかしそうに首を振るドゥエンデだった。妖精と一緒にいるのを見て嫌そうな人もいたが、一人じゃなくなった事がアマリには心強かった。
「いつも言ってるけど、ドゥエンデ、いてくれて本当にありがとね」アマリは呟くと、一人で結界の家の部屋にいた時の寂しさを思い出していた。異世界にきてゲームもPCも無い何もすることのない孤独な状況に心が折れていた。しゃべることもない口を閉じた状態が長く続くと口が乾き開こうとしても繋がっていて中々開かない時もあり、それは異世界に行く前の1人の時と同じ虚しさだった。そんな時に現れた自分の作ったキャラクターが、寄り添い話し相手になってくれることが本当に嬉しくて少し涙が出ていた。
ドゥエンデはアマリのそばで嬉しそうに話を聞いていたのだが、途中からアマリのひたすら長い長湯にのぼせて朦朧とし途中から頷いてるだけだった。
結局、ツッコとボッケはアマリが出てくるまで心配しながら結構待つことになったのだった。




