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Marshmallow Days -とびきり甘い恋なんて吐き気がすると言ってた俺の初恋-

作者: きむこう
掲載日:2025/10/13


「とびっきりあまい恋愛なんて吐き気がする」


そんな事をほざいていたこないだまでの自分を、キンキンに凍ったカジキマグロでぶん殴ってやりたい。


俺の名前は黒澤ジン、今年で23歳。

地元である群馬県でWEBクリエイターをしている。

まあ、どこにでもいる普通の男だ。


そんな俺の目の前には彼女がいる。

彼女とは俺の彼女である。

お付き合いしている人という意味での彼女だ。


俺の住んでいる築20年くらいのペット可のアパート、玄関からすぐのキッチンに置いたダイニングテーブル。


そこを陣取る彼女は、手に持った雑誌を眺めつつ、淹れたてのコーヒーを口に運んだ。


彼女の名前は白石真白。


名前の通り、マシマロのように色白で、ちんまりと可愛らしい大人しそうな雰囲気の女の子だ。


「これ見てよジン。草◯ダムのすぐそばに、激ヤバの心霊スポットがあるんだって!行こう!そんで祟られよう!あんただけ!」


見た目はね。


「聞いてんの、バカ?意味わかんないの、バカ?ねえ、バカ?」


俺は猛毒を吐き散らかす真白を今日も可愛いなあと思いつつ、冷蔵庫の中から牛乳を取り出してコーヒーに注いだ。


「聞いてるよ、でもそこに行くのは反対だな」

「なんでよ、どうして?理由を言って!"怖い"以外の二文字で!はい!」


「遠い」

と、間髪入れず答えた。


「キチンと二文字で収めたぁ!このぉ、ジンのくせにぃ」


そう言って真白は、俺の喉仏に水平チョップをかまして来た。


「ぐはっ、ヤバい真白、これダメなヤツ」

「だいじょぶだよ、ジンにしかやらないもん」

俺は喉仏の先端に直撃した痛みに膝から崩れかけたが、真白のその一言で起死回生。


「え?俺だけ?特別扱いって事?」

いかん、心がドキドキときめいてしまう。真白といるといつもだけど。


「うん、そうそう、それよりさっきの続き。草◯ダムの近くにある化トン!行くよ化トン!」


真白の言う化トンとは、いわゆるお化けトンネルの事である。


俺達の地元、群馬県には結構その手の曰く付きスポットがかなりの数あり、これまでにも何度か真白に付き合わされて出向いた事がある。


「楽しみだなあ、どんな祟りがジンを待ってるんだろウキウキ、ワクワクしちゃう」

嬉々として俺の災難を願う殺戮エンジェルに、俺はため息混じりに尋ねる。


「一応聞くけど、それって拒否権あるの?」

「ある。けど……」

「けど?」

「ジンの事、ちょっとだけ嫌いになる」


こうして俺は一も二もなく真白を車の助手席に乗せ、そのお化けトンネルに向かう事にした。


ちょっとであろうとなんだろうと、真白に嫌われるなんて死んだ方がマシだからだ。

「こうなりゃ祟りどんとこい!真正面から受けてたってやる」


強がるだけ強がり、俺達はアパートの駐車場に留めてあるタントに乗り込んだ。真白の要望で選んだ薄ピンク色のボディが、俺の抱える恐怖をほんの少し癒してくれる。


すっかり日の落ちた夜の世界に繰り出す俺達。心なしかいつもより、雲行きがダークネスな気がする……


まだ、お風呂掃除とか、洗濯物畳んだりとか、愛猫二匹に餌を上げたりとか、色々やりたかったんだけどなあ……


後悔はあるがそれはさて置き、車は俺達が住んでいる桐⚪︎市から草⚪︎ダムへとグネグネとカーブだらけの道路を真っ直ぐに進んで行く。


真白はここに来る途中で休憩したはね⚪︎き橋の辺りから、ずっと窓の外を眺めて黙ったきりだ。

もしかして車酔いか?心配だ。


カーブ連続地帯を抜けて、そこから先に20分ほど行った頃に見えて来た草⚪︎ドライブインの看板。


そして……


本日のメインイベントこと、心霊スポット"お化けトンネル"が待ち構えていた。


「ここか」


俺は、ハザードランプを点灯し、トンネルまで数メートルの路肩に車を寄せた。

外に出てみると、不穏な気配と張り詰めた緊張感を肌で強烈に感じた。


今日は202⚪︎年4月1日。暦の上では一応春だ。

まだ多少夜は肌寒い。


しかし、このトンネルからは身の毛もよだつ様な震える寒さが噴き出している。


「なんか……とんでもなく寒いなここ、大丈夫か真白?」

助手席のドアを開いて真白が降りて来る。


「うあぁぁぁ」


あら?大丈夫じゃなくない?

おどろおどろしい声とゾンビみたいなフラフラした動き。

完全に取り憑かれてますよねこれ?


