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ep.2 俺に霊感はないのに
生まれてこの方霊など見たことない。まして亡き者の声を聞いたり意思の疎通が出来たことなど一度もない。
なのに目の前にはおそらく人間ではない何かがいる。
人って本当に恐怖を感じると声が掠れて出ないもので、声を出したくても理解できない現状にびびり喉がヒュッと音をたてるだけで音などでない。
見た目は昨日推しになった『綿雲花のん(わたぐも かのん)』だ。
声だっておはかのの挨拶だって、この愛くるしい笑顔だって花のんだ。だけど俺は一人暮らし。怖くても誰にも頼らない縋ることができない。
だからこそこの推しが目の前にいる状況でも喜べない。
「怖がらせちゃってごめんね?」
花のんが申し訳なさそうに呟く。
意を決して俺があなたは誰?と質問すると元気いっぱいの声で
「こんかの〜!ボクは雲とお花の妖精!!
綿雲花のんなの!」と答えてくれた。
俺はまだ理解が出来ていないが、目の前に推しが現れたとなったらすることは1つ。
この寝起きの状態から身だしなみを整えることだ!!!
俺はちょっと待っててと言い、洗面台に走った