8.終幕
8.終幕
一週間が過ぎても、僕はまともな感覚を取り戻せていなかった。食事は喉を通るが、美味しさ、なんてものは感じないし、喜びも悲しみも嘘のように消えていた。定期的に僕を襲う頭痛や吐き気は処方された薬では対処できなさそうだ。これが自殺の原因なのか。旅人が旅を語るように、服用してみてわかる辛さがある。この世には胡散臭く思えても、経験してみて分かることもあるのだと改めて気付かされた。全てを克服するまでは、まだそれなりの時間を要しそうだ。もう少し考えておけば、なんてことを考える始末だ。何をしても満たされない現実へ戻ってきてしまったのだ。何年も続けてきたいわゆる規則正しい生活なんてものは簡単に捨てることができたが、あの時に勝る感覚はやはりあの病院に置いてきてしまったようだ。それが、年齢を誤魔化そうと、厚化粧を顔に施した女医のくだらないセラピーのせいではないことなんてとっくに分かりきっていた。
あの病院で、もし彼女を見つけていなければ、今より正常な生活を送れていたのかもしれない。
目を覚ました時、もう外は暗かった。きっと僕から見たそれは儚く、つまらないものだったのだろう。病室には、同じ服用者と思われる人が列になって無機質なベッドの上に転がっていた。スペス後の人体というのは意外と簡単な処置しか施していないようだ。僕と周りのそれらは、何の機械に繋がれることもなく、ただ眠っているようだった。消毒の匂いがそんな光景を死体安置所のように異様な場所と僕に認識させたのか、起き上がれた安堵よりも先に恐怖が僕の頭の中を埋め尽くした。とりあえず、ここから出て落ち着かなければ、そう思った僕は、ベッドから飛び出るように地面に足をつけ、立とうとしたが、思ったように力が入らず、気持ちが先走った僕は隣にあるベッドに顔から転倒してしまった。白いスーツの下はもちろん鉄だったので、鼻につんとした痛みが走った。わさびを食べた時、というのが一番正しいだろうか。痛みは少しの間、鼻に居座り続けた。眉間にも違和感があり、焦点が合わなくなった僕は目を瞑り、ひとまずそれに耐えることを選択した。数分して目を開けると、先ほどまでの二つに歪んだ世界は、しっかり一つに濃縮され、鮮明になっていた。鼻にまだ痛みは残っていたが、先ほどまでではない。
僕が倒れ、布団がめくれて、隣の人の足が顕になっていた。その足は僕に異様な懐かしさを感じさせた。どこかで見たことがあるような、彼女のベッドの上……。
そう思った途端、僕は半開きになっていたカーテンを思い切り開いた。
そこにいたのは、間違いなく咲良だった。
様々な感情が一気に押し寄せてきたのだが、僕にはそれをどう処理したら良いかわからなかった。
彼女はいくらか大人びていた。他の人とは違い、延命処置ということなのか、彼女には様々な機械が取り付けられていた。薄暗い心電図は、少なくとも彼女が生きていることを表していた。それだけで嬉しかった。彼女の胸に耳を当て、鼓動を聞く。微かではあるが、動いていることを確認した僕の目からは涙が溢れていた。眠っている彼女の顔に手を当て、頭を優しく撫でる。今の僕にできることはそれくらいしかなかった。
ヒーローは今でも自分自身の運命と戦っているようだ。
清水咲良。彼女について、できる限りのことは調べた。どうやら彼女の過去に偽りはなさそうだ。疑っていた気などはまったくないが、それが事実だと改めて知った時は、心を痛んだ。それが嘘だったらどんなに幸せなことであっただろう。好奇心で自分が苦しむその様は、言うならば飛んで火に入る夏の虫だろう。毎日彼女の元を訪れた。それが何の意味をなさなくてもよかった。彼女の顔を見るだけで、それだけで良かったのだ。受付の看護師は最初、見舞いに来た僕のことを疑いの目で見つめていたが、次第に僕の心を悟っていったのだろう。日に日に彼女の対応は、柔んだ。
