続 ピクシーの悲(喜)劇
「それじゃあ、戦う時の吟遊詩人のスキルを見せるよ」バルの手に持ったリュートから力強い旋律が流れる、
「僕は激情に身を任せ力を込め戦うだろう、何があっても、恐れはしない」
その言葉とリュートのメロディが響いた瞬間、バルの体に力が漲り、それまでどこか幼さの残る表情が一変し、目が大きく見開かれる。瞬きもせずにツノウサギを睨む眼差しは狂気すら感じさせた。
バルは、いつの間にか手に持っていた投石器を信じられないほどの速度で振り抜いた。ツッコ達がツノウサギを見ると先ほどいた場所より、かなり遠くに吹っ飛ばされていた。ぴくりとも動かないウサギの姿に言葉を失った。
「『言葉の力を終わります』、見てくれた『攻撃の詩』ってスキルなんだ。すごいでしょ」バルはいつもの無邪気な笑顔に戻ると胸を張った。
「あとリュートに乗せて歌うと少し効果が上がるんだ、けど低LVの吟遊詩人スキルでは使えないよ。それと大事なことだけどさ『守りの詩』と一緒には使えないんだ。反対のこと言ってるからね」バルは残念そうだ。
その後も場所を移動しバルとツノウサギ狩りを続行し5匹のツノウサギを倒した時だった、
遠くの森からガサガサと大きな音が聞こえてきた。
バルが警戒して目を凝らす。
木々の間から飛び出してきたのは、青っぽい色をしたイノシシだった。興奮し泡を口から吹き出し、こちらに向かって猛スピードで突進してくる。
「ゥビァァァアアアアア止まれぇえええ!!!」
イノシシの鼻の上に抱きついてる小さな何かが叫んでいる。それは、アマリが捨ててきたピクシーのプルだった。
「テメェらぁ!あたい様を捨ておいた罰じゃぁ!助けてくだらいぃ!」
プルはこちらに気づくと訳の分からないことを叫んでいる。どうやら、イノシシを怒らせてしまい、彼らに助けを求めているようだった。
「アオイノシシか、あのアホ碌でもないの連れてきたね。攻撃してくるから、君たちは後ろに下がってスキルで攻撃して」バルは囮役を買って前に出ると、アオイノシシの頭目掛け投石器を振り抜くと、オアイノシシの頭部に命中した。その衝撃でプルは「んげ!」と飛ばされた。
アオイノシシは少しよろけただけで、すぐバルに向かって突進きた。バルは、なんとか横に飛びギリギリで躱した。勢いよく10Mほど通り過ぎたアオイノシシはバルを睨み、さらに突進しようとしている。
静かな草原にアオイノシシの走る足音が響き草がちぎれ飛んだ。
「俺たちも攻撃するぞ、スキル開始だ!」「「「言葉の力を始めます」」」ツッコの号令でスキル開始した。
「えぇと、青い猪だけにブルっちゃうね」「お前のおかげて、いつも俺の気分はブルーだよ」ボッケとツッコは滞りなく言った。
「アオ イーノ 美味しそう 串カツ トンカツ お金はカツカツ アイッ(Aight)!」アマリは木の仮面をつけるとドゥエンデと共にリズムに乗った。「カッツ カッツ」ちゃっかりプルも近くで乗っている。
アオイノシシはLVが高いのか後ろに滑って腰を打ち、その後、後ろに滑って頭を打つと頭を振って立ち上がった。その瞬間、頭上に約20cmの石が現れ結構な勢いで頭に落ちた。しかし頭を振ると余りダメージはないようだ。
「アーハハ、バーカ!バカイノシシ!バカイノシシ!」プルは滑って転ぶ様子を見ると両手を叩き楽しんでいた。
「みんな、もっと攻撃続けて」バルは真剣な表情で言うと、イノシシを引きつけるように動き、さらに投石した。
投石は頭から若干ずれ体に当たった、しかし、そのおかげで突進もズレ、片腕に少しかする感じで避けることができた。突進の勢いで10M先に行ったアオイノシシが更にバルに向かって突進してくる。
「こいつ、すげーしつこいんだよ!」バルは心底嫌そうな顔をして逃げている。
