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〜記憶〜

寝ると必ずと言っていいほど前世の記憶が蘇ってくる。あの頃の、汚れた記憶が。思い出したくもない、あの記憶と事件を。


「ねぇお父さん、なんで僕はこんなことしなきゃいけないの?」

「あ"ぁ"!?黙って覚えろ。なんでかなんて考えてたら覚えられるもんも覚えらんねぇ。」

「…わかったよ。」

お父さんは、いつも目の前の人を殺していた。そして、僕にもその技術を覚えるように強要する。いつか絶対役に立つ時がくるから、って。「ナイフなら首を掻っ切れ」、「銃で撃つなら心臓じゃなく眉間」、とか。でも僕は、それが嫌い。なんで僕が殺人の方法なんて覚えなきゃいけないんだろう。


「ねぇお母さん、なんでお父さんはいつも僕に殺人を教えようとするの?」

「それは…私でも教えられないの。ごめんなさいね。」

お母さんは優しい。それでも、これだけは教えてくれない。


小学校から帰ったら、そこにはお父さんとお母さんの死体が転がってた。信じたくなかった。死体はいつも見ているのに、なんだか、いつもの死体じゃないみたい。

「お母さん…お父さん…」

お父さん達を殺した奴は、僕が殺す。お父さんが教えてくれた方法で。子供なりに調べた。お父さん達を殺したのはマフィアっていう危ない人達。ならその人達を殺せばいい。ごく簡単なこと。お父さんの部屋を調べたらすぐ出てきた。

「お父さん、すごい。自分が殺されることがわかってたみたい」

ナイフと一緒に、マフィアの居場所の地図が置かれてた。そのナイフを片手にアジトに乗り込んだ。

「な、なんだこのガキ!」

マフィアって人達は想像以上に弱かった。

「お父さんとお母さんを殺したの、誰?」

「あ、あぁ、それなら、アイツが!」

「ありがとう」

そういって、僕は壁を蹴ってこの人の首を掻っ切った。指差されてた人の首も掻っ切った。後ろから襲ってきた奴の首も掻っ切った。

「おや坊や、どうしたんだい」

「僕はお父さんとお母さんを殺した奴を探してるの」

「なら、こっちへついてきなさい」

僕は迷わずついていった。この人から殺意は感じなかったから。

「ほら、あの人が殺した人だよ」

この人の真意は知らない。別に知らなくていい。

「ありがとう」

そういって、僕は親切な人の首を掻っ切った。

「ねぇ、お兄さんは僕のお父さんとお母さん殺した?」

「あぁ、殺したよ。彼らは私達の計画の邪魔をしたからね。…君、私の傘下に入らないか?」

「入るわけない。じゃあ…。」

僕は、その人の首を掻っ切った。全員の首を掻っ切った。

「お父さん、お母さん、仇は討ったよ。」


その後、なにか一言いったような気がするのだが、それだけが思い出せない。その後俺は普通の家に引き取られ、それからは何もなく暮らした。今でもお父さん達との記憶は何一つ忘れることのない大切な思い出。でも、一つだけ忘れたくても忘れられない感覚があった。…殺人の感覚。人の首を掻っ切った時の感覚が忘れられなくて。当時は恨みでいっぱいだったからなんにも感じなかった。ただ…数年経つと、あの時の感覚がフラッシュバックして吐きそうになる。あれだけ嫌っていた人殺しの技術を実際に使い、何人も殺した。その事から目を逸したくて。俺が前世でゲームを馬鹿みたいにやっていたのは少しでもリアルの殺人の感覚を忘れる為。本当に馬鹿みたいな話。この時の夢を見る度に思い出す。あの時の恨みと殺人の感覚を。でも、その全てを背負って俺は生きる。この人殺しの技術を、復讐ではなく、誰かを…大切な誰かを守る為に使うなら。俺は何度だって使う。大嫌いな技を。今の俺にはまだ、これしかないから。魔法が上手く使えるようになったら、その時は…。

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