咲良にできることを探した。彼女が好きだと言っていたもの、好きだと言っていた花などを持って行ったが、彼女は依然としてなんの反応も示さなかった。そこにある気持ちは違えど、人形とおままごとをしているかのようであった。そんな自分を情けないと思うと同時に、どうして起きてくれないんだという一種の怒りに似た気持ちも持っていた。そんな自分を憐んでは、絶望したかのように病院の廊下をとぼとぼ歩き回ることもあった。スリッパと床の擦れる音が、虚無感をより一層強めた。
この再会を奇跡と呼べばいいか、不運と呼べばいいか、と彼女の寝顔を見ながら思う。顔は当たり前のことだがいくらか大人びていた。あの頃からすでに素敵だった容姿は、より美しく、より残酷に見えた。
彼女の記憶のトラウマを克服する形で過去に戻ったが(実際は、別の世界に行ったのだが)、現実は、前より酷くなっているように思われた。自殺したはずの咲良がこの世にもいると使用前の僕に伝えられるとしたら、どんな反応をとるだろう。水を顔に浴びせ、正気を保たせようと来たトイレの鏡に写る自分の顔を眺めながら思う。驚きを隠せないだろうか、より謎が深まり、タイムマシンを使おうとするか。目の前にいる男の顔を想像の中で福笑いのようにパーツを当てはめながら、その姿を想像する。どんな想像でも、頭の中にいるのは、惨めで哀れな自分だけだった。
帰路についている最中も、僕の頭は彼女のことで満たされていた。このもどかしい気持ちをどのように消化したら良いだろう。考えるのはそればかりだった。街中の桜の蕾は長い眠りからそろそろ目覚めようとしているといった具合だろうか。それらは眠りから覚めないものを卑下するよに何か絶対的な力を秘めているように見えた。
部屋を眺めると、現実の自分の無気力さを改めて思い知らされた。散らかった紙類、カップラーメンのゴミが入った大きな袋、埃まみれのテレビデスク。退廃的な人生そのものを映し出したような風景だった。咲良がこれを見たら許さないだろうな、と心の中で懐かしく思う。過去の自分は、彼女の影響もあってか、今の自分からは想像がつかないほど規則正しい生活を送っていた。身なりは整っていたと思うし、代表例のような猫背も、鉛筆のように直線的であっただろう。改めて比べると、圧倒的な差だ。百馬身差、なんて言葉をこんなタイミングで使うとは思ってもいなかった。何も考えずに、部屋の端にあるコンビニ袋に手を伸ばす。売れ残っていたカップラーメンを買っていたことを思い出したからだ。それも僕にとっては五年前の話ということになるだろうが。僕はなんでも''売れ残り''という存在が好きだった。唯一、自分の存在が肯定されるような気がしたからだ。コンビニでもスーパーでも、飲み物でも食べ物でも服でも、真っ先に向かうところは売れ残りコーナーだったし、売れ残り意外を最後に買った時はもう思い出せないほどとうの昔だ。そこにある商品たちは「よう、お前もこっち側だろ」とこちら側に話しかけているような気がして、そんな彼らを救うことで僕は快感に似た感覚を得ていたのかもしれない。そこへ一度足を赴くだけで買い物は満足するようになっていた。
お湯を沸かし、薬缶から出る煙を見ながら思いにふける。こういう時に煙草があればより深層に入り込めるのだが、生憎、今はそれを持ち合わせていなかった。
四年間の旅の最後は伏線を残すような形で幕を閉じることとなった。観客はスターディングオーベーションで会場を包むだろうが、僕だけは違かった。
