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第49話 生徒会メンバー顔合わせ

 放課後、一般生徒達は前期の授業が終わった解放感に満ち溢れ、長期休暇の予定を語らいながら寮へと戻っていく。

 そんな中、生徒会推薦メンバー達は現生徒会メンバーとの顔合わせもあり生徒会室に呼ばれていた。


「よく来たな」


 無表情のまま生徒会長であるハルバードがスタンフォード達を歓迎する。

 全くといっていいほど歓迎されている気はしないが、これでもハルバードなりに優秀な生徒達を歓迎していた。


 人望、成績、魔法、家柄、全てにおいて優秀なセタリア。

 人望や性格に難があるが、この国の第二王子であり、魔法運用において右に出る者のいないスタンフォード。

 成績はいまいちだが、それ以外の全ての能力が特出しているブレイブ。

 現生徒会メンバー、セルド・ヒュース・サングリエの遠縁でありながらも、サングリエ家の血を濃く引き継いだ分家出身であるアロエラ。


 そして、他人に全く興味を示さないあのルーファスが興味を持ったステイシー。

 ハルバードは改めて全員の顔を見渡すと、淡々と告げた。


「本来ならば歓迎会を開くところなのだが、今の生徒会は手が足りない。軽く自己紹介をした後に、さっそく仕事を覚えてもらう」


 ハルバードの言葉にブレイブとアロエラ、ステイシーが息を呑む。

 ある程度裏事情を知っているスタンフォードとセタリアは、表情を変えずに続きを待った。


「俺は生徒会長を務めているハルバード・クリエニーラ・レベリオンだ。この国の第一王子ではあるが、意見することを恐れる必要はない。機嫌を悪くして処刑を行う王族など、物語に出てくる暴君くらいだ」

「だとさ、お前らも文句があったら気軽にズケズケ言ってけよ?」

「ルーファス、貴様は軽薄すぎる」


 茶化すように言ったルーファスに対して、眼鏡を直しながらセルドが呆れたようにため息をついた。


「というわけで、紹介に預かった軽薄すぎるルーファスだ。よろしくな。生徒会じゃ、庶務をやってる。ま、要するに雑用係だ」

「この生徒会の庶務はそんな簡単なものではないがな」


 ルーファスは特にかしこまることもなく自己紹介をする。

 何を言っても無駄なことは理解しつつも、後輩の前であるためセルドは一応注意をした。


「あまり彼を見習わないようにしてくれ。仕事さえすれば何をしても良いなど、間違っても思ってくれるなよ?」

「それはもちろんです」


 推薦メンバーを代表してセタリアが答えると、セルドは満足そうに頷いて自己紹介を始める。


「僕はセルド・ヒュース・サングリエ。生徒会では会計を担当している。君達には期待しているよ」

「は、はい!」


 分家という立場だからか、アロエラは緊張した様子で上擦った返事をした。


「マーガレット、何をボサッとしているんだい。次は君の番だ」

「あっ、そうでした」


 後ろの方でボーッと立っていたマーガレットは、セルドに促されたことで一歩前へと出てきた。


「マーガレット・ラクーナです。生徒会では書記をやっています。スタンフォード殿下、セタリア様、ブレイブ君、ステイシーちゃんは面識があると思いますが、改めて宜しくお願いします」

「この人がブレイブと同じ光魔法の使い手……」


 唯一マーガレットと面識のなかったアロエラは神妙な面持ちでマーガレットをまじまじと見つめた。

 ドラゴニル辺境伯爵とは縁があり、昔からブレイブのことを知っているアロエラとしては、ブレイブ以外に光魔法の使い手がいることは知っていても、どういった存在かは知らなかったため、気になっていたのだ。


