小説家になろう【任侠兄弟盃編】
兄貴が金返してくれんので困ってます
優しく催促してもアカンみたいで
なんぼ盃うけた兄弟分やからって銭金は別や思います
せやから最後の温情で
指とばすか金返すか選ばしたろ思て
家に行ったんですわ
「……兄貴、いてるか」
家のドア開いてたんで入らせてもらいました
場合によっては身柄さらって監禁するんで
若い衆にロープとガムテープ用意させてます
「兄弟! ええとこに来た! ちょうど呼ぼう思てたんや」
「……金返してくれまんのか」
「ちゃうねん、ええシノギ見つかったんや」
兄貴がこういうこと言うときは
大抵ろくなことおまへん
「小説家になろうおもてんねや」
「……なめてまんのか」
「ちゃう、本気や、何作か書いたんや、読んでくれや」
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【 大麻栽培でスローライフ 】
──あらすじ
ガンジャ・ハシシは元冒険者
今は引退して田舎で大麻栽培のスローライフ
畑で育てた自然な野菜を乾燥させて小分けにし
村人や街の住民に売り捌く日々を送っている
そんなある日、噂を聞きつけた当局の内偵捜査が始まった…
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「……なめてまんのか」
「あかんか?」
「……誰が読むんやこんなもん!」
「あかんか……」
「……おい、ロープとガムテープ持ってこい」
「まって! 若者向けのハイファンタジーもあるんや!」
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【 覚〇剤で俺チート 】
──あらすじ
勇者シャブ・フェタミンは恐れを知らない
魔剣ガンギマリを手にすれば常に無敵
ただし剣が持つ魔力が尽きれば
食欲がなくなり幻覚と幻聴が彼を襲う
真の敵は魔王ではなく体中を這う虫と
腦に電波で直接指令を送る謎の組織だ……
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「……なめてまんのか」
「あかんか?」
「……薬物ネタしか書くことないんかワレ!」
「あかんか……」
「……おい、ロープとガムテープ持ってこい」
「いや、女の子向けの作品もあるんや」
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【 泡姫、異世界で娼婦に転生 】
──あらすじ
ヤリマーン・ビッチは元風俗嬢
いまは異世界で娼婦としてスローライフを送っている
ぶっちゃけ生活は転生前の方がマシで
特に医療レベルが低く衛生観念も酷い
性病は死に直結するスリリングな毎日……
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「……ええかげんにせえよ」
「あかんか?」
「……これやったら転生せん方がマシやんけ!」
「あかんか……」
「……もっと身の丈にあったもん書かんかい!」
「み、身の丈てなんや」
「……ファンタジーはいらんねん!」
「ほな何がええんや」
「……飯の話とかどないや、リアルで書きやすいやろ」
「あるで、グルメリポート小説や」
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【 大麻のグルメ 】
──あらすじ
「うーん、インディカとサティバでダブってしまった」
マリファナを吸ってマンチ状態で食べる
ピザやポテトのジャンクフード
そんなグルメリポートをお届けします
BGMはお馴染みBUDDHA BRAND
赤目のダルマのオジキが送る五本指
うおォン、俺はまるで緑の人間発電所だ
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「……おい」
「あかんか?」
「……薬物ネタはやめろっちゅうてるやろが!」
「あかんか……」
「……おい、ロープとガムテープ持ってこい」
「まって!これが最後!ホラーや!ホラー小説や!」
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【 一件の電話 】
──あらすじ
老夫婦が住む一軒家に
いないはずの息子から電話……
「母さんオレ、オレだよ」
交通事故で慰謝料に困っているという
しかし息子は3年前に交通事故で……
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「……兄貴、これ実体験やろ」
「あかんか?」
「……兄貴これで老夫婦に通報されて懲役七年やったな」
「長かったで」
「……辛かったか?」
「そら辛いで」
「……もっと辛い目合わしたるわ」
「え?」
「……おい、ロープとガムテープ持ってこい」
この後兄貴は山で埋められ
豊かな自然に転生したみたいです
おわり