現実の咲良をどうすればいいか。それだけが僕に残された最後の課題だ。放置するのが正解か、終わらせることが正解なのか。恐らく正解はないだろう。どちらにしよ彼女が救われることはないし、それによってもたらされる僕の影響も未知だ。映画の中の登場人物は、ハッピーエンドだけでは終わらない。その先があるのだ。しかも僕にとってのそれは、なかなかに難しい問題だった。
目の前の薬缶は甲高い悲鳴をあげながら、噴き出ては一瞬のうちに消えていく煙の威力を増していた。それを見て僕はかやくが入ったカップにそれをまるで茶道をするかのように丁寧に注いだ。不意に一人の男が頭をよぎる。僕とは対照的に女たらしであって、顔の構造が僕と比べて残酷なくらいに整っている、それでも根は似たやつ、コーヒーグラスを片手に持った男だ。
彼と会うことで、何か得るものがあるかもしれない。そこから先のことはまだ分からないけれど、消えかけていた火が灯るのがわかった。
セットしたタイマーが三分の終わりを耳障りが悪い音で伝えた。それは終わりと共に、スタートを告げているような気がした。
彼はまだ通っているのだろうか、思い切って来てみたはいいものの、そんな確証を持ち合わせていなかったことに今気づいた。あれから約五年、彼は変わっているだろうか。ひょっとしたらもうこんなところにいないかもしれない。世界中を股にかけ、大冒険を繰り広げていてもおかしくない人物だからだ。だがなんとなく、彼はここから離れることはできないだろう。今の僕が彼女にまだこんなにも取り憑かれているように。
古びた木製のドアをゆっくりと開ける。昔とは違い、子供がプレゼントを開封する時のように、興奮を抑えながら。
店内はあの時と変わらず、こぢんまりとしていた。明るさを抑えた照明、コーヒーの苦く甘酸っぱい匂い、もてなすように立ち並んだ観葉植物、何から何まで変わっていなかった。一通り眺めると懐かしい気分になった。これが俗にいう実家に帰ってきた、という感覚なのだろう。両親はもうどこにいるかなんて分からないので実家に帰っても残っているのは、埃と虚しさで満たされた空間くらいだろう。思えばこの人生の中で、安心を感じる場所があったかと聞かれたら、僕は素直に頷けなかっただろう。昏睡状態に陥っている女の子の隣です、なんて答えたら、狂人だと思われてしまう。
しかし今日、僕は安らぎを得れる場所を知った。いや、ほんとは五年前から分かっていたことだが、今になって改めてそう感じる。彼女から学んだのはそういうことだ。
すっかり目的を忘れ、懐かしみを嗜んでいた僕を、聞き馴染みのある声が呼ぶのを聞いた。
「千秋、久しぶり。」
良かった。いつもの大通りが眺められる窓の近くにまるで僕を待っていたかのよつに堂々と座っていた。記憶の中の''あなた''と彼の顔を照らし合わせる。称号は九十九、いや百パーセント一致した。五年経ったというのに、彼の外見は驚くほど変わっていなかった。強く選抜された遺伝子は、老化制御という特性まで持ち合わせているようだ。
「あなたはほんとに変わりませんね。」
「約五年ぶりだけど、君は大きく変わったようだ。」
理由は言うまでもないが、詮索されても困る。こういう時はお得意の作り話で乗り切るのがセオリーだ。
「この五年間、あなたも自分も信じ難いほどの壮大な旅に出ていたんです。」
「その旅が千秋をこんなのにしたんだ」
「あたかも悪いことのよう言いますね。成長したとは自分でも思ってます。」
揶揄うことを好むとこと変わっていないようだ。いつものように彼の向かいに座った。椅子が不協和音を立てながら引かれた。五年ぶりというのに、まるで常連かと思うほど自然に店員にコーヒーを頼んだ。奥にいる二、三人の女性店員がこちらを見てなにか話している。その視線が僕に向いていないことは分かった。下らないことだと思った。彼に好意を見せたところで、彼は達人のようにそれをいなすことができる。叶わない恋ほど悲しいものはない。僕が一番よく分かっている。その最大の欠点は、叶わないと思えば思うほど、それに対する欲望がぐつぐつと煮込まれるということだ。現に僕の頭の中は今、咲良に対する想いしかない。
