令和のジャンヌダルク
BIの取材動画を3人で確認する。BIは多くの勝ち組を生み出す一方で新たな負け組を生み出すことになる。
「編集終わったヨ。」
美しい金髪のエマが、突然声を上げる。美しい金髪の彼女はドイツからの留学生で化学を専攻している。
Youtubeのチャンネルで登場すると男性ファンから圧倒的な人気で。
令和のジャンヌダルクといわれている。
「この間、取材したどうがか。みんなで確認しよう。」
ヒロもユリもエマのマックブックをのぞき込む。
サムネイルは「BI勝ち組特集。突撃おたくのBI」
「昔のテレビ番組みたいだな。」
「しっ静かに。」
動画は閑静な住宅街からスタートだ。ユリがマイクを持ちながら戸建て住宅の間を歩いていく。
シンプルなコーディネートだけに足元のピンクのクロックスが目立ちすぎている気がする。
「今日は千葉県のある都市のご家族を紹介たいと思います。
お邪魔するのは佐藤さんのお宅です。」
画面にまだ、建造後間もない家が現れる。2階建ての綺麗な家だ。
「こんにちは。」
中から出てきたのは優しそうな、おばあさんだ。
「さあ、どうぞどうぞ。」
「昼におくつろぎのところすいません。今日はBIの取材に協力していただきありがとうございます。」
広々としたリビングは0畳以上あるだろうか。テレビも大画面だ。ここに家族4人で住んでいるという。
「ベーシックインカムで何か変わりましたか?」
「孫や子供たちの様子が見れて幸せです。前は田舎の家に一人でしたから。」
ベーシックインカムになってから親と同居する世帯が増えた。同居までいかなくても近くに住む世帯が増えている。
子供たちの送り迎えは両親よりも祖父母が行い。夕食も作る場合が多い。
共働き世帯の保育園や家事の分担の問題は妻側の両親と同居することで解決する場合が多くなっている。
「二世代住宅はトラブルはありませんか?」
「私の場合は特に娘夫婦は仲がいいですし、何より子供の成長が心から楽しみです。」
この佐藤さんの家は世帯で29万円のベーシックインカムをもらっていることになる。
仮にこのおばあさん一人なら7万円で生活はままならないだろう。
しかし、収入を共にすることで、29万円のBIの需給とおばあさんの生きがいを与えている。
BIは協力を強制する。集団の中で役割を持てないものはいつらくなる。