告白
この作品はボーイズラブ要素が含まれています。
苦手な方、ご理解いただけない方はご遠慮ください。
「・・・ごめん、迷惑、だったよな」
そう言い、置いていたヘルメットを手にその場を後にする。
遠ざかる背中に言葉を掛けられない。
涙が頬を伝い視界を歪ませた。
背部では彼が息を飲んでいるのが解る。
バッと振り返り言葉を投げかけた―――――――――――――――。
なんでこんな事になってしまったのか・・・。
文面が打ち込まれた携帯を眺める。
その携帯をふせたり、見たりとし美少年はちょうど1週間前の出来事を思い出していた。
結城 遙と相良 朝霧はお隣さん…所謂幼なじみの関係で、幼少から、それは仲が良かった。
身体が小さく、学校を休みがちだった遙にとっては朝霧は唯一無二の親友である。
そんな2人が無事に同じ男子高校に入学したのだ。
身体が弱かった遙も成長するにつれ、休む亊も無くなり、貧相だった容姿はまるで絵本の中から飛び出してきたかのような美少年へと変化していた。
対して朝霧は元気一杯で、風邪1つひかない丈夫な身体を生かし、スポーツ全般を得意とし、浅黒い肌、切れ長の目、こちらも何処かの雑誌から飛び出したモデルのような容姿へと成長していた。
入学早々、朝霧は運動部からの熱烈なラブコールに忙しい毎日。
遙はそんな朝霧に置いてきぼりをくったような気持ちになり、寂しい毎日を送っていた。
入学式からちょうど一月後のある日、今日こそは一緒に帰れるかもと思い朝霧のクラスに顔を出した遙に、しかし朝霧は
「あ~…ごめん。今日も先輩に呼び出されてんだ。何時になるか解んないから遙先帰ってて」
そう言われてしまえば頷くしかない。
なんとか笑顔を保ち、わかった、と告げた遙だったがその小さな胸はある意味限界を迎えていたのかもしれない。
大人しい性格にその容姿が災いし、今だ友人と呼べる人間がいなかった遙は、1人寂しく家路へついたのだった。
――――朝霧は僕といるより、他の人といたほうが良いのかな…
遙には思い当たる節があった。
社交的で人気者の朝霧。いつも彼の回りには人が集まり賑やかだ。
そんな彼がお隣さんというだけで身体の弱い遙のお守りをしてきたのだ。
もう、16なのだ。
僕のお守りはこりごりだよね…。
遙はその日密かに、『朝霧立ち』を決心したのだった。
通学も何時もは2人で、だったけれどあの日から遥は1人で通学した。同じ時間では朝霧とかち合ってしまう為、30分も早くに家を出る。
学校に着き、まだ誰もいない教室にいるのはとても寂しかったけれど決心した遥は我慢した。
朝霧に理由を尋ねられたけれど説明なんてできるわけもない。
あっと言う間に2人の心には大きな隔てりが出来、遥は1人になった。
そんなある日だった。
同じクラスの花月 隼が遥に声を掛けたのは・・・。
少し長めの髪は薄い茶色。意思の強そうな瞳に見詰められると、心臓が意味もなく鼓動を速める。
クラスで1、2を争う格好良さで、秘かに憧れている人は少なくなかった。
ろくに言葉も交わした事のない彼が、何故自分に話掛けてきたのか考えあぐねながら遥は返事をする。
相変わらず友人らしき者を作れないでいた遥に隼は
「結城、だったよな?」
そんな言葉に驚きながらも遥は笑顔で答えた。
「はい、そうですが」
遥の言葉に隼は笑顔を浮かべる。
「最近、ずっと1人だね。“彼氏”の・・・なんていったかな?」
“彼氏”とは朝霧の事をさしているのだろか・・・。
遥の顔から笑顔が消える。
「相良・・・だったっけ?あいつと最近一緒にいないけど、喧嘩でもした?」
隼の言っている意味が浸透するまで、少し時間が掛った。意味を理解し急いで首を振る。
「朝霧は“彼氏”なんかじゃない!」
何時もよりは大きな声で反論すると、隼は心底驚いた顔をした。
「え?!・・・そうなの?てっきりそうだと・・・」
まさか、自分と朝霧がそんな風に見られていたなんて思いもしなかった遥は困惑する。
言葉を濁し、何かを思案している隼に遥は首を傾げた。
「・・・じゃあ、俺と付き合ってよ」
急に笑顔になった隼は、そんな事を言ったのだ。
「・・・え?」
当たり前の遥の反応。しかしそんな事はお構いなしに話続ける。
「俺、入学式の時から結城の事気になってたんだよね。でも何時も一緒にいるあいつが睨み効かせてたから、話掛ける事もできなくてさぁ」
睨み・・・?
何故に朝霧がそんな事をしているのか皆目見当がつかない遥はまたしても首を傾げた。
「とにかく、今すぐ“恋人”ってなふうじゃなくていいからさ。・・・そうだな、まずは友達って事でどう?」
そんな提案をした隼に、遥は一瞬考え頷いていた――――――――――――――――。
隼への印象、その1。
――――――――― 不思議な人・・・