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第48話 生徒会推薦メンバー

 前期の最終登校日。

 生徒達は一斉に廊下へと駆けだした。


「みんなどうしてあんなに急いでるんだ?」

「自分が生徒会メンバーに選ばれたか気になっているんだろうさ。今回は異例の処置だから事前に通達されてるっていうのにね」


 廊下へと駆けだしていくクラスメイトを不思議そうな顔で見送るブレイブへとスタンフォードが説明する。

 今回の生徒会メンバー発表は前例と異なり、前期が終わる前に発表されることになった。

 そのため、推薦された生徒達には事前に通達が来ていたのだ。


「お二人も生徒会メンバーに選ばれたのですか?」


 座ったまま話しているスタンフォードとブレイブの元へセタリアがやってくる。


「も、ということはリアも選ばれたか。まあ、当然といえば当然だけど」

「ええ、生徒会長自らの指名でしたわ」

「兄上が?」


 スタンフォードは、ポンデローザからセタリアが原作でも生徒会メンバーにいたことを聞かされていたため、特に驚いた様子はなかったが、推薦人がハルバードだったということには驚きを隠せなかった。

 生徒会長からの推薦。それは次期生徒会長最有力候補と言っても過言ではないからである。


「リアは人をまとめるのうまいから適任だな!」

「少々荷が重い気もしますが……」


 セタリアはこめかみに手を当ててため息をつく。

 その理由はスタンフォードにも理解できた。

 BESTIA BRAVEのストーリーでセタリアは他のヒロイン達と衝突し、友人関係になるまでにはかなり時間がかかっていた。

 時期的にも衝突している真っ最中である今、生徒会メンバーに選ばれるであろう他のヒロイン達とうまくやっていく自信がないのであった。


「他のメンバーも気になるし、僕達も張り紙を見に行くとしよう」


 スタンフォードは、だいたいの生徒会メンバーを把握してはいるものの、きちんと原作通りになっているか確認するために廊下へと向かった。

 廊下の掲示板前は生徒達でごった返していたが、スタンフォードの姿を見るや否や、さっとモーセの海割りの如く道ができる。


「おお、すげぇなスタンフォード!」

「この現象をプラスに捉えられる君の方が凄いと思うけどね」


 生徒達が避けて出来た道を歩いて行くと、掲示板の前には見知った顔があった。


「ステイシー?」

「あっ、スタンフォード君……」


 掲示板の前では困惑した表情を浮かべたステイシーが立っていた。

 まさかと思い張り紙を見てみると、そこには――


【生徒会執行部 推薦生徒】


 スタンフォード・クリエニーラ・レベリオン


 セタリア・ヘラ・セルペンテ


 ブレイブ・ドラゴニル


 アロエラ・ボーア


 ステイシー・ルドエ


 ステイシーの名前があった。


「ど、どうして私が……」


 ステイシーが混乱するのは無理もない。

 特に秀でた点もなく、家柄もこの学園では下に位置するステイシーが生徒会メンバーに選ばれたのだ。

 他の生徒達もどうして自分ではなく、ステイシーが選ばれているのか怪訝な表情を浮かべているくらいである。


「ポン子の仕業……じゃないよな」


 ポンデローザは原作から離れることを嫌う。

 本来ならばもう一人のヒロインが入る枠にステイシーが入っていることは、ポンデローザの意図しない部分である可能性が高かったのだ。


「僕はラクーナ先輩の推薦、リアは兄上からの推薦、ブレイブはポン子からの推薦、アロエラは本家の嫡男であるサングリエ様の推薦、となると――」


 原作とは違う流れになっていることでスタンフォードは考え込み、ある結論に至った。


「ルーファス様の仕業か……」


 今思えば、ルーファスは珍しくステイシーに対して興味を示していた。

 生徒会室や郊外演習での出来事がこの原作改変を起こした可能性は大いにあった。

 ポンデローザが慌てて連絡を取ってこないということは、この原作改変は生存ルートへ進むに当たって大きな問題はない可能性が高い。