ヤバい、それでも真白は可愛い。


「まさか、車から降りた途端に取り憑かれたのか?くっ、なんて恐ろしい心霊スポットなんだ」

「違う、ここに来る前に通った別の心霊スポットの橋からだぁ」

教えてくれた⁉︎ってか、ここじゃないの?

あれか?トイレ休憩で寄ったはねたき橋。そう言えばあそこも中々の所だって聞いたことある。


いやあ、確かに真白ずっと黙ってるなあって思っていたけど、霊に取り憑かれてたなんて全然気が付かなかった!

だって、いつも俺に対してつれないから……


「そんな事はどうでもいい!とにかく除霊だ、除霊……ってどうやるんだ?」


「あたしの無念を晴らせぇぇぇ」


またもや教えてくれた。なんて親切な霊なんだ!ありがとう!


「無念てなんですか?俺に出来ることなら何でも言ってください!」


「じゃあ、キスして」


おどろおどろしかった口調が、急に真逆の可愛らしく恥じらった乙女に変わり、しかもそれが真白の声で発せられた。

しかも唇をこちらに突き出している……だと?


「ぐあ、逃げろ、逃げてくれぇぇ」

「え?何?なんで急に自分の右手をキツく握って……血が、血が出まくってる!」

俺は今にも暴走しそうな自分を押さえ込みながら言った。


「ダメだ、真白の声でそんなパワーワードを言ったら……キスしてなんて真白から聞きたいセリフNO'1を言われたりしたら……しかもそんな可愛い顔で!お、俺の理性があっ、あああぁぁぁ」


千切れる寸前の俺の理性、すでに語彙力が崩壊し始めている。


「素敵です!」

突如真白に取り憑いた霊が、目にうっすらと涙を浮かべそう言った。


「なんて真っ直ぐな愛なんでしょう。わたしってば今猛烈に感動しちゃってます」


くっ、泣き顔可愛い


「……実はわたしって恋愛経験ないまま自殺しちゃった女子高生の霊なんですけど、その恋愛が出来なかったって事が未練になって、あの世に行けなくなっちゃって困ってたんです」


なんと、そんな悲しい事実があったのか!それからどうなったの?


「それから暫くは浮遊霊?なんとなくはねたき橋の辺りをふらふらしてたんですけど、ある日ある時あの場所で、なんか急に閃いたんですよぉ。そうだ!誰かに取り憑いて、少しでもいいから恋愛気分を味わえたら成仏できるんじゃね?って」


なるほど、確かにそれは正しい判断かもしれない。いつまでもふらふらしてたら世間体も良くないしな。


「それで思い立ったが吉日って、やるっきゃないっしょ!って息巻いてたら、あの橋のドライブインにすっごく可愛い女の子……あっ、この身体の方がですね、橋から見えて、あの、なんと言うか……一目惚れって言うんですか?ついつい取り憑いちゃったんですよ」


なるほど、わかるよ。真白は可愛いからな。


「それで、この方の彼氏さんである貴方にキスしてもらえば満足して成仏できるかなって思うんです!……お願いできますか?」


そう言った霊によって、真白の艶っぽい唇がこちらに向かって突き出される。


しかし


俺は残り少ない意識で右手を前に突き出す。


「す、すまない、真白とキスなんてしたい!だが、できない!」


「なんでです?貴方この女の子が好きなんですよね?違うんですか?」


バカやろう、好きとかそう言う問題じゃない!


「君が取り憑いている真白は真白じゃない……から、俺は真白が真白だから好きなんだ!」


霊の取り憑いた真白の身体が震え始めた。また感動してくれたのだろうか?


「ぶっ殺す」

えっ?あれ?なんで?

さっきとは打って変わり、とんでもない負のオーラをバリバリに放ちまくっている霊に取り憑かれた真白。


「可哀想なあたしのお願いを聞くどころか、なに堂々と超弩級のお惚気叫んでくれやがってんのよ!ガッツリ妬ましいんですけど」


どうやら、彼女は俺のさっきの宣言によって悪霊になってしまったらしい。


くっ、女心は難しい。こうなったら!