バルの奮闘を見たボッケが感動している。それを横目で見たツッコは嫌な予感がした。
「ツッコ!」ボッケが喋りそうになるのをツッコが口を塞いで止める。「スキル解除」とツッコに睨まれ、アマリに腹をつねられボッケは涙目でスキル解除する。そんな地味な失敗に時間を取られながら
「だぁあ、早く攻撃してよぉおおお」バルは逃げ続けている。
バルの言葉にアマリは先にラップを始める。
「YO かますぜ! 実況するぜ!」
「アオ アオ アオ イ〜ノ 引かない 止まらない 可愛くない YO!」アマリとドゥエンデは体を動かしビートに乗っている。
「アオ アオ!追い回せ!鉄槌じゃあ!あははは!」プルはもうどっちでもいいらしく盛り上がっている。
そして、アオイノシシの頭上に再度、石が落ちるが突進の勢いが若干落ちただけで余りダメージはないようだった。
それを見たバルは追撃しアオイノシシの前足に石を当てた。すると若干疲れたのかアオイノシシは少し離れた場所で息を整えた。それを見据えたバルも、疲れたのか息を整えた。
その時、ボッケが再度スキル再開しスキルの準備が終わる。
「アオイノシシだけに煽ってくるね!」「お前が俺にいつもしてることだよな」ボッケはツッコから目を逸らしている。
アオイノシシの半径50cmぐらいの範囲の地面が足ごと5cmの厚さで凍りついた。そして驚いていたが力が強いので氷を割ると、その瞬間に後ろに滑った。
その時、足が砕けた氷に乗ってバランスが悪かった為、綺麗な回転をして立ったままの姿で頭を打った。
「氷で!氷で滑っるって!足もピーン!!あーははは!」プルは情緒がおかしいので、さらに爆笑している。
爆笑から少し経った瞬間だった。アオイノシシの周りが爆発すると共に鈍い音が響いた。アオイノシシは3Mぐらい上に飛ばされ叩きつけられ倒れていた。
ボーナススキルの発動に発動させた本人含む全員が少しポカンとしていた。
「まだ、油断しないで!」バルの言葉通り、アオイノシシは立ち上がるが、その瞬間バルの投石が、さっきと同じ前足にあたる。少しぐらついたが、まだバルに突進しようとしている。そしてアマリも次のラップの準備ができた。
「アオ イノ イノシン酸 旨味 仕込み いつも粥のみ! プッチョヘンザア!(Put your hands up!)」余りは手を挙げた。
バルとアオイノシシの距離が5Mに縮まっていた時だった。アオイノシシの全身が2cmの厚さで凍りついた。
「イノ! イノ! イノ!」ドゥエンデもプルも手を上げ、まだ盛り上がっていた。バルも「いつも粥のみ」で吹き出してた。
そしてアオイノシシは移動の勢いで転倒し覆っていた氷が砕け散った。その瞬間、上空に丸い暗闇の空間が開き、凄まじい音と共に稲妻がアオイノシシに落ちた。その上電撃が残り1秒ぐらい感電するとアオイノシシは動かなくなった。
「はぁああああ!」「何これぇええええ」「すごいいいいい!」「うそぉおおおおお!」アマリのボーナススキル発動に全員が驚いた。
その後バルが近寄り倒したことを確認すると座り込んでしまった。3人が心配して近寄ると
「もう大丈夫だよ。けどプルって言ったけ?ここまでしたら君はギルドでお仕置きだね」バルは疲れた顔で言った。
「ボッケ以上のトラブルメーカーとは、すげえなこいつ」ツッコは眉間に皺を寄せプルを見ている。
「僕はいつでも、まともな意見しか言ってないよ。まあ酔っ払った時の失敗はツッコもあるじゃん」ボッケはツッコを見て笑った。
「うるせえ、お前もあるだろ!こんな奴と一緒にすんな」ツッコは恥ずかしそうに言った。
「酔っ払いって、悲しい存在だね」アマリの言葉に男性3人は、なんとも言えない表情になった。
「ワタイが本気を出せばこんなもんじゃあ!チャンポーンじゃぁあ!」プルは何も考えてなかった。