「詳細を聞きたいところだけど、長くなりそうだね」
「その通りです。それはもう、とても長かったです。」
言葉を選んで慎重に話す。彼はこう見えながら、心理戦が得意だということも忘れかけていた。ちょっとした仕草から感情の揺れを感知し、それを噛み砕き、最適解を導いて、表向きでの適切な対応を取る。そうやって彼は女性を何人も手玉にとってきた人だ。彼が実は人工知能だったと言われても何も驚くことはないだろう。
「ここに戻って来たということは、何かあったようだ。」
「ええ。自分では解決のしようがないことです。」
「その旅で起きたことなのか?」
彼の綺麗な瞳に男の僕でも見惚れてしまいそうだ。
「そうです。しかも最後の最後に。伏線を残す感じで。」
窓から人通りを見ると、あの町が霞んで見えた。人の量というのが違いすぎる。
「それはだいぶ厄介そうだ。それで僕を頼ろうとしているけど、詳細は言いたくないと。」
少々、皮肉めいて聞こえた。
「すみませんが、そういうことです。」
彼の寛大さに依存しているからこそ、僕はここにいる。
「いいよ、聞こう」
優しさも、依存の秘訣だ。
「白雪姫の話を分かりますか?」
「グリム童話のだろう。知らない人の方が珍しい」
僕は察してくれと言わんばかりに黙り込んだ。少々投げやりな感じもあるが、彼の推測にはそれだけの情報で充分すぎるだろう。
彼は目を見開かせて驚いた。
「まじか。千秋が王子様なんて。」
やはり、詳細なところを除いて彼の予想はほとんど正しいのだろう。彼の意外な一言に、さすがと言わんばかりの称賛と同時に、そんな彼に恐怖さえ抱いた。
「キスしても目覚めない、というわけか。」
「まだ彼女の喉には、毒りんごが詰まっているようです。ですが、今の自分ではどうしようもない。」
「何が正解か、分からないらしいな。」
黙って頷いた。ここで嘘をついてもどうしようもないからだ。単純に答えを知りたい欲も絡んでいたのだと思うが。
「様子から見るにそれがだいぶ、心にきてるらしい。」
まだ湯気が上るコーヒーを注意深く口に含んだ。五年前よりも苦く感じたのは確かだ。
そこから僕らは黙ってコーヒーを飲み続けた。二人はそれぞれの最適解を考えていたのだ。
数分して、彼は深呼吸して口を開いた。
「彼女のどこが好きなんだ。」
随分率直な質問だと思ったが、それを言うにはとてもとは言わないが、気が引けた。
「恥ずかしくて、到底言えそうにはないです。」
彼は微笑みながら言った。
「大丈夫、ここには僕ら二人しかいない。」
言われて見回すと、確かにこの空間には二人しかいなかった。先ほどまで、彼に視線を送っていた数人の女性定員も、いつの間にか姿を消していた。
参った、と言う代わりに小さくため息をついた。
僕はありのまま、淡々と彼女の好きなところだけを簡潔に言っていった。自分でも不思議になるほど少しも考えることなく、川の流れのように自然と口から出て来た。十数分して、ふと我に帰った。言い過ぎてしまった。咲良や間宮透子にならそれは良くても、この人だけは違かった。きっと手玉に取られ、根掘り葉掘り問いただされてしまうことだろう。目の前にいるのはすべてが完璧すぎるメンタリストなのだ。しかし、彼の反応は意外と素朴なものだった。
「ふーん、君が彼女を大切に思っているということは充分分かった。」
妙な冷や汗が、脇を伝うのが分かった。店内には微かだが、洋楽が流れていた。声から推測するに、エアロスミスだろうか。アルマゲドンでしか聴いたことがない僕でも、特徴的な声なので忘れることはない。