俺は地面に両手をつき、頭を叩きつけた。


「わっ、なに?」

急な俺のドゲザに驚いた声を上げる悪霊、くっ声は可愛い。


「妬ましい気持ちにさせてすまない」

誠心誠意、謝る事。それが今の俺にできる最善の方法だ。


「俺は君を成仏させる力は持ってないし、さっき言った様に、君に取り憑かれた状態の真白とキスする事もできない」


不甲斐ない俺を許してくれと言う気持ちを込めて、頭を更に地面にめり込ませながら続ける。


「ただ、嘘はつかない!君の無念を晴らす方法を一緒に探そう、必ず見つけ出して見せる。だから、だから真白を、俺の大事な人を返してくれ」


その言葉で沈黙していた悪霊が口を開いた。


「……もう、いいや」


ふっと、真白の声が聞こえて俺は顔を上げる。


「えっ?」


そこに被せる様にして、真白の唇が俺の唇に触れた。

マシュマロのようにやわくてあわい、とろけてしまいそうなくちづけ。


「ジンのニブちん」

ほっぺを真っ赤に染めて微笑む真白。


「今日は何の日だ?」

「今日?えっと4月1日……あれ?」


エイプリル・フール


え?て事は、え?さっきまでのは……


「うん、全部うそ、お芝居だよお芝居。ジンのバーカ、簡単に騙されてやんの」

ケラケラ笑う真白。


俺はあっけに取られるも、安堵からか糸が切れたように力が抜け、膝が崩れる。


「え?なに?どしたのジン」


「……なんだ、そっか、良かったぁ」

「なにが?」


「じゃあ、成仏できなくて困ってる女の子の霊はいなかったんだな。良かった。本当に良かった」


俺のその言葉を聞いた真白が、ハッとした顔をした後に俯いてしまった。


どうしたんだろう?


「ジン……そゆとこだよ」


上目遣いの真白がボソッと小声で呟く。

そゆとこ?なんの事だかよくわからない。


「そう言うとこって、どこ?」


「あたしが、ジンの好きなとこ」


「がふっ」


不意をつかれたその言葉は、俺の命の鼓動を止めるのに十分すぎる一言だった。意識を失い直立不動で倒れる俺。


「ちょっと、待ってよジン、死ぬなバカ、ぶっ殺すぞ!」


急に生命活動を停止した俺を、懸命にゆすって、ビンタして、殴りまくって、蹴りまくってくれた真白。


「かひゅ……」

「ジン⁉︎」


ありがとう。

その痛みのおかげで、俺は三途の川から帰って来れた。


強烈無比なミドルキックで肋骨にヒビが入ったのも良い記念だ。


「あ、痛たたた」


ポキポキの肋骨を庇って立ち上がる俺。

目の前に差し出された真白の手。


「ほら、行くよ。帰りにおうどん食べてこ」


そう言ってちょっとバツが悪そうに照れながら微笑む彼女。


彼女の手を取り考える。

ああ、きっと、俺の真白に対するこの気持ちを表現する言葉は、おそらくこの世に存在しないのだろう。


「あ、ジンのおうどん当たりじゃん!エビの天ぷら入ってる!死ね」

「うぐっ、真白さん、あげるから、だから頸動脈締めんのやめ……て」


帰りに俺たちはテレビにも出た事のある、有名な自動販売機のおうどんをいただいて帰った。


なんとか無事に。


それにしても、あそこから帰って来た翌日からなんとなく肩が重い。


肩こりだろうか?


それに時々女の子の声が聞こえたりもする。


幻聴だと思うが、真白に言ったら嫉妬してくれるだろうか?


……うん、しないな絶対。


おしまい




〜BONUS TRACK〜


-この小説から漫画を作るなら!-


この小説は漫画原作を想定して書いてみました。


きむこうは普段、奥さんと同人漫画を作ってるのですが、その時にプロットのようなものを作ります。


何かの参考になればと思いますので書いておきますので、興味のある方は是非ご覧ください。


数字はページ番号、⭐︎はめくりのページです。


⭐︎0 表紙

 1 主人公、黒澤ジン登場

⭐︎2 ヒロイン、白石真白登場

 3 思い付いたように心霊スポットに行きたいと真白

⭐︎4 拒否権を問うも嫌いになると言われるジン

 5 バタンと車に乗り込み出発

⭐︎6 途中ではねたき橋に寄って、道路を走り

 7 目的のトンネルへ到着

⭐︎8 降りてくる真白

 9 取り憑かれていた真白。

⭐︎10 おどろくジン、いつから?橋からと教える霊

 11 除霊しないと、どうやって?

⭐︎12 あたしの無念を晴らせとまた教える霊

 13 自分がどうして死んだか語る霊

⭐︎14 同上

 15 キスして成仏させてという。

⭐︎16 無理だと断るジン

 17 理由を説明。きみは真白じゃないから!

⭐︎18 震える霊。感動したのかな?とジン

 19 ぶっ殺すと怨霊化

⭐︎20 イチャつくんじゃねえと霊

 21 土下座するジン

⭐︎22 真白を返してくださいと懇願

 23 溜息ついて、もういいか

⭐︎24 ネタばらし。今日は何の日?

 25 エイプリルフールか!

⭐︎26 膝から落ちるジン。驚く真白

 27 成仏できない霊はいない事に安堵するジン

⭐︎28 真白が屈んでジンにキス

 29 そういうトコだよジン。なにが?

⭐︎30 あたしがジンの好きなトコ


と、これで31ページ分の漫画原作のシナプスが完成です。


ちなみにタイトルはミスチルの名曲marshmallow dayからです。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

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