第8話。『第1回クラス対抗洞窟山登り合戦』3。
「ギィヤァァァァァァァァァーーーーー──!!」
説明しよう──僕は、B組の火の鳥妖魔の紅さんを阻止するため──轟さんの赤いアヤトリ紐でグルグル巻きにされ、虎みたいに大きな大山君の妖魔の技『爆裂大腕爆波』で、この大空をカッ飛んでいた。
いや。
正確に言うと、僕ひとりでカッ飛んでいるわけじゃない。
幽霊女の子の南さんが、僕の身体の中に入って来て──僕は南さんと一緒に、この大空をカッ飛んでいる。
ここまでの流れは、本当に一瞬。
待った無しの状態で、轟さんの赤いアヤトリ紐がクルクルと巻きつき、幽霊女の子の南さんが、僕の身体の中にスーッと入って来て「大丈夫だよ?赤羽君?」って言ったかと、思うと──
──突然、虎みたいな大山君の左腕が、人間の腕じゃない鬼のような大きな腕にバケモノみたいに膨れ上がって──、たちまち僕の身体を手のひらサイズで包めるくらいに巨大化させて、僕の身体を幽霊女の子の南さんごと掴んだんだ。
「行くぜっ!! 俺式、白虎オリジナル!! 『爆裂大腕爆波』!!」
(ガシッ──!!)
「ひ、ひぇっ!?」
「うおおぉぉぉっ!! 間、に、合、えっ!! 波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──!!」
「ギィヤァァァァァァァァァーーーーー──!!」
と言った感じ──……だぁぁぁぁっーー!!
ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっーーー!!
虎みたいな大山君の放った妖魔の技『爆裂大腕爆波』は、正確なコントロールで。
僕と僕の身体の中に入った南さんは、グングンと、火の鳥妖魔の紅さんのもとへと、大山君に大空をカッ飛ばされて近づい行く。
(キーーーーーーーーン──!!)
「あばばばばばば……!! ぶべらべらべらっ、ぼへぇーーーー!!」
物凄い風圧だ。
言葉にならない。
着ている服が風でバタバタと音立てて──僕の身体の表面を覆う皮膚が、物凄い風の力で波打っている。
「赤羽……君?」
「ぼふぇ……?」
「もうすぐ……」
僕の身体の中に入ってて、南さんの姿は視えないけれど──
僕の身体の中にいる南さんの声が、頭の中で木霊するみたいにして響いて──
僕と南さんの目の前に近づいて来る火の鳥妖魔の紅さんが、慌てて僕らの方へと振り返り──鳥みたいに目を丸くして(あ、今は紅さんは鳥だ)、口をパクパクさせている。
火の鳥妖魔の紅さんに、のっかってる幽霊の子たちも、わちゃわちゃと慌てふためいていて──
「──ん? って、何? ひ、人ぉっ!? ぶ、ぶつかる!? よ、よけられない──!? 」
C組の子が火の鳥妖魔の紅さんめがけて放った丸い光の弾だって、全然よけれてたのに──
たぶん、僕と南さんは、その光の弾よりも速く──虎みたいな大山君に『爆裂大腕爆波』で、ブン投げられてたみたいだ。
あっと、言う間にゼロ距離に──
「ぶひゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
近づいた。
(ドゴォォン──!!)
