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ドライフラワーが枯れるまで  作者: 小林一咲
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第二話 木漏れ日

 ここは、ある町の片隅にある小さな料理店。繁盛しているとは言えないが、人足は途絶えることを知らず、今日も悩みを抱えた人々がこの店にやって来る。


「いらっしゃい」


 今日初めての客は、初老の夫婦だった。

 2人は何も話す事はなく、テーブル席に腰掛ける。メニューを2人で眺めてから、店主に声をかける。


「はい、どちらにしますか?」

「蕎麦をふたつ貰おうかな」

「はい、お待ちください」


 淡々と受け答えを終えた店主は、厨房へと戻る。席に座った夫婦は、静かな陽の光が溢れる外へと目を向ける。木漏れ日の中にユラユラと木の葉が落ちていく。


「お待たせしました」

「ありがとう」

「ごゆっくり」


 2人が頼んだのは、手打ちの鴨せいろ蕎麦と、野菜のフランのセット。


「いただきます」


 2人揃って箸を取ると、まずは蕎麦を口に入れた。蕎麦は香りが良く、ネギとアスパラのつけ汁が暖かく感じられた。


「美味い」

「美味しいですねぇ」


 夫婦はお互いに笑顔を交わす。付き合わせの鴨のローストは、火の通り方が絶妙で柔らかく、でも肉汁を感じられる。

 続いて、玉ねぎの乗ったフランを木のスプーンで口に運んだ。


「甘いなあ」

「美味しい!」


 玉ねぎの甘みを、これほど感じた事は今までにあっただろうか。それほど甘味を感じられるフランだ。自然と笑顔が溢れる。


「美味かったよ」

「ありがとうねぇ」

「まいど」


 お代を手渡してから、夫婦は仲睦まじく店を後にした。


 暖かくなってきて、世間は初夏と言われるようになってきた頃、長年寄り添い合ってきた2人にもまた、暖かさが戻ってくるのだろうか。



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