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友人って何?


道すがら隼に抱きしめられた感触が、まだ遥を包んでいる。

横には当たり前のように隼が歩いていた。

ちらりと横を見ると、ガムを噛みながら視線をきょろきょろとさせている隼の姿を認める。

その顔がぱっと遥の方を見た。驚いて視線を踊らせる遥を知ってか知らずか、隼は言葉を発した。

「こっち?」

指を指しながら問われる。

一瞬考えた後、周りを見渡すと家への道の途中だった。

どうやら遥の家への道を聞いているらしい。其処は何時も右に曲がる角だった。

隼の指は左を指している。

「あ、逆・・・」

です、という言葉を飲み込む。それに気付いた隼は小さく笑った。

「右な。了解」

笑いの含んだ返事をし右に曲がった隼に急いで付いて行く。

そのまま、何を話すでもなく歩く自分達に遥は疑問に思った。

これは、家まで送ってくれるのだろうか?

でも、なんでだろう、と思う。何故に自分はこんな風に送ってもらっているのか解らない。

友人、とはそういうものなのか?と漠然と思う。友人、と呼べる人間をあまり作れない遥は初めての体験に、何故だか嬉しさを覚えた。

そうこうしているうちに最後の角に辿り着いた。

ここを左に曲がれば直ぐに自宅だ。そうしたら隼は帰ってしまい、自分は又1人になってしまう。

そんな思いがいつの間にか恐怖へと変わり遥を襲った。

そうして、そんな思いが遥の手を動かしていた。何時の間にか隼の制服の裾を掴む。

「ん?なに?」

くいっと引っ張られる感触に振り向いた隼は、遥の手を認めやっぱり苦笑した。

「次はどっち?」

そのまま言葉を発したけれど遥は答えない。

「結城?教えてくれないと帰れないだろ?」

諭すような言葉に遥は何も言えず、掴んでいた隼の制服を離した。

その手を自分の横に降ろす瞬間、何かに掴まれる。それが隼の手だと解り、遥は赤面した。

「道を聞いてるだけだ。・・・別に離さなくてもいいぞ」

そっぽを向いている隼の耳も赤みを帯びているようで遥は余計に顔が熱くなるのを感じた。

「うん・・・。次の角を左・・・」

隼を見ない様に答えると、握られている手はそのままに歩き出す。そのまま角を曲がると、遥の家が見えた。

「あ、あの緑の屋根の家が・・・うちです・・・」

握られている手に意識が集まり敬語になってしまう。しかし隼はそれを指摘する事はなかった。

「そうなんだ。・・・そっか、もう着いちまったか」

とっても残念そうな隼の声。

瞬間、遥は口を開いていた。

「寄って行きますか?」

やっぱり敬語になってしまう。じっと遥を見つめる隼の瞳があった。

「・・・それ、意味わかってる?」

真剣な隼の瞳に、遥は答えられない。数秒の間見つめあっていた2人だったが、先に視線を外したのは隼だった。ついでに握られていた手も離される。

「解ってねぇ、よな・・・」

自嘲気味な笑いと共に瞳が曇り、発せられた言葉に遥は何故だかびくりとした。

その瞬間隼の瞳が何時ものそれに変わる。

「いや、今日は帰るよ。結城、又明日な」

くるりと踵を返し右手を軽く上げると、隼は歩き出してしまった。

何かまずっただろうか。自分は、又上手く伝える事が出来なかったらしい。

遠ざかる背中を見詰めながら、遥は自分の胸がチクチクと痛むのを弄んでいた。




隼への印象、その3

――――――――― 難しい事を言う人・・・


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