「きゃぁぁァァーー!?」
「あぶぇっ!?」
頭の中と僕の目の前に、紅さんにぶつかった時の衝撃で、星が飛んだ。
──けど、ぶつかった時の衝撃は、そんなに無くて。
普通なら、このスピードで人間が人間にぶつかれば──死んじゃうんじゃないかって、想うんだけど……。
(……ううっ。あれ? 風? 感じる──……)
ふと、空を見上げると──ヴィシュヌヴァ先生が、風にのって飛んでるみたいに浮いてて……。
僕と南さんの方を見て、ウインクした。
「イェイっ!! 赤羽君、ナイスファイト!!」
そう言ったヴィシュヌヴァ先生が、風にのって空を飛んで浮いたまま、僕と南さんに向かってウインクしながら──左手の親指を立ててサムズアップして、笑っている。
(ヴィ、ヴィシュヌヴァ先生──と、飛べるんだ……。い、いったい……)
訳が分からない僕は、ふと、右の手のひらを見てみると、透明な風の層みたいなのがクルクルと回って包み込んでいて──火の鳥妖魔の紅さんに炎で焼かれてても、おかしくないはずなのに──僕の身体は火傷ひとつ追わずに守られていた。
けど、僕は、気がつくと──大の字になって火の鳥妖魔の紅さんに、しっかりガッチリ抱きついていたみたいだった。
「きゃぁぁァァ!! やめて! 変態っ! 痴漢!!」
「い、いやっ! あのっ!! 違っ!!」
ヴィシュヌヴァ先生の風みたいな力のおかげもあってか、僕も南さんも、火の鳥妖魔の紅さんも無事みたいだけれど……。
やっぱり、それでも、僕と南さんが空飛ぶ紅さんにぶつかった時の衝撃のせいか、紅さんが僕に抱きつかれてパニックになっているせいなのか──分からないけれど──
火の鳥妖魔の紅さんの空飛ぶ高度が、グングンと下がって来ていた。
「よっしゃあー!! やりやがったぜっ!!」
「ヤタッ!! 作戦成功っ!!」
見下ろすと──
ワァァと、塊になっている学年全体の皆の中に、ガッツポーズしている大山君と嬉しそうに飛び跳ねる轟さんの姿が、小さく見えた。
「ヤッタね? 赤羽君に南さん!! それに、轟さんも大山君もっ!! 流石は、私のA組の生徒たちっ!!」
「ウフフ……。まだまだ、これからよ? 夢葉? ウチのB組は、こんなもんじゃないわ?」
「フフ……。戦いの幕開けには相応しい……。見事な攻防。C組も負けてられんな……」
夜の雷みたいだった僕らのA組担任の叶先生とB組担任の黒井戸先生とのバトルが、いったん止んで、もとの昼間みたいな明るさに戻って──
C組担任の白銀先生は、C組の先頭に立って走っている。
川岸教頭先生の姿は、もうどこにも見当たらない。
たぶん、先頭を切って、一番ノリで、洞窟の中に入っていったんだと思う。
空の上から見える順位としては(先生たちは順位には関係ないけれど)──
先頭を、ひた走る川岸教頭先生。
そのあとに、戦闘していた叶先生と黒井戸先生。
を、横目に──白銀先生が追い抜く形。
そして、白銀先生に続くC組の子たちが、集団の少し手前に抜けようとしている最中……、僕らのA組とB組が、てんやわんやのモミ合いのしっちゃかめっちゃか。団子状態。誰が誰だか分からないくらい。
だけど──
轟さんと、大山君は、集団のだいぶ後方にいるみたいで、僕と南さんを見上げているのが、分かる。
火の鳥妖魔の紅さん阻止作戦の決行のためとは言え、仕方がないとは言え……。
それと、火の鳥妖魔の紅さんに取り憑いていたB組の幽霊な子たちが、パラパラと地面へと落下しているみたいだ。
「『美食家ラフレシア』!! 花園君!!」
「あいよー」
B組担任の黒井戸先生が、そう叫ぶと──
B組の子の誰かが、背中を丸めた途端──その子の背中から見たこともない大きな花が開いて──落ちてくるB組の幽霊な子たちを、まるで吸い込むようにして、あっという間に受け止めた。
って、あれ? 食べてる?
「な!? アイツは、浄霊師か? 妖魔じゃねぇな?」
「えと……。誰だっけ? あ、植物霊使いの子だ!! たくさん霊を吸収して、爆発的な力に変えるとかって、聞いたような?」
「だろうな。妖魔も、取り憑いた霊を力に変えれるが、吸収は出来ねぇ。身体の表面に取り憑かせるのと、身体の中に降霊憑依させるのとも、違う」
「やっかいね……」
「あぁ……。って、赤羽と南を引っ張るのが、先だ!! このまま、紅をゴールさせるわけには、いかねぇ!!」
「あ。いっけなーい。忘れてた! てへ!」




