守りの詩の再生の悲(喜)劇
囮役はツッコとボッケが、じゃんけんで決め、やっぱり運の悪いツッコに決まった。ツッコの体に合うよう、フラムルが少し調整してくれた革鎧は腰まで覆い、肩までしっかり守られていた。表面は硬く、鉄の鎧に比べるとずいぶん軽いので助かったが、ツッコの表情は暗かった。
「ツッコ、すごいかっこいいね!囮役よろしくね!」
ボッケは笑いを堪えるように言った。アマリは申し訳なさそうにしている。
「金貯まったら、すぐ、お前の鎧、買って交代制にするからな!」
ツッコは不満そうに言うとため息をついた。
「お前が、みんな守ってやれよ!」
フラムルは鎧一つしか買えない哀れな3人と盾役にされたツッコを孫を見るような目で見つめ、でかい声でツッコの背中を、ぶっ叩いて気合を入れさせると、一人で満足そうにうなずいた。
「ゥワッ!」ツッコはその勢いで前に押し出されたが、革鎧のおかげで、ほぼダメージを感じなかった。
「あんま痛くねえな..これならいけそうだな!」ツッコは両手で鎧を確認して悪くない顔をしている。
最初は、とっつきにくそうだったが、飾らない優しさのあるフラムルにお礼をいい店を出た。
いつものように薬草とツノウサギを探し歩いていると、色々な形の花が咲きだして、同じようで同じでない草原に気分ものほほんとした。フラムルが見ていたら後ろからハンマーで、どつかれているだろう。
「それじゃあ、ツノウサギを見つけたらアマリの録音した『守りの詩』の効果を確かめてみるぞ!確か1時間は効果あるんだよな」
「多分そうだと思う。あと1回しか再生できないよ。だから気をつけないと」アマリは少し不安そうに言った。
6本目の薬草をとった所で、ツノウサギを発見したが、2匹いたので安全の為やめることにした。その後15本目の薬草をとった時に離れた場所で単独で草を食べているツノウサギを見つけた。とりあえず、そこから離れた所に集まった。
「そんじゃあ、アマリ頼むぞ」ツッコは自分を指さして行った。
アマリは昨日、頭の中の脳内DTMで『守りの詩』をテクノ系のメロディに変換していた。
使い方は思考で起動すると、目の前の視界がデスクトップの背景のような感じで脳内DTMが現れ、思考で操作することができる。目を閉じた場合は背景は無く黒くなる。そして時々、結界の家で出して眺めていた仮装DJコントローラー(略:DJコン)を脳内DTMから呼び出した。
その瞬間アマリの腰の辺りに黒色だが周りが透けて見えるDJコンが少しずつ現れた。
「初めて再生してみるけど」そういうとアマリは木の仮面を被った。
「Ya! いくよ 再生DA!」アマリがDJコンを操作すると、ドゥエンデの周りの空間から『守りの詩』のテクノメロディが溢れ出した。アマリもドゥエンデも乗っている。
再生が終わると、ツッコは体に力が漲っていくのを感じる。
「はぁ、そんじゃあ防御力確かめるために行ってみるか、お前ら合図するかダメそうなら始めてくれよ」ツッコは嫌そうな顔をしてツノウサギに向かっていった。
ツノウサギはツッコが寄ってくるのに気づくと、突進してきた。
「お!動きが見える」ツッコはツノウサギの攻撃に木の盾を合わせると、いい音がしてツノウサギの攻撃を跳ね返した。
その後、何度か攻撃を受け流す。盾ごしの衝撃も大したことはなかった。
ツッコは少し楽しくなってしまい、しばらく避けるのを試しているとツノウサギが甲高い声で鳴いた。
「なんだ?こいつ鳴くのか?」ツッコは不思議に思っていると、ツノウサギが、さらに2匹現れた。
「なにぃいい!」ツッコが驚いている間にもツノウサギは突進してきた。
1匹は大丈夫だったが、流石に3匹になると、ツッコの鎧がない部分にも攻撃が当たり出した。
「ちょっと待てぇ...痛えって、痛え」
LVも3になり少しは体も丈夫になり、さらに『守りの詩』の効果があるとはいえ、攻撃されると殴られたぐらいのダメージがあり、逃げ回るツッコだった。
「もう合図、待ってられないね、攻撃するよ!」
ボッケは焦りながらアマリにいうとアマリは頷いた。
「「言葉の力を始めます」」ボッケとアマリが言う。
ツッコは息を切らしやっと逃げ切ったと思った所で、
「ツノウサギって詐欺募ってるの」
「ツノ ウサ 串焼き 美味しいよ 食べたい 金ない たまらない チェケラ!」ボッケとアマリのスキルが発動した。ツノウサギは転んで頭を打ち起き上がった所で、頭上に約25cmの石が現れ結構な勢いで頭に落ちると倒れて1匹は動かなくなった。しかし、追うのをやめていた他のツノウサギが怒りツッコを、さらに攻撃しだした。
ボッケとアマリは顔を見合わすと口を開けて一瞬固まった。
「またかああ!!ああもう!痛えって」ツッコは1匹はなんとか防御しながら逃げ回っている。
「ツッコ大丈夫?ちょっと待ってねって、次なんにしよ? あ」焦ったボッケが、また、しまったという顔をしている。ツッコはボッケを睨んだ鬼の形相のまま滑って頭を打つ所、ちょうどツノウサギがそこに走り込んできた結果ツッコの回転バック頭突きが「ノガゥ」とツッコ低い呻き声ともに決まり、ツノウサギは動かなくなった。残りのツノウサギはゆっくりと立ち上がるツッコの鬼の表情に恐れをなして逃げ出した。
ボッケは手で顔を押さえ、アマリはボッケの腹にエルボーをかまし、ドゥエンデはボッケの頭に噛み付いている。