僕が次の言葉を待つように黙っていると、コーヒーをやや斜め上に彼が傾ける。動く喉仏でさえ、芸術的に見えた。彼の最後の言葉が聞ける、そう思った。
「そこまで大事に思っているのなら、どうすればいいのかなんて自分でも分かっているでしょう?」
その口調はなぜか僕に懐かしい人物を思い出させた。人に何か教える時、大事なのは口調らしい。彼女に何度もそうされたから。彼は席を立ち、僕と目を合わせることなく、店を出て行こうとした。
これが最後だと、何となくの直感が頭をよぎった。何を言おうか迷った挙句、僕は勢いよく立ち上がりありきたりでよそよそしい質問しかできなかった。
「あの、」
「あなたの名前は」
馬鹿馬鹿しい質問だ。答えなんて聞かなくても分かっていたはずなのに。しかし僕は、彼の口から、彼の容姿端麗な顔立ちから発せられる音で、それを聞きたかったのだと思う。
『間宮海斗』
微かだが、彼の目から涙が伝うのを僕は見逃さなかった。
まったく、大バカはそちらもではないか。君は今でも、彼のヒーローとして闘っているんだろう。
やはり彼は僕と似ている、改めてそう感じた。構成する全ての要素の根が。
外は夕方と夜の狭間といったところだろうか。
明と暗がこれよりないほど綺麗なグラデーションを描いていた。
帰り道に、僕は彼が言ったことを頭の中で噛み砕いた。彼女のことを想う気持ちがあればできること。僕が王子様であったとして、白雪姫にできること。
どれもこれも、行き着く結論は一つだった。こんなこと、彼女を見た時から分かっていたことだ。しかし、それは思いつく中で最悪の選択だった。それを選んではいけないと思えば思うほど、それは頭の中でどんどん膨らんでいった。どうにかして別の答えは出ないか、頭を最大限回転して考えたが、出て来た答えは、やはり一つだった。
彼の言葉をもう一度自分の中で唱える。
『そこまで大事に思っているのなら、どうすればいいのかなんて自分でも分かっているでしょう?』
ふと、公園が見えた。暗がりになりつつあるのに、男の子と女の子が二人でうずくまって座っている。おそらく体の小ささからして小学生だろう。その光景を目にして立ち止まる。どうやら女の子の方が怪我をしてしまったらしい。微かだが膝から赤いものが垂れているのを見たからだ。彼女は泣いていた。男の子は彼女に、優しく声をかけていた。思春期を過ぎていないからか、純粋で力強い声だった。まるで……
そう思ったところで、彼のある一声を耳が拾った。
「大丈夫、僕はヒーローだから。」
彼は無邪気な笑顔でそう言った。それを聞くと、彼女は目に涙を浮かべながらも、微笑んだ。彼は彼女を背負い出した。彼も体が小さいからか、側から見たらとても辛そうに見えた。足は小刻みに震えていたし、一歩一歩の足取りは悪そうだった。それでも、彼はカッコよく見えた。彼女にとって彼の背中はとても大きく見えたことだろう。
僕は、彼女のヒーローになりたかった。その意味を今ようやく理解したような気がした。空一面は、執拗に輝く星で埋め尽くされていた。
その夜、僕は夢を見た。僕は病室で、彼女の隣に座っていた。僕が優しくキスをすると、彼女の目が少しずつ開かれていった。目を開けた白雪姫は、ゆっくりと唇を動かせ、僕の名前を呼ぶ。僕も頷き、涙を隠しきれない笑顔で彼女の名前を呼ぶ。僕らは二人で抱き合い、これから一緒に生きていくことを約束した。
それは愛も霞んで見えるほど、空を埋める星のように、希望に満ち溢れていたのだと思う。起き上がった時に、尋常じゃないほどの絶望に浸らされたから。
きっともう大丈夫だろう。
物語は終幕に差し掛かってきているのである。