⑤ 涙
「大体、試練の旅を二年で終えようとするのに無理がある」
「出来たからいいだろう」
「シャーロットの協力があったからだぞ?」
「それは勿論承知の上だ」
精霊王様とオリバー様は睨み合いながら会話を続ける。
「えっと……お二人共、少し落ち着かれては如何ですか?」
二人の会話に分け入るのは憚れることだが、試練を終え王太子殿下となられたオリバー様と精霊王様が言い争う姿は体裁が悪い。この場には国を代表する人物達が集っているのだ。精霊王様との不仲は国政の不安を招く可能性がある。
「シャーロット。お主も言ってやれ! 幾らシャーロットと早く結婚をしたいからと言って、無謀な旅をするなど本末転倒であろう?」
「え……えっと、そうですね。本来でしたら四年の期間を要すると聞いておりましたので、無茶をされたようで……心配しておりましたがご無事で何よりでございます」
精霊王様に話を振られると、不思議と思っていたことを口にすることが出来た。本来の期間を半分で消化するなど、彼の旅は苛烈を極めたことだろう。それが私との結婚の為という事実が胸を締め付ける。
「……うっ、心配をかけたことは申し訳なかった。手紙を送ることも出来たが、決意が揺らぎそうになるからしなかった」
「い、いえ……私も、殿下の邪魔にはなりたくありませんでしたので……」
オリバー様は精霊王様からの指摘を受け、渋い顔をする。手紙に関して彼の意思を知り、邪魔しなくて良かった。
「それにだ! 王太子の称号を得たからと言って、婚約破棄を叫ぶのはいただけないぞ?
二年間もお主を信じて待っていたシャーロットが驚くであろう?」
「……っ! 重ねて申し訳ない」
再度告げられた精霊王様からの言葉に、オリバー様は私に向かって頭を下げた。婚約破棄を告げられた際は大変驚き混乱したが、謝って欲しい訳ではない。
「許すか? シャーロット」
「許すもなにも……私はオリバー様が無事で……ぐすっ!」
寄り添うに精霊王様に質問された。私がオリバー様の行動に関して責める資格はない。だが、彼の無事な姿を確認すると視界が滲んだ。