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第171話 婚約破棄

「ポンデローザ・ムジーナ・ヴォルペ! 君との婚約を破棄させてもらう!」


 生徒会室にてハルバードは婚約者であるポンデローザへと婚約破棄を突き付ける。彼の後ろにはルーファスやセルドなど、BESTIA HEARTの攻略対象である人物が揃っていた。


「謹んでお受けいたします、ハルバード殿下」


 スカートを摘まみ、ポンデローザは優雅に一礼をしてその申し出を受け入れた。


「……いや、ちょっと待ってくれ。本当にこれでいいのか?」


 自分で言っておきながらも、ハルバードは困惑してようにポンデローザへと視線を向ける。後ろで控えている者達も、ルーファスを除いて全員困惑していた。


「にひひっ、いやぁ合わせてくれてあんがとね!」


 素の口調に戻ったポンデローザがいつもの調子で笑顔を浮かべる。


「やっぱ婚約破棄はこうでなくちゃね!」

「俺には君の言っていることがさっぱりわからん」


 そんなポンデローザにハルバードは理解できないと言わんばかりに肩を竦めた。


「兄上、そこのバカの言ってることは気にしないでください」

「何おぅ!」

「ポン様、うるさい」


 スタンフォードとコメリナはポンデローザに辛辣な態度をとる。こんなこと、ノリノリでやることでもないだろうに、という呆れが態度に滲み出ていた。。

 いつもの喧嘩が始まりそうになったため、慌ててステイシーが挙手してハルバードへと尋ねる。


「あの、何でポンデローザ様との婚約を破棄することになったのでしょうか?」


 本来ならば、ポンデローザはハルバードの婚約者である。

 特に罪も犯していない以上、婚約破棄されるいわれはないのだ。


「俺は元々第一王子として王位を継承する予定だった。ポンデローザもそれに合わせて未来の王妃たるために教育を受けてきたのだ」

「スタ坊の場合は、セタリアがその役目を負っていたんだが、あいつは国外追放になっちまったからな」


 ハルバードの説明を引き継ぐようにルーファスが捕捉する。


「要するに、すぐにでも王妃として使える人材がスタ坊には必要だから、ハルバードとの婚約を破棄してスタ坊の婚約者になるってわけだ」

「あれ、スタンフォード君の次の婚約者ってコメリナさんじゃないんですか?」

「そうしたいところだったんだけどね」


 スタンフォードは深いため息をつく。


「コメリナに王妃の立場は合わない。というか、やってはくれるだろうけど、無理をしてほしくないというか……」

「あはは、スタンフォードは魔法を研究して目を輝かせるコメリナちゃんが好きなんだもんね」

「まあね」

「私も優しい殿下、大好き」

「ピピーッ! イチャイチャ警察よ! 隙あらばいちゃつこうとしない!」


 隙あらばスタンフォードに引っ付こうとするコメリナの間に割って入るポンデローザ。結局、いつものわちゃわちゃした空気に様変わりである。


「えっと、つまりどういうことです?」

「元々分家の出で魔法研究バカだったコメリナに王妃の教育をするのは無理がある。だから、ポンデローザ様のお力を借りるってこと」


 混乱して頭上に疑問符を浮かべるステイシーにアロエラが簡潔に説明する。


「アロエラ、ひどい」

「でも、実際そうでしょ?」

「否定、しない」


 きっぱりと言い切ったコメリナに、ステイシーは苦笑いを浮かべる。


「ポン様。形だけの正妻、譲ってあげる。でも心の一番、絶対譲らない」

「ぐぬぬ……こうなったら胸で勝負よ!」


 スタンフォードの腕に抱きついているコメリナは、ポンデローザへと挑発的な笑みを浮かべる。そんなポンデローザも負けじとスタンフォードの腕へと抱きついた。


「僕本人を抜きにしてドンドン話が進んでいく……」

「うーん……負けるな、スタンフォード! ファイトだよ、ポンちゃん!」

「あっ、姉さん絶対面倒臭くなったでしょ!」


 前世での親友と弟の修羅場に巻き込まれまいとマーガレットは雑なエールを送ると、明後日の方向を向いて口笛を吹きだした。


「スタンフォード殿下――いえ、国王陛下もご立派になられましたね」

「いや、お兄様。主様のこの姿のどこにも立派要素がないんですけど……」


 うんうんと頷いているセルドに対して、妹であるアロエラはどこか呆れ気味だった。


「しかし、俺もセルドや上級生の皆は投獄されて最終決戦には参加できず。おまけにフォルニア達に助けられる始末だ。まったく、情けない限りだ」

「兄上は悪くありませんよ。確かに無念だったかもしれませんが、僕はまだまだ未熟です。今後もいろいろ助けてほしいと思ってます」

「そう言ってくれると心が軽くなるよ」

「では、さっそく女性関係の問題解決を――」


「すまん、俺では力にもなれなそうだ」

「ちょ、秒で見捨てないで! 兄上ぇぇぇ!?」


 ハルバードは爽やかな笑顔を浮かべると、そのまま生徒会室を出ていってしまった。


「スタンフォード、晴れて婚約者になったことだし、今日はあたしを好きにしていいわよ!」

「殿下、私いつでもいい。いつでもどこでも、私を好きにするといい」


「〝迅雷怒涛!!!〟」


「「あっ、逃げた!」」


 雷魔法で速度を上げたスタンフォードは目にも止まらぬ速さで逃亡を図る。


「〝鮮血追跡(ブラッド・ストーカー)〟……ポン様! 殿下、食堂に逃げた!」

「わかったわ! 〝氷結道路(アイシクルロード)〟」


 その瞬間、コメリナがスタンフォードの逃げた方向を特定し、ポンデローザがその方向への最短ルートを氷で作り上げて追いかけ始めた。


「やっぱり大変なことになっちゃったかー……我が弟ながら罪な男だねぇ」


 そんな慌ただしい三人の様子を苦笑しながらマーガレットは見守るのであった。


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