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騎士団⑤


「くっ……!」

 王子アレクシスは息を荒げながら、周囲を見渡した。


 状況は最悪だった。

 騎士団長の一撃をかわしたものの、周囲の騎士たちに完全に囲まれ、もう後がなかった。

 どれだけ剣を振るおうと、この数の前ではいずれ押しつぶされる。

 このまま戦い続ければ、いずれ力尽きる。


 戦い続けるのではなく、生き延びる道を選ばなければならない――。

 そして、サーディスの視線の先にあったのは――窓。

 唯一、砦の外へと繋がる道だった。


 決断は、一瞬だった。


 「……シス様、少し失礼します」


 王子が何かを言う間もなかった。


 「なに――ッ!?」


 サーディスは王子の身体を強引に抱え上げ、全力で窓へと跳躍した。

 砦の五階の窓。それを覆っていた布を突き抜ける。


 次の瞬間――


 二人は、外の空間へと放り出された。

 砦の五階。

 この高さから落ちれば、ただでは済まない。


 王子は息を呑んだ。


 (サーディス――!)


 ――ズドンッ!!


 王子の身体が何かにぶつかる衝撃。

 その瞬間、嫌な音が響いた。


 "バキッ"


 王子は思わず目を見開く。


 ――それは、サーディスの左腕が地面に叩きつけられた音だった。


 サーディスは自らの左腕をクッションにし、王子の落下を受け止めたのだ。


 「……ッ!!」


 サーディスの顔が歪む。

 だが、彼女はすぐに立ち上がった。


 明らかに腕が異常な角度になっている。

 普通なら、そのまま動けるはずがない痛みのはずだった。

 だが、彼女は耐えた。


 「サーディス! 腕が――」


 王子の声に、サーディスは即座に遮るように言った。


 「大丈夫です、今はそれどころではありません!」


 声に迷いはない。

 その言葉が嘘であることは、王子にも分かっていた。


 だが、今は生き延びることが最優先だった。

 サーディスは痛みを押し殺し、王子を引き起こす。


 窓の外へ飛び出した彼らを、騎士たちはまだ完全に追いきれていなかった。


 「今です!」


 サーディスは王子の手を引き、駆け出した。


 まだ混乱している騎士たちの隙を突き、砦の外へと走り出す――!


「逃がすな、追え!!」


 砦の上から、カイルの怒号が響く。

 その瞬間、砦の門が開き、十数人の騎士たちが駆け出した。

 彼らはすぐに二人を追い詰めようとする。


(このままでは、すぐに捕まる……!)


 サーディスは状況を冷静に見極める。

 そして、視線の先に"あるもの"を見つけた。


 馬。


 逃げるには、馬を奪うしかない。


 サーディスは剣を構え、最も近くにいた騎士の首元へ切り込んだ。


 —――スパァン!!


 騎士の身体が地面に転がる。

 その隙に、サーディスは馬の手綱を掴んだ。


「シス様、乗ってください!」


 王子は躊躇うことなく馬に飛び乗る。

 サーディスもまた、その後ろに飛び乗った。


「行きます!!」


 馬の腹を蹴ると、二人を乗せた馬は一気に駆け出した。

 砦からの脱出成功——騎士団の追撃を振り切る


「逃がすな!!」


 背後から追跡の気配が迫る。

 だが、サーディスの操る馬は疾風のように駆け抜け、砦の外へと抜け出していく。


 やがて、朝焼けに溶け込むように、二人の姿は砦の視界から消えていった——。


 王国騎士団の砦。

 そこでの死地を、王子とサーディスは"生還"したのだった。



ここまで見てくれてありがとうございます!

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