表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/12

ep.10 寄り道

 「ボクこんなに遠いところまで来たの初めてだよ〜」


のびをしながら楽しそうに喋る花のん。


「土地勘がないとね中々気軽に歩けないからさ〜」


こいつ人間くさいな、、、


「花のんが疲れてないならもう少し寄り道して帰るか?」


「いいの?やったぁ〜〜〜!!!!!!!」


「花のんが嬉しそうだと俺も嬉しい」


はっとした。心の声がうっかりと声に出ていた、、、


「そんな風に思ってくれてたの!?嬉しいなぁ!普段からそうやって素直にしてくれてた方が喋りやすいよ!」


ニコニコと嬉しそうにお礼を言う花のん。傷つく俺。


「俺ってそんなに感じ悪い?」


「う〜ん、、、人間同士のそういうのはあんまりわからないけど、褒めてくれる方が嬉しい!」


反省しよ、、、


「そういえば、なんで花のんは有名になりたいんだ?」


横でぴょこぴょこしていた花のんの動きがピタッと止まる。少しの沈黙のあと呟くような小さな声で


「ボクの中の人がもう一度Vtuberになるため」


と一言だけ発した。またしばらく黙ったと思いきやぽつりぽつりと言葉を続ける


「ボクの中の人は、絵師やモデラーがボクを完成させた時は大層嬉しそうに喜んでたの。ずっとボクを可愛い可愛いって褒めてくれた。だからボクもすごく嬉しかったんだ。慣れない機材やソフトの勉強して、デビュー前から告知やお友達作りも頑張っていたの。」


俺はただ花のんを見つめる


「デビュー配信こそはお祝いに色んな人が来てくれたし、コメントも同接数も二桁だったのに少しずつ人が減ってやがて0になる日もあった。」


「でもそれでもボクは楽しかった。中の人と一緒なら見てくれる人が何人だって良いの。だって、楽しむことがまずは1番大事だとボクは思うから。でもね、誰もいないことに耐えられなくなった彼女は配信を辞めちゃったの。もう今ではボクのこと見向きもしてくれない。ソフトも起動してくれないから様子もわからないんだ、、、」


寂しそうに俯く花のんになんて声をかけてあげればいいかわからなかった。


「でも!!ボクがまた有名になればきっと戻って来てくれるはずだからさ!こっそり数字増やすために頑張ってるの!」


健気ぇ〜!花のん花のん花のん!お前はただの花なんかじゃない!!!!!この地上に咲く大輪の花だ!!!


「まぁ、でもその甲斐あって1人は確実にファン確保出来たし良かったんじゃねーの?」


「うん!!ありがとう!」


こんなたわいもないやりとりをしながら俺たちは2〜30分歩いていた。そろそろ帰ろうかなんて花のんのに声をかけようとした瞬間


花のんが足を止めて一点をじっと見ている。視線の先にあるのは一軒家の2階だった。


「花のん?」


呼びかけても反応がない。ただただ2階部分をじっと見つめる花のん。


「そろそろ帰ろう!なっ!」


「ごめんね、先に帰ってて」


「花のん1人じゃ家帰れないだろ!!道知らないんだから」


「大丈夫、私のことは心配しないで」


頑なに動かない花のん。今までこんなことはなかった、どうしたんだ?


「私は帰らない、だから家に帰ってて」


そう言って譲らない花のん、時間だけが過ぎていく。花のんの姿は周りに見えずとも俺は生身の人間だ。

暗い時間にあんまり人様の家の前で突っ立ってる訳にもいかず仕方なく諦める。


「今日はとりあえず帰るわ、またな!」


「うん!気をつけてね」


この日から花のんはここから動かなくなった

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