「マーガレットさん。アロエラさんを仲間外れにするような発言はいただけませんわ」


 そこで真打登場とばかりに、扇子を開いてポンデローザが登場した。


「これから一致団結して生徒会とし尽力していただくのに、疎外感を感じさせるような発言は慎みなさいな」

「あはは、すみません。配慮が足りませんでした」

「わかればよろしい」


 扇子を閉じて頷くと、ポンデローザは改めて勢いよく扇子を開いて自己紹介を始める。

 何でわざわざ扇子を閉じたのだろうか。

 その場にいた全員がそんな疑問を抱いたが、口にすることはなかった。


「わたくしはポンデローザ・ムジーナ・ヴォルペ。生徒会副会長を務めさせていただいております。以後、お見知りおきを」


 そして、再び華麗な手つきで扇子を閉じる。

 その様子を見て、内心スタンフォードは「こいつ、演出のために無駄なことしてるな」と呆れていた。

 その後、三年生、一年生を含めて全員の自己紹介が終わると早速仕事のレクチャーが始まった。


「で、何で僕がポン子と組むことに?」

「ブレイブ君に副会長の仕事教えても仕方ないでしょ。あたしの推薦理由は戦闘力と彼の出自なんだから」


 副会長最有力候補であるスタンフォードは、仕事のレクチャーという名目でポンデローザに連れ出されていた。


「ブレイブは庶務ってところか」

「そうね。ブレイブ君は書記も向いてないし、会計も無理だもの」


 それぞれの適性からセタリアは生徒会長、ブレイブは庶務、ステイシーは会計、アロエラは書記という仕事の割り振りとなった。

 スタンフォードはもちろん副会長候補として育てられていくことになる。


「にしても、全員推薦だったら選挙もしないなんて独裁もいいとこだよな」

「貴族が通う学校よ? 今更でしょ」

「ま、推薦理由に家柄が入ってくる時点でお察しか」


 スタンフォードは改めてこの学園の特異性を噛み締めると、ポンデローザへと尋ねる。


「なあ、ブレイブの方のヒロインのコメリナが生徒会入りしてないのは大丈夫なのか?」

「ああ、そのことなら問題ないわ」


 スタンフォードの疑問に対して、ポンデローザは特に焦った様子もなく告げる。


「コメリナちゃんは私達が目指すルートには登場してこないの。BESTIA BRAVEのルートでも出番が少なくて〝空気〟って言われてたくらいよ」

「でも、裏方として活躍してた可能性がある以上、生徒会メンバーにいないのはまずくないか?」

「そう思って、彼女には原作通りの動きができるように別の枠を用意したわ」


 得意気に鼻を鳴らすと、ポンデローザは原作から乖離している状況の対策を述べる。


「ルーファスがこっちの思い通りに動かないのは想定済みよ。コメリナちゃんには生徒会特別調査班のリーダーを務めてもらうことになったわ。ハルバードには想定外の事態に対応するには手が足りないって名目で納得してもらってるから安心して」

「さすがの手の速さだな」

「ごめんね。本当は先に伝えておきたかったんだけど、長期休暇前でバタバタしててさ」

「大丈夫だよ、ポン子が忙しいのはわかってるから」


 ポンデローザは申し訳なさそうに両手を合わせる。

 スタンフォードとしては、ポンデローザは忙しい中必死に原作知識を整理して対策を練ってくれている。

 そのことに日頃から感謝しているスタンフォードとしては、ポンデローザを責めるつもりは毛頭なかった。


「ていうか、長期休暇中は恋愛イベントは進まないのか?」

「ランダムイベント以外は特にないわ。それにメグも連れてルドエ領に行くわけだし、今回に関しては原作通りに動かなくても大丈夫よ」

「わかった。それじゃ、今回はルドエ領での鍛錬に集中させてもらうよ」


 スタンフォードは、ほっと胸を撫で下ろすと生徒会の仕事の引継ぎに集中する。


 しかし、心のどこかでしこりが残るのを感じていた。


 ポンデローザは原作通りに事を進めたがるきらいがある。

 目指しているのが唯一の生存ルートである以上、それも仕方のないことではある。

 先のコメリナの一件に、長期休暇の計画の件。

 一見、原作と乖離しても柔軟な対応を取っているように見えるが、そこには人の感情を考慮していない気がしてしまったのだ。

 一抹の不安を覚えながらも、スタンフォードは何かあったら真っ先にフォローに回ろうと心に決め、近い内にコメリナと接触する必要性を感じるのであった。


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