 一応後で確認するとして、スタンフォードはひとまずステイシーに祝福の言葉をかけることにした。


「良かったなステイシー。大出世じゃないか」

「私に務まるでしょうか?」

「何、僕を含めてみんなでサポートするから問題ないだろう。そうだよな?」


 スタンフォードは横にいるブレイブとセタリアに目線を向ける。


「ええ、わからないことがあったら何でも聞いてください。これから同じ生徒会メンバーとして宜しくお願い致しますね、ルドエさん」

「俺も助けてもらう側だと思うけどよろしくな! ステイシー!」


 スタンフォードの意図を察したのか、二人とも笑顔を浮かべて頷いた。


「みなさん、ありがとうございます……!」


 心強い仲間が出来たことで、ステイシーはほっとしたように胸を撫で下ろした。


「ちょっとちょっと! アタシだけ除け者にしないでくれる?」


 そんな四人の元に、燃えるような赤い髪ポニーテールと勝ち気な表情が特徴的な女子生徒がやってきた。


「そういえば、アロエラも生徒会メンバーだったな」

「そういえばって何? アタシはおまけってわけ? はー、セタリアと一緒なら他はどうでも良いってわけ?」

「いや、そんなことは言ってないだろ」


 アロエラは不機嫌そうに鼻を鳴らしてブレイブに詰め寄る。


 アロエラ・ボーア。

 BESTIA BRAVEのヒロインであり、ストーリー開始時点で既に主人公に惚れている最も攻略が簡単なキャラクターだ。

 攻略難易度の低さと序盤戦闘の火力要員としての能力の高さから、プレイヤーには愛されているキャラクターだが、彼女の魅力はそれだけではない。

 アロエラは火属生魔法の応用である破壊魔法が使える。

 その反動で、衣服が弾け飛ぶというサービス要員でもあった。

 プレイヤーの中には彼女の衣服が弾け飛ぶ演出を見るためだけに戦闘を長引かせるという者までいたほどである。


「スタンフォード殿下もいたんですね」


 スタンフォードの姿を見るや否や、アロエラは無表情になる。


「これでも王族だからね」

「これから宜しくお願い致します」


 慇懃無礼に頭を下げるアロエラを見て、スタンフォードは苦笑する。

 基本的にスタンフォードはBESTIA BRAVEのヒロイン達には嫌われている。

 中でも人を見下す人間が大嫌いなアロエラとスタンフォードの相性は最悪と言ってもいいだろう。

 それでも表向きは礼儀を崩さない当たり、アロエラは性格の割に理性的だった。


「ルーファス様、どうして……」


 そんなやり取りをしていると、アロエラの横で呆然と立ち尽くしている水色の髪を肩口で切りそろえたタレ目の女子生徒がいた。


「コメリナもいたのか」


 コメリナ・ベルンハルト。

 ルーファスのリュコス家の分家に当たるベルンハルト家の出身であり、彼女もBESTIA BRAVEのヒロインである。

 クールな性格でさり気なく主人公をサポートしてくれる存在だったが、ストーリーでは影が薄く、〝空気ちゃん〟や〝コメ何とかちゃん〟と呼ばれることも多かったキャラクターである。


 ブレイブは貼り紙の前で立ち尽くすコメリアに声をかけようとしたが、それをアロエラが止めた。


「あー、コメリナのことはそっとしておいてあげて」

「どうしてだよ」

「察してあげなさいよ。この子、アタシと同じように本家のリュコス様から推薦されると思ってたからショックなのよ」


 生徒会メンバーの推薦基準はさまざまだが、推薦基準の多くを占めるのは家柄だ。

 コメリナは学園内でもトップクラスの成績を残しており、魔法の腕も確かだ。

 そんな彼女が本家の人間であるルーファスに選ばれなかったのはかなりショックな出来事だったのだ。


「これ、本当に大丈夫なのか……」


 早くも起きた原作改変の歪みを目の当たりにしたことで、スタンフォードはポンデローザと作戦会議を開く必要性を感じるのであった。


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